《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第94話 しの後悔
ターニャさんと別れ、お父様の天幕に走って行く。
リリーを寢かしつけるのにし時間が掛かってしまった。
事が事なだけにどう扱えばいいのか分からず、戸うだけで何もできなかったのだが。
神眼のおかげで誰にも會うことなくお父様の天幕に著いた。
辺りはもう暗くなっており夜中の進軍は危険を伴う為、今日は森からし離れた辺りが見渡せる場所で夜営する事になっていた。
お父様の天幕近くはやはり厳重に兵がいる。
だが、彼等は俺のフードの中を知っている。
俺を見ると一度敬禮をして通り過ぎる。
俺も一度頷くだけでサッサと目的地まで行く。
そして、周りよりも一回り大きいお父様の天幕に著いた。
り口に立っていたランド隊長が聲を掛けてくる。
「お待ちしておりました!
元帥がお待ちです。どうぞ中へ」
「ありがとうございます」
中へ案されてったらお父様が腕を組みニヤニヤ顔で待っていた。
「遅かったな。
何かあったのか?」
(いや、もう事わかってるだろ)
Advertisement
そう思いながらも仕方なく口を開く。
「遅れてしまい申し訳ありません。
リリーにちょっと足止めされてしまいまして」
「ほぉ……もう呼び捨てで言い合う仲なのかー。いい事だ」
「……」
別の所に注目されてしまった。
「いえ、普段は様を付けてますよ。
というか元帥、こんな呼び方はないんじゃないかと思います。
見なかったらどうするおつもりだったのですか?」
「あんなフリをしておいて見ない訳がなかろう?実際に見ておるしな」
「グッ……」
そう切り返す俺にお父様は平然と言い返す。
「そんな事よりもリドル。
お前、自分の正を明かしたな?」
「ウッ……はい。申し訳ありません」
先程とは打って変わり真面目な表で俺にそう問うてくる。
「聞いた狀況から仕方ないという事は分かっておる。
が、しかし命令違反は命令違反だぞ。それは分かっておるな?」
「はい。分かってます」
元から怒られる気でいたのだ。
覚悟は出來ている。隠すつもりはない。
「わかっているなら良い」
真剣な表のままそう告げた。
(え?それだけ?)
あまりのあっさりさにビックリしてしまった。
「それだけ、ですか?」
そう聞いてみると特に起こっている様子もなく平然と答える。
「理由があってやったのだろう?
そしてダメな事だとわかってもいるのだろう。なら良いのだ」
「そう……ですか。ありがとうございます」
小さな事だが俺の事をしっかり汲んでくれている事にする。
俺の事を見てちゃんと考えてくれている。改めてそれを認識させられた。
(それはそうとなら俺を呼んだ理由は何だ?)
「でしたら何故僕をお呼びに?」
俺がそう聞くとお父様は1度目を瞑る。
そんな時間が2分程経った後眼を開け口を開く。
「レイン、お前に一つ命令を下す」
「は……はい!」
命令。
その言葉の重みにし惚けてしまった。
これから話す事はそれ程重要だという事だろう。
俺もを引き締め話を聞く態勢にる。
俺の顔付きが変わったのを確認したお父様が重い口を開く。
「もしこの軍が全滅するような事があればリュミオンの王様方を背負って何としても國に連れ帰れ」
「は……?それは一どういう事でしょう?」
何を言っているのかがイマイチ分からなかった為聞き返す。
もしかしたら聞きたくないから間違いであってしいという願だったのかもしれない。
「では、もっと分かりやすく説明しよう。もし私が死んだりこの軍が全滅し、軍が散り散りになるような事態に陥った場合、全ての者達を見捨てて、王様方、最悪一人でいい。國に連れて帰れ。私達の事は気にするな。ただ國に帰る事だけを考えよ。これはお願いじゃない。命令だ」
「嫌です」
厳格にもしもの時は軍を見捨てて逃げろというお父様に対して俺は即答で斷った。
