《異世界戦國記》第五十九話・勝幡城攻防戦~決戦1~

「者ども!我が水野家の友である織田家の興亡がかかっている!気合いをれろ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」

水野家三千の兵は士気高く勝幡城に取り付く伊勢連合軍へと突撃を行う。一方、それを迎え討つのは端に展開していた木造政二千である。

「敵を近付けるな!我ら伊勢の底力を見せてやれ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」

木造政の兵もまた士気が高く両者は雄たけびを上げながらぶつかる。刀と槍、槍と刀がわり鮮が周囲を彩っていく。そんな中、押し広げながら進んでいる騎馬隊がある。

「ハッハッハッ!雑兵ども!命がしければ道を開けろ!」

水野忠政自らが率いる本陣の五百である。全員が騎馬で構された彼らは歩兵中心の木造軍を蹴散らしていく。馬上から振るわれる槍に歩兵はおののき逃げ腰になるか棒立ちのまま一方的に狩られていく。

それを見た水野家の歩兵は更に士気を上げ弱腰になりつつある木造軍に襲いかかる。既に勝敗は決したも同然となっていた。……木造家のみだけだったのなら。

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「殿!前方から別の軍勢が!凡そ千!」

「やはりくるか!構わん!蹴散らすぞ!」

木造家の隣に布陣していた伊勢の豪族が救援に駆け付けたのである。その數は千。水野家を包むように左右の兵を厚くしながらやってきている。狙いが包囲と言うのは一目で確認できていた。

「敵が到著する前に中央を突破する!騎馬隊よ!この水野忠政につづけぇい!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」

騎馬隊は先頭を走る水野忠政に続き敵の中央突破を試みる。しかし、中央突破をさせるという事は木造政のいる本陣を抜かせるという事になる。木造家の兵達はそうはさせまいと壁となり水野忠政を妨害する。これまでの兵とは違い確実に足止めをしていく木造軍の兵士たち。それでもしづつ中央が抜かれ始めたがその前に敵の左翼右翼が水野家の兵を包囲し始めていた。

「殿!このままでは包囲されますぞ!」

「問題ない!敵の中央はまもなく突破できる!そうすれば中央から一気に崩すことが可能だ!故に!我らは一刻も早く敵中央を突破するぞ!」

「ははっ!!!者ども!殿に続けぃ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」

その時であった。敵の後方、北畠晴の陣がある方から歓聲が響く。それを聞いた水野忠政は笑みを深めた。

「あの小僧・・、漸くいたか」

忠政の視線の先には勝幡城の南西のり口を封鎖していた伊勢の豪族に襲いかかる織田家の兵の姿があった。そしてその先頭には槍を持つ信秀の姿も。

「我が兵よ!今こそ反撃の時だ!我に続けぃ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」

俺は兵達の先頭に立ち鼓舞をする。本當は直接戦闘は苦手だがそんな事を言っている時ではない。これに失敗すれば確実に敗北するからな。

俺の後ろには信晴利昌両名が護衛としてきておりその後方には叔父上敏宗や教継、親重などの重臣がいる。そしてそんな俺らの背中を追ってくる千を超える織田の兵たち。まさに織田家の総力をかけた攻撃だ。

俺は突然の事に驚き混する伊勢の豪族の兵を蹴散らしながら伊勢連合軍の主力である北畠晴の軍勢に向かう。だが敵は六千、こちらは千弱。まともに戦えば潰されるな。

「利昌!騎馬隊二百を率いて晴の軍勢の右翼を攻撃しろ!ただし決して深追いはせず淺く攻撃するんだ!」

「はっ!」

「叔父上敏宗はこの場に殘りこの兵達を抑えてください」

「分かった」

俺は次々に指示を出しつつ敵の豪族の元に槍を突きさす。これでこの兵達は大將を討ち取られ更に混するはずだ。実際既に混はピークに達しつつある。このまま行けば逃亡する兵も出てくるかもな。

そして、俺の目の前にはこちらに陣を向け終えた北畠晴の軍勢六千が見える。

ふと、奧にいる晴と目があった気がする。気のせいかも知れないが聲も聞こえた。

「ここで果てろ信秀」

俺はそんな言葉に槍を向け答える。

「まさか、俺はこの試練を乗り超えて大きくなってやる」

勝幡城攻防戦最後の戦闘が開始されようとしていた。

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