《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第101話 ちくしょう……

ポルネシア王國まで半日。

渉は立し、帝國軍がポルネシア軍を挾む形でポルネシアに向けて出発した。

ウィンガルドは荷臺で運ばれ、ウージェスと付いてきた帝國兵二人も武を取られた狀態で橫を歩いていた。

周りにはで汚れてはいるものの、それでもなお沢の放つ鎧を著た、一目で鋭と分かる兵が自分達に睨みを利かせていた。

その間、ウージェスは考え続ける。

自分の要求がこんなにあっさりと通った理由を考え続ける。

しかし分からない。

オリオンの首か、ウィンガルドの命か。二つに一つと言われた場合、ウージェスは迷いなくウィンガルドの命を取る。

何故なら帝國は過去にオリオンに痛手を被ってはいるが、それ程恨みがあるわけではないからだ。

いや、正確には恨みはきっちり果たした、と言ったほうが正確だろう。

そう、十年前、ロンドの父親の首を取っている。それ故に國への言い訳は立ったのだ。

更に、オリオンの十萬軍には弱點がある。

十萬軍には効果範囲が存在する。それ故、オリオンは、城攻めにおいて突出した將ではなかった。攻めて來れば城に閉じこもる。

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それで対応出來るオリオンの力を、帝國はそれ程脅威とは認識していない。

偶にプリタリアのコリドー家から突出した魔法使いが出ても、基本的に彼らに任されるのは國防だ。

それに、そもそもポルネシア王國は他國への侵攻にはあまり積極的ではない國風があった。

それがポルネシアが未だに小國である理由だった。

未知なるポルネシア軍の力が何なのかが分からない。

ウージェスが聞いているポルネシア軍で突出した才能はオリオン家の十萬軍だけだ。

だが、聞いていた話と全然違う。

必要な兵數が三倍なのと、兵自の力が三倍なのでは脅威度全くとしてとして変わってくる。

しかもポルネシア兵は死んだ者以外は、既に歩けるまでに回復しているのだ。

レインが使った支援魔法の効果はウージェスとの約束をした一時間後に切れてしまった。

(しかし、これは間違いなくリジェネレーション系統の魔法が使われた証拠!)

ウージェスはその事実に更に揺する。

(伝えなければなりません!オリオン家は今までとは違う、と!こんな化けのような力を扱う者を急ぎ特定し、排除しなければ將來帝國に甚大な被害が出る恐れがあります……)

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この効果を使っている者がレインだと斷定出來ていないウージェスは、ロンドを殺す指示が出來ないでいた。

不穏なきをすれば即座にウージェスと、付いてきた帝國兵二人、そして未だ目を覚まさぬウィンガルドは死ぬ。

その代わり、鷹の眼で自分を見続けている者が即座に合図を出し、ポルネシア軍の前後を歩く帝國軍が即座に攻め込んでくる。

しかし、この力がロンドが原因という保証もなく、また、ロンドを殺せるという保証もない。

逃げられてしまえば、殺され損だ。

どう見積もっても、割に合わない賭けと判斷したウージェスは黙って付いていくほかなかった。

そして、とうとうポルネシア軍は國境まで到著した。

國境で約束を反故にされ、ウィンガルド共々殺されるかもしれない、と思っていたウージェスだったが、そんな事さえなかった。

あまりにあっさりと解放された自分達を見て、ウージェスは頭を傾げる。

(力が使えなかったのか?ならば何故こんなあっさりと解放された?殺した方が得でしょうに。それとも一生に一度しか使えない能力?いえ、そんなスキル、寡聞にして聞いた事がありませんが……)

悩んでもわからない。

だが、とにかく解放された。ウィンガルドに事を聴けば何か分かるかもしれない。

そう考え、ウィンガルドを連れて帰り、起きるのを待つ。その際、包帯を取り替えるところを後ろで見させてもらう。

魔法をかけた後、すぐにし離されてしまった為よく見れなかったのだ。

ウィンガルドの傷を改めてまじまじと見つめ、ウージェスは思う。

(それにしても……見事な矢傷です。ウィンガルド様には申し訳有りませんが、しいとさえ表現ができる)

見事にポッカリとその部分だけが空いていた。周りのを抉ったのではなく、押し出した、が正しいのではないかと思われる位に見事な矢傷だった。其処には何もなかった、と言わんばかりに矢が通り抜けなければこうはならない。

當然、練の手でも不可能な蕓當。

(今、確信しました!これは間違いなく魔法使いの仕業です!!しかも弓を使っても何ら問題ないレベルの魔力をめた怪!)