當たり前だ。俺が戦場に來たのはリュミオンの王様方を救う為じゃない。お父様を守る為だ。
リュミオンの王様かお父様か。
そう問われたら申し訳ないが躊躇なくお父様を選ばせてもらう。そう決めている。心が痛むしきっと夢に出てきてうなされるだろう。
それでもここに來た理由は遂げる。
はっきりと斷った俺にお父様は再度告げてくる。
「レイン、再度言うぞ。これは命令だ」
「でしたら僕も再度お答えします。
斷固拒否いたします。その命令には従えません。僕がここに來たのはお父様を守る為ですから」
強い口調で俺に行ってくるお父様の眼をしっかりと見て俺はまた即答する。
お互い睨み合いが続いた。
どれ程経ったか分からない頃にお父様が溜息をついた。
し落ち込んでいる顔で口を開いた。
「はぁー……、そうだよなぁ、お前はそういう所あったな……」
「……」
俺はお父様の愚癡に似た話を黙って聞く。
「私はお前から十萬軍のスキル継承を外した事をし後悔している」
「はぁ……」
はぁとしか言いようがない。
というかうまい言葉が見つからない。
「もし私に何かあった時お前にスキル継承がいけば軍の再編が可能だった。それに、逃げる為の時間稼ぎも楽だっただろう」
「それは……」
それは流石に期待のし過ぎだ。
俺は三國志などの剣や槍で戦う戦の漫畫やゲームを結構やっていた。
それなりに知識もある。
だが、散らばった軍をどうやってまとめるのか、こういう時どういう配置にするのか、などと言った細かい指示が書いてあったは一つだってない。
この世界に來て何度か勉強をしたが、にわか知識もいい所だし、初戦の仕事が敗走した軍をまとめる事とか一何処のラノベ主人公だよ、と思う。
「逃げる為の捨て駒としてでもお前だけは國に帰らせなければならんのだよ」
「え?それは流石に……」
しない。
そう言いかけた俺にお父様は強めの語調で遮る。
「しないか?だがしてもらわねばならん!
過去伝説上でさえたった一人しか存在しなかった全ての魔法才能が使える神話級の魔法使い。
分かっておるのか?お前が死んだりしたらポルネシアは滅亡への道を大きく前進する事となる!」
搾り出したような聲でそうんだ。
神話級、それは英雄級のさらに上、存在さえ疑問視されている魔法才能を持つ者。
レベル10の魔法才能を持つ者だけに與えられる稱號。
過去唯一この神話級の稱號を得たとされる存在さえあやふやな者。
その名はオルガノン。
魔神の二つ名を持つ怪だ。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
8 111【書籍化】雑草聖女の逃亡~出自を馬鹿にされ殺されかけたので隣國に亡命します~【コミカライズ】
★2022.7.19 書籍化・コミカライズが決まりました★ 【短めのあらすじ】平民の孤児出身という事で能力は高いが馬鹿にされてきた聖女が、討伐遠征の最中により強い能力を持つ貴族出身の聖女に疎まれて殺されかけ、討伐に參加していた傭兵の青年(実は隣國の魔術師)に助けられて夫婦を偽裝して亡命するお話。 【長めのあらすじ】高い治癒能力から第二王子の有力な妃候補と目されているマイアは平民の孤児という出自から陰口を叩かれてきた。また、貴族のマナーや言葉遣いがなかなか身につかないマイアに対する第二王子の視線は冷たい。そんな彼女の狀況は、毎年恒例の魔蟲の遠征討伐に參加中に、より強い治癒能力を持つ大貴族出身の聖女ティアラが現れたことで一変する。第二王子に戀するティアラに疎まれ、彼女の信奉者によって殺されかけたマイアは討伐に參加していた傭兵の青年(実は隣國出身の魔術師で諜報員)に助けられ、彼の祖國である隣國への亡命を決意する。平民出身雑草聖女と身體強化魔術の使い手で物理で戦う魔術師の青年が夫婦と偽り旅をする中でゆっくりと距離を詰めていくお話。舞臺は魔力の源たる月から放たれる魔素により、巨大な蟲が跋扈する中世的な異世界です。
