《異世界戦國記》第六十六話・覚醒
俺が目を覚ました時、戦は終わっていた。その事を俺は涙を流して大喜びする前田利昌から聞いた。伊勢連合軍はあの後バラバラに逃げ帰り、松平家は信繫が追い払ったらしい。そして、途中で家臣の裏切りに遭い松平清康は死んだようだ。
北部の斎藤利政は高価なを送り信康たちと和睦したと聞いた。斎藤利政は撤退後は土岐家との戦いを再開したらしい。結局、何がしたかったのかは分からないが尾張に迫っていた危機は去ったとみていいようだ。
そして、肝心の俺は一週間ほど眠っていたらしい。目覚めた時は偶々いなかったがそれまではずっと雪が世話をしてくれていたようだ。ただ、凄く悲し気に看病していたらしいし何なら「もう一生目が覚めないのでは?」と考えてしまうほど憔悴していたようだ。雪と會ったら謝らないといけないな。
俺の目覚めを聞いて城にいる家臣たちが様子を見に來た。敏宗と秀敏の叔父上に権六、教継、親重達家臣たち……。孫三郎など俺の腹に飛び込んで來たほどだ。弟の突撃が止めになりかけたが何とか耐えて頭をでたな……。
そして、
「三郎様!」
「雪……」
慌てた様子で雪がってきて俺が目を覚ましたのを見てぽろぽろと涙を流し始めた。
「ゆ、雪!?」
「良かった……。本當に良かったです……!」
「……」
俺の傍までやってきて靜かに泣く雪のを抱き寄せて抱きしめる。雪には今回の一件でとても心配をかけ不安の中に置いてしまった。この世界は戦國時代で人の死なんて珍しくはない。だが、親しい間柄の人が傷つき、亡くなるのは辛いだろう。俺だって雪が死んだら泣くだろう。泣いて悲しむだろう。俺はそれを、雪にしたんだ。
「さ、三郎様……!」
「すまなかった。もう二度とこんな無茶な事はしない」
「は、ぃ……」
「お前を置いて死んだりしないし怪我だらけで不安にさせたりしない」
「……」
「雪が安心できるように、俺はもっと頑張るよ……」
雪は段々と返事をしなくなったが俺を抱きしめ返す力はどんどん強くなっていく。俺はそれに答えるように抱きしめ返した。
どれくらいそうしていただろうか?雪がぽつりとつぶやいた。
「……死んでしまうかもしれないと思いました」
「……」
「もう二度と、目を覚まさないかも不安になりました……」
「……」
「三郎様には無茶な事をしてほしくないと、心から思いました」
「……」
「でも、三郎様を縛りたくはないです」
「……」
雪はそう言うとし離れ俺の顔をまっすぐとみる。涙で濡れ、興で顔を赤くさせる雪だがその目は強く、俺を見ていた。
「三郎様。私は戦も政も出來ません。ですが、三郎様の傍にいる事はできます」
「……ああ、雪にはいつも助けられている」
俺は本心を言う。雪と夫婦になり約十年。雪は、俺にとってなくてはならない、大切な存在となった。
「雪、俺は強くるぞ。的にも、神的にも。二度と、このような事にはならない。なってたまるか……!」
「……はい。雪も、強くなります。三郎様が安心して、力の限りを持って戦えるように」
「雪……」
「三郎様……」
俺たちは互いに見つめ合い接分を行う。幾度となく行ってきたが、今回はとても甘く、優しく、それでいて暖かった。
【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】
アレシアは『眠っている時に雨を降らせる力』を持っている。 両親はそんなアレシアを守るために大変な努力をして娘の力を隠していた。 ある日、アレシアは自分の前世での記憶が甦る。アレシアは昔、水系魔法に秀でた魔法使いアウーラだった。國のために前線で戦い、國王との婚姻も決まっていた。しかし、謀略による冤罪で二十三歳の時に処刑されてしまう。 そんな前世だったからこそ、今世では名譽や地位よりも平凡で穏やかな暮らしを守りたい、誰かの役に立ちたいと願う。 眠ると雨を降らせる女の子アレシアが前世での後悔を踏まえて人に優しく前向きに生きていくお話です。 少女時代から成人までの長期間が描かれます。 ゆったりした展開です。 ◆GAノベル様より2022年5月13日頃発売開。コミカライズも進行中。
8 126ブアメードの血
異色のゾンビ小説<完結済> 狂気の科學者の手により、とらわれの身となった小説家志望の男、佐藤一志。 と、ありきたりの冒頭のようで、なんとその様子がなぜか大學の文化祭で上映される。 その上映會を観て兄と直感した妹、靜は探偵を雇い、物語は思いもよらぬ方向へ進んでいく… ゾンビ作品ではあまり描かれることのない ゾンビウィルスの作成方法(かなり奇抜)、 世界中が同時にゾンビ化し蔓延させる手段、 ゾンビ同士が襲い合わない理由、 そして、神を出現させる禁斷の方法※とは…… ※現実の世界でも実際にやろうとすれば、本當に神が出現するかも…絶対にやってはいけません!
8 66俺、異世界でS級危険人物に認定されました
ある日の事、不慮の事故で死んでしまった主人公のハルは、神様から特別な力を授かる。 その力で、連れてこられた異世界、通稱セカンドワールドで、猛威を振るう。 だが、その力を恐れた異世界の住人は、ハルを危険視し、S級危険人物に!? 主人公最強系冒険物語!!
8 151俺だけ初期ジョブが魔王だったんだが。
203×年、春休み。 ついに完成したフルダイブ型のVRMMORPGを體験する為、高校二年になる仁科玲嗣(にしなれいじ)は大金をはたいて念願のダイブマシンを入手する。 Another Earth Storyという王道MMORPGゲームを始めるが、初期ジョブの種類の多さに悩み、ランダム選択に手を出してしまうが... 設定を終え、さぁ始まりの町に著い... え?魔王城?更に初期ジョブが魔王? ......魔王ってラスボスじゃね? これは偶然から始まる、普通の高校生がひょんなことから全プレイヤーから狙われる事になったドタバタゲームプレイダイアリーである!
8 121男女比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕は女の子に振り回される
就職して戀愛・結婚をし子供が生まれる、これで普通の人生を歩めると思ってた……でも現実は、時間が過ぎるとともに幸せな家庭は崩れ去り、僕を苦しめるだけだった。 戀愛・結婚に臆病になった男が男女比の偏った世界に生まれ変わり、女性に振り回されながらも奮闘する。 ※申し訳ありませんが、感想の返信は停止しております。
8 156月輝く夜に、あなたと
いつも通りの夜、突如かかってきた彼氏からの電話。 電話相手は、謎の若い男。 彼氏が刺されている、とのこと。 そして、その男からの衝撃的発言。 禁斷のミステリー戀愛小説
8 142