《異世界戦國記》第六十話・勝幡城攻防戦~決戦2~
「行くぞ!殿の援護をするのだ!」
前田利昌が自慢の槍で敵兵を薙ぎ払う。それを見た利昌の率いる兵が士気を上げ敵に殺到する。しかし、利昌が率いるは高々二百。対する敵北畠晴の軍勢は六千。まともに戦えば全滅は必須であった。だが利昌の目的は敵の惹きつけである。正面で北畠軍と相対する主君織田信秀の援護である。
信秀が率いる兵は千を下回っている。利昌に與えた騎馬隊二百、後方で敵を食い止めている敏宗の歩兵二百。北畠軍との戦力差は凡そ六倍以上となっていた。しかし、前田利昌の援護や織田軍の予想外の襲撃でなからず混が発生している。信秀はその部隊を狙い侵していく。
「殿に続け!北畠晴の首を取るのだ!」
「「「うおぉぉぉぉぉっ!!!」」」
信秀直下の兵たちは北畠晴の首を目指し突き進んでいく。一方の晴は慌てる家臣たちとは違い冷靜であった。晴は戦する織田軍を見ながら詩を詠んでいく。
「ふむ、織田軍は予想以上に粘るのぅ。……茂康」
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「はっ!ここに」
晴は鳥屋尾茂康を呼ぶ。茂康は2メートル近い軀を持つ武將で抑えているにも関わらずからは覇気を噴き出していた。晴が最も信頼する切り込み隊長的存在であり晴の側近として幾度もの武將の首を落としてきた。
「このままなら織田軍はここまで來るであろう。その時はおぬしが信秀の首を落とせ。あの寡兵でここまでくるのだ、疲弊しているだろうし當家最強のお主の前に屈するであろう」
「所様にそう言っていただけるとは……。恐悅至極に存じます」
茂康は晴の言葉に激すると同時にやがてやって來る信秀を迎え撃つべく抑えていた覇気を解放した。途端に周囲にいる家臣たちは顔を青ざめ中には気絶する者まで現れた。茂康の覇気は陣の半分まで來ている信秀たちにも伝わった。
「殿!晴の本陣から異様な気配が……!」
「晴め、本陣で迎え撃つつもりか!やべー奴を配置しやがって!」
信秀はこのままいけば確実にそいつに返り討ちにされる事を悟った。しかし、ここで退き返すことは困難だった。既に信秀が侵したはふさがり全方位を包囲されていた。ここまで來ると敏宗の足止めは必要なくなるが同時に利昌の援護もけづらくなっていた。
突した織田軍は既に半數が北畠軍に踏みつぶされると化し殘りの半分も傷を負い力を削られていた。上から見れば織田軍は池に落ちた餌を食べようと群がる魚たちに囲まれているようにも見える。とはいえ軍勢の勢いを利用すれば本陣までたどり著けるだろうがそこには覇気を放つ武將が居り返り討ちに會うだろう。
「前門の虎後門の狼ってか?織田の兵士よ!あとしで晴の本陣までたどり著く!そしたらあの覇気を垂れ流す武將を全員で仕留めるぞ!武將の矜持とかそんな事を言っている暇はない!」
信秀はそう指示を出し自らも敵兵を薙ぎ払っていく。織田軍は本陣手前の陣まで侵し晴の首まであと一歩のところまで來ていた。しかし、そこに待っているのは北畠が誇る最強の武將鳥屋尾茂康。萬全の狀態の信秀でも勝てるかどうか怪しい剛の者が信秀の首を取るべく待ち構えている。
そしてついに織田軍は本陣に到著した。初めて伊勢連合軍の総大將北畠晴と織田信秀が顔を合わせて。
「晴ぃ!覚悟しろ!」
「ほほほ。その言葉、そのまま返すぞ」
瞬間信秀の目の前に刀が現れた。瞬時に持っていた槍を橫にして防ぐが槍はれた部分からへし折れ勢いを殺せぬまま信秀にたたきつけられた。
「ぐっ!?」
「信秀、覚悟」
倒れた信秀に馬乗りになり握る刀に更なる力を籠める茂康。しずつ槍は切れ始め信秀の顔に迫る。いくら力をれようとびくともしない茂康に信秀は死を覚悟した。
その時であった。
「ハハハ!どうしたぁ?信秀ぇ?」
茂康のは橫に吹き飛び信秀を抑える力は瞬時に消え去った。突然の事に驚く信秀をよそに一人の男が近づいてくる。
「この程度の三下に苦戦しているのか?それでもこの俺を倒した者の兄か?」
信秀が持つ武力の中で最大の武力を誇る武將、今川氏興が消えかかっていた織田軍の前に姿を現した。
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