8 195【書籍化】キッチンカー『デリ・ジョイ』―車窓から異世界へ美味いもの密輸販売中!―【コミカライズ】
.。゜+..。゜+.書籍発売中!TOブックス様よりイラストはゆき哉様で発売中! コミカライズ化決定!白泉社様マンガparkにて11月下旬、漫畫家水晶零先生で公開です!。.。゜+..。゜+お読みくださる皆様のおかげです。ありがとうございます! 勤め先のお弁當屋が放火されて無職になった透瀬 了(すくせ とおる)22歳。 経験と伝手を使ってキッチンカー『デリ・ジョイ』を開店する。借りた拠點が好條件だったせいで繁盛するが、ある日、換気のために開けた窓から異世界男子が覗きこんで來た。弁當と言っても理解されず、思わず試食させたら効果抜群!餌付け乙!興味と好奇心で異世界交流を始めるが、別の拠點で営業していたら、そこでもまた別の異世界へ窓が繋がっていた!まったり異世界交流のはずが、実は大波亂の幕開けだった…。 注:キッチンカーではありますが、お持ち帰りがメインです。立ち食いOK!ゴミだけは各自で処分ねがいま……じゃなかった。料理メインでも戀愛メインでもありません。異世界若者三人の異文化(料理)交流がメインです。
8 126【電子書籍化】退屈王女は婚約破棄を企てる
☆2022.7.21 ミーティアノベルス様より電子書籍化して頂きました。 「婚約を破棄致します」 庭園の東屋で、フローラは婚約者に婚約破棄を告げる。 ほんの二週間前、「婚約破棄してみようかしら」などと口にしたのは、退屈しのぎのほんの戯れだったはずなのに――。 末っ子の第四王女フローラは、お菓子と戀愛小説が大好きな十五歳。幼い頃からの婚約者である公爵家の嫡男ユリウスを、兄のように慕っている。婚約は穏やかに続いていくはずだった。けれど、ユリウスが留學先から美しい令嬢を伴って帰國したその日から、フローラを取り巻く世界は変わってしまったのだった――。 これは、戀を知らない王女と不器用な婚約者の、初めての戀のお話。 *本編完結済み(全20話)。 *番外編「婚約者は異國の地にて王女を想う」(全3話)はユリウス視點の前日譚。 *番外編「『綺麗』と言われたい王女と『可愛い』と言いたい婚約者」(全3話)は本編から約2ヶ月後のフローラとユリウスを描いた後日譚です。
8 132【書籍発売中】貓と週末とハーブティー
【スターツ出版様より書籍版発売中です! 書籍版はタイトル変更し、『週末カフェで貓とハーブティーを』になります。なにとぞよろしくお願い致します!】 上司に回し蹴りをきめたいお疲れ女子の早苗は、ある仕事帰りの夜に倒れた貓を拾う。屆けた先は草だらけの謎の洋館で、出てきたのはすごい貓背の気だるげなイケメン青年。 彼に「お禮がしたいので今週末、またこの家に來てください」と誘われたが――――実はその洋館は、土日だけ開くハーブティー専門の『週末カフェ』だったのです。 ツリ目強気な仕事出來る系女子と、タレ目ゆるだる貓系男子(二面性あり)が、野良貓のミントやたまに來るお客様と過ごす、のんびり週末ハーブティーライフ。 ※ハーブの豆知識がところどころ出てきます。 ※ハーブを使ったデザートの紹介や、簡単なハーブティーブレンドメモもおまけであります。 まったり日常系なので、お気軽に楽しんでもらえると幸いです。
8 75井戸の中【完】
裏庭にひっそりとある、その古びた井戸。 誰からも忘れ去られて腐って黒ずんだ姿は、近付くのも恐ろしい程にとても不気味だった。 ーーだけど、それ以上に不思議な魅力があった。 次第にその井戸に取り憑かれてゆく俺。 そこは、俺の過去を隠す秘密の場所ーー。 ↓YouTubeにて、朗読中 https://m.youtube.com/channel/UCWypoBYNIICXZdBmfZHNe6Q/playlists ※ 表紙はフリーアイコンを使用しています 2018年10月29日 執筆完結作品
8 58