《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第97話 突然の
全軍が駆け足で平原まで向かう。
平原まで向かう途中、お父様がこちらをチラッと見た。
俺はそれに対して頷く。
準備は萬端だという意味を込めて。
使ったMPは既に全快している。
前後を敵に挾まれた。
後ろの敵は大した事は無いだろう。
だが、肝心の前に一騎無雙の化けがいる。
準英雄級の攻撃、それがどのくらい強いのかイマイチ判斷がつかない。
(こんな事なら無理してでもプリタリア様に魔法を見せてもらうんだった)
今更後悔しても遅い。
それにプリタリア様は広範囲型の魔法使いだったはずだ。
ウィンガルドは、単騎突破型の魔法使いだったはずだ。
前者と後者では倒す為のノウハウが変わってくる。
まあそれでも見たかったんだけどな。
それから一時間ほど走り、此方の方が早く目的地に著いた。
そして、陣形を展開する。今回は守り主の陣形。
オリオン家の十八番。変幻自在の亀甲陣。
陣の中でも騎馬をかせるように陣の所々に空きがある。
騎馬をかすタイミングそして亀甲陣の兵の配置変更を行うのは勿論お父様だ。
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陣の中心にいるお父様が全軍に即座に配置移の指示を出す。
他の軍だと指示からそれを兵をまとめる將に伝え、その將が更に下の者に伝えるという指示からき出すまでにタイムラグがある。
兵一人一人に指示を出せるお父様の十萬軍にはそれがない。故にこの亀甲陣の中でも騎馬兵や魔導兵は即座に敵に対応出來るのだ。
お父様が慌ただしく指示を出し、陣が完する。
その後すぐ、俺やターニャさんやリサさんがお父様に呼ばれる。
「お前達は、中心からし離れたあの位置で待機せよ」
そう言ってお父様が指を指したのはお父様が指示を出す場所から八十メートル程離れた所だった。
見た所確かに俺らがいられるだけのスペースがある。
だがそれには一つ疑問がある。
「僕は元帥の橫で構わないですよね?」
俺まであっちに行く必要はないだろう。
俺のその疑問にお父様は答える。
「いや、リュミオンの王様方はお前がいなくては不安がるだろう。橫に居てあげなさい」
「え?いや、それは……」
(今は、そっちよりも重要な事があるだろう)
そう俺が思ったのだが、橫から珍しくランド隊長が口を挾んできた。
「リドル様、私は王様方とリドル様の両方を守らねばなりません。かといって王様方を元帥のすぐ橫に居させるわけにもいきません。ですのでここは元帥のご指示に従ってください」
そのランド隊長の言葉に被せるようにお父様が畳み掛けてくる。
「そうだ。それにお前が私の橫にいようとあっちにいようと結果は変わらぬ」
(いや……まあ、そうだけど)
なんとなく納得がいかない。
俺の魔法は指示された場所からでもなんら問題なく使え、亀甲陣の端まで屆かせられる。
だけどなんか嫌だ。
だが、俺が何か言い返す前にお父様は踵を返して、「じゃあな、指示を出した時た魔法を頼むぞ、頼りにしている」とだけ言い殘し、軍の指示に戻ってしまう。
「あっ……」
けなくも俺は手をばすだけで止められなかった。
理由もないのにこんな忙しい時に引き止められない。ついそう考えてしまった。
それから暫くしてまた報告がる。
どうやら帝國軍が到著したらしい。
眼の前に丘があるのでその上から現れるのだそうだ。
だが、後陣が未だに到著していない。始まるのは二時間は先だろう。
(率いているウィンガルドとかいう奴のを顔だけでも一度見ておきたいのだが……)
俺が考え事をしていると隣にいるリリーが聲をかけてくる。
「リドル!これから戦いになるんだからお姉ちゃんから離れちゃダメだからね!」
「分かってる」
魔法はこの狀態でも使えるので別に問題ない。
悟られる可能はあるがまあそれは仕方ないだろう。もうこれが終われば帰れるし、そうなったら何時迄も俺が彼の橫にいることは無い。
どういう扱いをけるか俺にはよくわからないけど頑張って生きてくれ。
俺がそんな柄にも無いことを考えていると急報がる。
「帝國軍が布陣を整え突撃してきます!」
その報告に一同は騒然となる。
かくいう俺も驚きを隠せないでいた。
(はっ?挾み撃ちじゃないの?)
なぜ先走ったのかが全く想像がつかなかった。
騒然となる一同に、お父様も慌ただしく指示を出す。
「全軍に防制を取らせろ!」
さすがに予想外だったのだが冷靜な対処をして見せた。
ドォーン!ドォーン!
突如丘の上から太鼓の音が響く。
俺が視線をそちらに向けると。
一人だけ、神眼も屆かないほど遠いその丘の上で圧倒的な迫力を持つ男がいた。
背格好は普通だ。だが、きている服がここから見ても明らかに軽裝備だ。魔法使いは基本的に軽裝なのでそれはべつに驚かない。
だが、奴を中心に渦巻いているその風が、奴の異常さを語っている。
普通の風とは違う魔法で作られた風。
その証拠にウィンガルドの周りにのみ延々と回っている。
「あれが帝國の準英雄級……」
俺がそう呟いた途端、奴が持っていた刀を構え、突撃してきた。
それに続くように帝國軍もき出す。
何かの合図があったようには見えない。
それでも帝國軍のきはピタリと一致していた。
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