《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》閑話 やらざるを得ない

「ああ〜だりぃ……」

リュミオン王國とガルレアン帝國の國境。

任務を終え、意気揚々とガルレアン帝國に帰る帝國兵の中でつまらなそうにそう呟く男がいた。

(不快だ。

今回の戦爭もこっちから一方的に殺しただけじゃねーか!

んなもんは戦爭じゃねぇ。

ただの殺だ。クソッ!つまんねぇ)

つまらない。得たられるなんて何一つない。

何が楽しくてこんな事をやっているのかさっぱりわからない。

常日頃からそんな事を考えるその男の名はウィンガルド・ドュチェス・ウインド。

帝國にいる準英雄級の一人、皇帝を守る四人の剣の一つで諸國には暴風の二つ名で通っている。

本來なら王都でノンビリと皇帝の護衛をしながら、余生を過ごす筈だった。

帝都で何かあればウィンガルドがく可能はある。それは仕方がない。

皇帝のに何かあれば彼らの存在意義が無くなってしまう。

皇帝が死んだら彼らは確実に死刑になるので自分達の命もかかっていると言っても過言ではない。

だが今回、ウインドは自分がわざわざ帝都を空けてまで出撃しなければいけない事に不満がある。

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そしてやっとの事で任務をやり遂げ帝國に帰國している所だ。

そんな彼に、帝都からと思われる使者が待っていた。

「お待ちしておりました。暴風殿!」

「あ?!」

嫌な予がする。

面倒くさい匂いがプンプンする。

「陛下からの勅命です!謹んでおけ取りください!」

そう言ってくる使者の手から勅命の書を無造作に奪い取り、羊皮紙を開く。

そしてその容は……。

「あぁ!?今からオリオンの首を取って來いだと!?ざけんな!

無理に決まってんだろう!」

そう殺気を漂わせながら話すウィンガルドの聲にすぐ後ろにいた士達も揺する。

だが、使者は、はっきりと告げる。

「陛下の命令です!」

この使者が怯えない理由。

それは、彼がウィンガルドを含める四人の準英雄級達の使者を何度も務めているからに他ならない。

神経の図太い者がこの職に選ばれる。

ウィンガルド達は、もう帝國に著いてしまっているのだ。連れてきた帝國兵達も完全に帰宅気分で浮かれている。

ウィンガルドのおで通常の戦いよりも遙かに楽だったのは事実だ。

だが、死者が出なかったわけではない。それに彼らの殆どは陸兵で、上層部の都合で慣れないとキツイ船での移を余儀なくされている。

しかもし休んだ後、連戦をこなさなければならなかった。的にはそれ程ではないが神的にはかなりキツイ戦いを強いられていた。

苦行のような時間をやっと終わらせて帰ってきた矢先にこの命令だ。

確実に士気は下がるだろう。

「兵は?」

それを心配したウィンガルドは真っ先にそう聞く。

「このままこの兵を率いて行け、との事です」

その言葉に更に怒りが増してくる。

「はぁ?!用意してねーのかよ!!」

そんなウィンガルドの剣幕にも怖じせず淡々と使者は告げる。

「はい。その代わり、王國にいる帝國兵は自由に使って良いそうです。八萬はいますから充分ではないかと」

八萬いれば可能だ。

だがそういう問題ではない。

「ざけんなよ?てめーのその首落として來なかった事にしてやるよ」

そう言いながら刀を抜き放とうとする。

だが、使者はそれでも落ち著いていた。

「無駄です。また別の者がまた送られてくるだけです。

それに今私を殺せば貴方の立場が悪くなるでしょう」

その言葉にウィンガルドは立ち止まる。

それはマズイのだ。

ウィンガルドは貴族名が付いているが生まれながらの貴族ではない。

その強さと才能でり上がった男だ。

ただでさえ帝國に敵が多いのにこれ以上増やすわけにはいかない。

する妻と子どもの為に。

「チッ」

と舌打ちする。上手くいかない生き方にムカついてつい出てしまった。

そのすぐ後、パンパン、と手を二度叩く音がすぐ橫から聞こえる。

そちらを見ると、今まで黙っていたこの軍の副をしていた男が手を合わせていた。

「では、ウィンガルド様、今から引き返す、ということでよろしいのですね?」

と聞いてくるので仕方なく、

「ああ」と同意する。

「では、決まりですね。

さぁ皆さん!お聞きしましたね?

兵達に知らせてきてください!」

そう言うが他の士達も展開が早過ぎて著いていけていない。

それに対しても副は明るく、

「どうしました?陛下の勅命ですよ!さぁ早く!急いで急いで!」

と言ってサッサと彼等を追いたてる。

「お前、何でんな明るいんだよ?」

追い出し終わった副にウィンガルドが聞く。

「いや、明るくしないとやっていけないでしょ。

それに気分が暗いまま進軍するのはに合いませんからね」

朗らかにそう言う。

「フン」

つまんねー。

そう思いながらも重たい腰を上げる。

オリオンの首を取る為に。

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