《異世界戦國記》第六十八話・越前からの使者

「殿!大変です!」

俺と雪がまったりしていると前田利昌が慌てた様子でやってきた。その様子からただ事ではないのが見て取れた。

「どうした?」

「え、越前朝倉家より使者が參りました!」

「朝倉の使者だと?」

越前朝倉家とは別に仲が悪いわけではない。というか一切の流がない。元々織田家は朝倉家の家臣?だったみたいな話は聞いたけど遠い昔の話だしそこまで気にしてはいなかった。あちらは気にしている可能もあるが。

そんな訳で朝倉家から使者が來る理由があまり分からなかった。とは言え遠い地より態々やってきたんだ。話くらいは聞かないとな。

「分かった。會おう。何処にいる?」

「門前で待たせています。直ぐに広間に案します」

「頼むぞ」

さて、朝倉家が態々一何のようなのか……。誼を持ちたい、何て軽いではないのは確実だろうな。という事は……、濃かな。

果たして、俺は朝倉家の使者と會う事になったのだが……。

「急な要求にも関わらず場を設けていただき謝する。某は朝倉教景と申します」

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まさかの朝倉家の一門衆の一人だった。しかも教景の名は俺でも知っている。越前朝倉家において最高の武勇を持つ人で若狹や加賀、両伯といった地で勝利を収め今の大國朝倉家を作り上げた人だ。そんな人が使者としてやってきた。それだけで容がとても重大だという事がうかがえる。

「俺が織田信秀だ。堅苦しい挨拶は無しでいこう。教景殿、貴殿が來た理由は……。濃か?」

「ほう、流石は急長を遂げている織田宗家の當主。察しておりましたか」

「そちら朝倉家と俺達に関係がある時點である程度絞れるのでね」

「ほっほっほ、それもそうですな」

教景殿はそう言って笑うが直ぐに笑いを止めて真剣な表でこちらを見てくる。その眼はとても鋭く、とても重かった。相対するだけでが勝手に出てくる。もしここが戦場で敵同士なら俺は教景の圧に呑まれてそのまま命を落としていたかもしれない。

「早速ですが本題にりましょう。斎藤家を共に叩きませんか?」

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「斎藤家を? という事は濃を両家で分割という事ですか?」

「その通りです。とは言え大義名分は必要なのでこちらは土岐頼純殿を擔ぎますが……」

「俺たちは大垣城の頼蕓を擔げという事か?」

「その通りです。どのように分割するかは戦後考えましょう。今考えても意味がないのでね」

「それは構わんが、こちらはそこまで兵を出せないぞ」

今はなんともないが松平家を飲み込んだ今川家が領地を接しているのだ。兵を濃に派兵しその隙をつかれてはたまらん。同盟を結ぼうにも向こうは西以外に領土拡大先はない。絶対に結ばないだろうな。

「それはこちらも理解しています。四、五千ほど出していただければ十分です」

「……」

現在の織田家の総兵力は約一萬。水野家や藤左衛門家を加えればもっと行くだろう。とは言え斎藤家も同じような兵力を持つ。それでいて率いる大將は斎藤利政だ。絶対に數以上の実力を持っている。

「もしそちらが賛同してくれるのなら我らは先に兵を出します。ある程度濃を進んだらそちらも侵攻をしていただきたい。途中で我らが敗れればこの話は無しにして無関係を裝えばいいですので」

「確かにそれならこちらも問題はないが、一度考えさせてほしい」

「勿論構いませんとも」

使者にはいったん退席してもらい家臣たちと話し合う。ここにいるのは叔父上敏宗と秀敏と平手政秀、前田利昌、柴田権六、林道安、山口教継などだ。弟の信康と信濃との國境にある黒田城にいて、佐久間は藤左衛門家の下にいる。

早速話し合いを行う。最初に発言したのは道安である。

「殿、私としてはこの提案に賛同するべきではないと思います。今川がこちらを伺う姿勢を見せている以上むやみに敵を増やすべきではありません」

「私も林様の意見に同意です。今川がかずとも従屬した松平家が弔い合戦を仕掛けてくる可能はあります。下手にくべきではないでしょう」

道安は反対の意見を取りそれに権六が続いた。彼らの意見も道理であり自分もそこを考えていた。松平家當主となった広忠は齢10歳ほどだが清康を殺した(正確には撤退中に殺された)俺たちを恨んでいるらしい。今は俺達との戦に備えて軍備を拡大しているようだ。

そして、続いて発言するのは平手政秀だ。

「某としては部分的に賛同する。清洲城の義統様をかしきちんとした大義名分を掲げれば今川、松平と言えど手出しはし辛くなるでしょう。それに場合によっては織田伊勢守家巖倉織田家をかす事も出來ましょう」

「私も賛同します。斎藤利政は”蝮”の異名を持つ大名。隙を見せれば圧倒いう間に首元にまで迫ってきます。もし、今川と戦うという時に斎藤家もく可能があります。今川の準備が整う前に北を安定させるべきでしょう」

平手政秀、前田利昌の意見に俺は程と頷く。確かに斎藤利政が今川との戦爭中に背後をつくようなきを見せれば勝てる戦も勝てなくなる。しかし、斎藤家を倒せれば話が変わって來る。濃の半分を織田家が殘りを土岐家と朝倉家で分けるとすれば國力は増大するし土岐家が背後をついても返り討ちに出來る自信がある。何より斎藤家の様な怖さがない。

その後も話し合いは続いたが俺は答えを決めると家臣たちに話す。

「皆の意見は良く分かった。今回の提案、れようと思う。今川との戦に備える必要があるのは確かな事だ。だが、斎藤家がいる限りこちらにも気を付けねばならない。なればこそ、我らだけではなく朝倉家の援軍も期待できる今のうちに降すべきだ。良いな? 濃を盜るぞ」

「「「はっ!!」」」

俺の答えに家臣たちは頭を下げるのだった。

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