《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》間話 公爵夫妻の話し合いPart1

子供が産まれて次の日の夜、晝間に約束した通り、私は夫であるロンド・デュク・ド・オリオンの部屋に行った。(因みに子供がいる部屋の二部屋隣である)

トントンと張しながらロンドの部屋のドアをノックする。

(もし、あの子を切り捨てるような判斷を彼がしたなら……。

晝間はああ言っていたけれど、魔法の才能が一つも無いとなると、もし次男以降に優秀な魔法の才能を持つ子が現れた時の為に釘を刺される可能はあり得ますからね……)

そう思うと、調不良を理由にして行くのをやめたくなる。

だが、今先延ばしにしても後々必ず話すことになる。

なら早い方がいい。

早すぎる気もするが彼も焦っているのだろう。

聲に出して愚癡を言いたいのだろう。

心の不安を共有できる人と話し合いたいのだろう。

やその場にいた付きの者に産まれたばかりの子供について愚癡るのは論外だ。

そうなるとやはり妻に言うしか無くなる。

(私も同ですわ。神様に幾つか文句が言いたい気分ですから)

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確かにし憂鬱な気分であるが、今日この部屋で起きた事は、焦ってつい言ってしまった事、という事で最後を締めくくればいい。

時間が経てばまた意見も変わる。次の子が生まれその子に公爵としての才能があった時にでも、もっと本格的で結論が出るまで膝をコンコンと突き合せるような議論をすればいい。

そう考えていると

ってよいぞ!」

そう中から聞こえ部屋の中にる。

どれの家も平民なら家が一軒建つ程の一級品である。

と言っても、ソフィアの家も高い格の家の為、初めて見た時でもそれ程驚きはしなかった。

「おお! ソフィー、待っていたぞ!

まだ子供を産んで時間も経たないうちに呼んで悪かったな」

部屋にった瞬間ロンドにそう言われる。

「いえ、私もあなたとあの子のいないところでしっかりとお話しをしたいと思っておりましたから」

「うむ、そうかそうか。

こちらのベッドに橫になりなさい。話はそれからだ」

「いえ、せめて椅子にでも座りますわ」

「いかんいかん! 子供を産んだばかりなのだぞ! に何かあったらどうするのだ!」

と、表を険しくしてそう言った。

「公爵である夫にお話しするのに私だけ寢転がるわけにはいかないではありませんか?」

「よいよい、今この部屋には私とお前しかいない。咎めるものなど誰もおらぬよ。

いいからこっちに來て橫になりなさい。

でなければ、わざわざ來てもらってすまんが今日の話は無しだ」

「……」

「……」

「はあ〜、わかりましたわ。

貴方はそういうところで頑固なのだから」

「うむ、しの妻を大事にするのは當然の事だ」

「あら、お上手」

「ハッハッハッ!」

張をほぐそうと互いに冗談を言い合う。

「では早速だが本題にろう。

もちろん言うまでもなくレインの事だ。

あれのスキルの異常さは今更であろう。

まずは、やはり何と言ってもそのスキルの多さだ。

私の知る限り最も多くのスキルを持つ者で、四つがせいぜいだったはずだ。

なのにレインはそれを上回る數のスキルを持っている。

それだけならまだしも、最高位であるレア度7のスキルを二つも持っていて他の三つもレア度4以上だ。特に無詠唱とMP増加率大など魔法職ならから手が出る程しいスキルだ。

どっちが手にっても魔法の才能がある者ならたとえ貧民であっても王宮に招かれ、魔法騎士団への所屬がほぼ決まるだろう」

そこでいったん區切り、顔に右手を當てて、

「だが‼だが――あやつには、レインには魔法の才能が一つも無い!

確かにお前のような魔法を三つも持つトリオの魔法使いはそうはいない。

あやつが持っていなかったとしてもなんら不思議ではない、はずだった!

あれだけの……、あれだけの魔法使いに適した才能がありながら1つも魔法が使えないとはどういうことなのだ。ありえんだろう!」

ソフィアはそんなロンドの怒気が混じった聲をけ流す。

「ええ、私もそう思いますわ。

初めてあの子のスキルと魔法の才能を見た時は天を仰ぎましたから……。

でも、大切なのはこれからよ」

あくまで、否定はせずに話題を逸らしていく。

「昨日も言った通り、重要なのはスキルや魔法ではなく、あくまで公爵としてのですわ。

大丈夫ですわよ。あれ程ふてぶてしい顔でいる子なのですから」

「……、そうだな。

すまなかったな、大きな聲を出して。

このような事お前にしか話せないからつい愚癡ってしまった」

 「いえ、構いませんわ。

あの子のことで悩んでいるのはお互い様ですから」

 「そうか、ありがとう。

お前も心配事が重なって疲れているだろう。

今日はここで寢なさい」

 「いえ、あの子が心配なので部屋に戻ります。二つ隣の部屋であるだけですし、外に侍も待機しますから」

今日はレインの橫に居たい気分なのだ。

 「そうか、ではおやすみ」

 「ええ、おやすみなさい」

そう挨拶をして部屋を出る。

(……次男以降が産まれた時などの話はしなかったですわね。

 今日はただ鬱憤をしでも晴らしたかっただけかしら?

あの子に才能があればいいけど……。

いえ、自分の子なのですから私が信じなくては!)

そう決意してレインが寢ている部屋に戻るのだった。

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