《異世界戦國記》第七十六話・加納口の戦い3

「皆の衆、今日は良く戦い抜いたな」

「「「ははっ!!」」」

俺は本陣にて織田信康、佐久間信晴、林道安、山口教継、橋本一、平田三位、織田三位、前田利昌を呼んで軽く軍議を開いている。因みに柴田権六、忠政殿、土田政久は距離の関係から呼ばなかった。総大將不在の時に夜襲を仕掛けられたら大変だからな。

「道安、門の一部を破壊する事が出來たそうだな」

「はい。明日には大きなをあける事が出來るでしょう。そうなれば門の突破は速いうちに出來ます」

「それは良かった。そうなればそこを中心に山に侵する事が出來るだろうからな」

「殿の期待に必ずや応えて見せます」

林道安が擔當していた門は一部にが開き始めていた。破城槌だけではなく木槌も打ち込んでいたらしいからな。これなら明日には門を破壊できるだろう。

「三位殿、橋本一から話は聞きました。いくら守護様の代理とは言えこちらの兵に無茶な命令をするのは止めていただきたい」

「っ! それは!」

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「我が家の兵は守護様の兵ではありません。それに加えて無駄死にさせるような事を今後すれば我ら織田宗家に対して悪意があると考えさせていただきますよ」

「……」

織田三位は何も言えなくなったようで黙り込んでしまう。これで無駄な死者が出る事は無いと安堵していると明らかに落ち込んでいる佐久間信晴が俺に聲をかけてきた。

「……殿、この度は申し訳ありませんでした。殿の大事な兵を無駄に死なせてしまった……」

「ん? 三位殿とは明らかに狀況が違う。信晴、お前を責める事はしないぞ」

「ですが! 私は三百近い兵を死なせてしまいました! 私は、私は! 指揮として失格です!」

「……この、戯けが!」

今にも腹を切ると言いだしそうな信晴に俺は怒聲を上げた。ついでに目の前にある機を蹴り飛ばそうとするが重くて上に置いてあったものの大半を反対側に落とすだけで終わったがびっくりさせる効果はあったようで全員が俺の方を見て驚いている。

「三百の兵を失ったからなんだというのだ! 信晴、お前はこれまで三百人以上を死なせなかったというのか? そんな訳が無かろう。戦は大なり小なり人が死ぬのだ。それを恐れていては何も出來ないぞ」

「ですが……」

「……分かった。三百の兵を失った事で敵を倒せないというのだな? ならば俺の五百の兵のうち利昌を付けて半分やる。それに山口教継を自由に使うといい。これで九百五十。お前の所と合わせれば二千百五十だ」

「なっ……!」

あまりの事に信晴含めて全員が驚いている。全軍の約四分の一、織田家のみなら三分の一以上の兵を預けると言っているのだ。當たり前だろう。

「不服か?流石にこれ以上の兵を送ると他がおろそかになってしまうぞ」

「そ、そんな事ではありません! なぜ、某にそれだけの大軍を……」

「そんなものは決まっておろう。信晴、俺はお前をそれだけ評価しているのだ。二千以上の兵を預けても裏切らなずに功績を上げると信じているからだ。無論、ここにいる俺の家臣たち、弟たちも同じように信じている」

「兄上……!」

視界の端で信康が號泣しているのが分かるが今は構っている時ではないのでスルーさせてもらう。俺は信晴の目を見て言う。

「どうだ? お前はこれだけの兵を率いる自信はないのか? お前を評価した俺の目は節だったという気か? 答えろ! 佐久間信晴!」

「……その様な事はありません」

信晴は涙を流しながらこちらを強い目で見返してくる。そしてその場で頭を下げた。

「殿! 先ほどまでの某をお許しください! そして必ずや今日の損害を帳消しに、いや! 気にならない程の功績を上げて見せまする!」

「よく言った! 必ずや功績を上げて見せろ! 信晴なら可能だと、信じているぞ」

「っ! ははぁっ!」

最後の部分だけ穏やかに言うと信晴は一瞬言葉に詰まるが直ぐに返事をした。これで信晴は今日の様な醜態をさらす事は無いだろう。門を落とせるか、日野弘就に呆気なく返り討ちに遭うかは分からないがここまで來た以上出來る戦はあまりない。である以上將や兵の士気を上げて自分の能力以上の力を出してもらうしかないからな。今日の俺に出來る事はまだあるが大まかな所は終わった。後は俺の言葉が何処まで屆いているのか明日、確認するだけだな。

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