《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第82話 四人將

「ワッハッハ!奴らはオリオン軍の強さも知らぬのか?

それとも相當自分に自信のある將が率いておるのか?」

とバルドラはまたもや大笑いだ。

そのバルドラに対し、

「六萬はちょっとないわね……。

帝國の準英雄級が參戦でもしているのかしら?」

のソプラノ聲がそう響いた。

突然の聲に俺が振り返ると、オリオン家の魔法部隊を取り纏める人族でのシャウネが訝しげな顔をしていた。

その言葉にお父様は、

「報告では奴は既に國境を越えて帝國に帰っている。間に合うわけがないな」

と否定する。

それに対してシャウラは、

「では、他の準英雄級がいた、という可能はありませんの?」

「いや、お前も知っている通り、準英雄級などそうホイホイ外の戦場に出せん。私がくことを決めたのはプリタリア様が重傷を負ったと聞いたその日だ。どう急いでもこの戦場には間に合わん」

……俺はといえば、反省中だ。

そうだった。奴がいた。

完全に頭から抜けていた。

油斷大敵。これ一番重要な事。

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「そうでしたわね……」

そうだったのか。俺は聞いてないけど。バルドラの方を見ると知っていたかのようにウンウンと頷いている。

あんたは確実に今思い出しただろう。

「では、何故彼らは六萬であの場にいるのかしら?」

うーん……謎だ。

冷靜に考えてみて、可能としては、落としなどの地面に細工、伏兵、さっきバルドラが言ったように自分の策に自信がある、実は準英雄級や凄いスキル持ちが出撃している、くらいしか思いつかないが……。

一番ありそうなのは地面に細工だろう。本みたいに土に重なって埋まってたら見れんが落としみたいに土の中に空間があるなら俺が見れるぜ?

お父様もそれに気付いたようにこちらを見て、

「リドル、頼むぞ」

といってくる。

俺はそれに対し頭だけ下げる。

バルドラ達も俺の正と能力を知っている為、期待を込めた強い眼差しを送ってくる。

「伏兵は索敵の鳥人族の者達が報告に來ないという事はいないのだろうな」

辺りは平原で隠れる様な森や建はないらしい。

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空から監視する彼等から伏兵に足り得る數の兵を隠すのはこれでほぼ不可能になった。

次に準英雄級だが……これ、考えても仕方ないだろ。見た目で判別つかないだろうし、俺も範囲に近付かないと視れない。

あ、さっきの頼むぞってもしかしたらこれも含まれてるのか?

スキル関係でヤバい奴いたら教えろってのも含まれてるのか。

危ない危ない。地面の中だけチェックして終わるとこだったわ!

頼むからワットも説明してくれ。

まあいいけど。

考えても仕方ないし、時間を無駄にするわけには行かないので進軍を開始する。

どうせ避けては通れないのだ。

戦うか、國に逃げ帰るか、俺たちの選択は二つに一つだ。

こんな曖昧な報で逃げる選択などあり得ないわけで、結果進軍しかない。

ちんたらしていて王族が敵に捕獲されたらこれ何の為の軍だったんだという話にもなりかねない。

結果、急ぎ足での行軍となった。

當然な索敵と偵を繰り返す。

だが、帰ってくる報告はどれも周りには敵なし、だとか敵は現在の位置からいておりません、だとかで、いやそれ今さっき聞きました、と俺が心突っ込んでしまうのは仕方がない話だろう。

10キロ程手前になってようやく、敵が陣形を組み、こちらを待ち構える様です、という報告に変わる。

そろそろだ。ここから僅か10キロ先に敵がいる。

俺たちを殺そうとしている奴らが倍の數で待ち構えている。

段々心が震えてくる。

それと同時にも震えてくる。

初陣に行く兵士と同じ気分を味わっている。

神眼でお父様に付いてきている兵士達を上から見下ろす。

300メートルまでしか見えないがそこは上からでは地面が見えないくらい集していた。

「この數の人間が殺し合うのか……」

ついそう呟いてしまった。

これが戦。戦場がすぐ近くだからか笑っている人間など一人もおらず、皆が真剣な顔で行軍をしている。

そして、とうとう敵が眼で見えてきた。

およそポルネシア軍の倍はいるであろうその、人の集帯も我々と同様、こちら側に気付いた。

その周りは本當に何もない。

戦地となる草が生い茂っており、木は見える範囲では存在しない。

地面を視でグルっと見回っているがあるのは土、土、土だ。

の加減は関係ない。

が全く無い真っ暗闇でも神眼ならまるで雲一つ無い晝間のような明るさで見える。

その神眼で見えないのだとしたらやはりはないのだろう。

慎重に々考えて見たのだが、やっぱり大した事は何も思い浮かばない。

警戒は怠らないでいこう。

そう俺が決めたその瞬間、新たな報がる。

「敵の將軍がわかりました!」

今か。

「遅くなったな?」

「ハッ!申し訳ございません。一般の兵士には知らされていなかったようで調べるのが遅れました」

そうだったのか。

今かとか言って申し訳ないです。

「それで。奴らの將は誰だ?」

そう聞くお父様に偵は、

「ハッ!敵の將はバドラギア王國第一王子グリド王子です!」

グリド王子……誰?

聞いた事の無い名前だ。

そう思ったのは俺だけだったようで周りの空気が一変し、全員の顔に怒りの表が浮かぶ。

「グリド……だと?間違い無いのか?」

「ハッ!間違い座いません!」

「グリド……グリドだと?」

と呟く。

誰なのかさっぱりわからない。

怒り顔のお父様達に聞く事もできず、黙って見守る。

だが、そんな中、一際怒っている人がいた。

「グリド……、プリタリア様の敵……絶対殺す‼︎」

シャウネだ。

「シャウネ、落ち著け!」

お父様が宥める。

「ですが元帥!私の師があの男に!」

「落ち著け!それと重傷だが死んでないぞ」

ふむ。聞くところによるとあの、グリドという男はシャウネの師であるプリタリア様に重傷を負わせた張本人という事か。

つか、プリタリア様、準英雄級と戦って負けたわけじゃなかったのか。

俺が一人納得していると、今まで黙っていたランド隊長が口を開く。

「とにかくこれで敵の態度が納得できましたな。

プリタリア様を撤退させられるほどの策士なのだとしたらこの狀況も説明がつきます」

冷靜なランド隊長が居てくれて本當に助かった。

それに対し、シャウネは見下すような笑顔と底冷えのするような聲で、

「人生最高の幸運が二度も続くと思っているだなんて。怒りを通り越して憐れだわ」と言い放った。

バルドラも

「シャウネの意見に俺も同意だな!バドはどう思うよ?」

そう言って橫の最後の四人將の一人を見る。

え?一人足りない?

あと一人はもちろんランド隊長の事ですぜ?

聞かれたバドはこの四人で唯一人族ではなく、二メートルという大きさを誇る大盾を持つ男だ。

バドは一言、

「俺のやる事は何も変わらない」

とだけ呟く。

四將全員の意見が出た所でお父様が、

「バドの言う通りだな。

我々のやる事は何も変わらん。

お前らは予定通り私の指示を聞きながらけ。

以上」

そう締めくくった。

私の指示を聞きながらけ。

お父様はそう言った。

そして俺は改めて知ることになった。

この世界の戦爭で重要なのは強力な才を持つ個の存在であると。

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