その事実に背筋を凍らせ、戦々恐々としていると、ギンッ 。

ウィンガルドがまるで何かに怯えるように、また寢ている最中にとてつもない強敵が現れたかのような目の開け方をした。

そして、すぐ、腹筋の力と腳の力だけで立ち上がり、低く腰だめに構える。

その眼には、恐怖と命を賭して戦う決意をした者の覚悟があった。

だが、勿論その腰には刀はない。

レインに真ん中から折られてしまったウィンガルドの魔刀は、ロンドがしっかり回収したからだ。

そして、ウィンガルドは腰に何もない事、周りが何もしてこない事を訝しんで、やっとの事で自分の狀況を知った。

その半分寢ぼけているウィンガルドにウージェスは、聲を掛ける。

「おはようございます、ウィンガルド様」

その言葉を聞き、恐る恐ると言ったように周りを見渡し、自分の前に帝國軍副將のウージェスがいる事を確認。

(俺は……!!!!!!!!)

「くそがああぁぁぁぁぁ!!!!」

自分がどこで倒れ、そして、今この狀況に至るまでの経緯がわかったウィンガルドは咆える。

その反で塞がった右肩の傷が開き、が噴き出る。

突然立ち上がり、咆えたウィンガルドに周りの兵達は驚き、固まってしまう。

その中で、唯一ウージェスだけはウィンガルドのこの行に即座に反応する。

こうなるかもしれない、と何となく想像が付いていたからだ。

それでも、ここまでとは流石に思わなかったのだが。

「ウィンガルド様!落ち著いてください!もう敵はおりません!」

「クソクソクソクソ!クソォ!!あのクソガキ、この俺に……この俺に向かって!クソがぁぁぁーーー!!」

それを聞き、周りは、自分を傷付けた相手を許せないのだろう、と思った。

しかし、次のウィンガルドの言葉に否定される。

「あいつ、あいつ、この俺に向かって、手加減しやがった!!舐めやがって!ふざけんな!!ふざけんなよチクショウがーーー!!!」

「なっ!!!???」

ウージェスは予想外の言葉に驚愕する。

「準英雄級相手に手加減、だと……?」

そんなウージェスの呟きをよそに、ウィンガルドは橫にいた兵士の剣を奪い取る。

「ぶっ殺してやる!!」

そうびながらウィンガルドは歩き出す。

だが、それはすぐにウージェスを含めた部下達に止められる。

「お待ちください、ウィンガルド様。戦爭は終わりました。これ以上の戦いは必要ありません」

「てめーらに無くったって俺にはあんだよ!このまま引き下がれねーだろうが!」

「ご納得いただけないお気持ちはお察しします!しかし、既に彼らはポルネシア王國ってます!貴方が向かえば更に戦爭が起こります!もう帝國にはポルネシア王國との戦爭をしている余力はありません」

皇帝が変わったからと言って食べが湧いて出てくるわけではない。

現皇帝は、品の流通をよくして、死者が大量に出た前皇帝時代よりかはマシになった。痩せた農地を捨てて盜賊になる者達が増え、の可能をいつでも孕んでいる。しかも大國故、數多くの國と接している帝國は、他國との國境での爭いが絶えない。

なので、今回の出兵はかなりの無理をしているのだ。

「それに!ウィンガルド様はやっとご家族に會えるではありませんか!?」

その言葉にウィンガルドはハッとし、そして力なくその場にドカッと座り込む。

「くそぉ……」

過信していたわけではない。いや、多の過信はしていた。自分がいれば何とかなる。

事実、今までは何とかなってきた。

い頃から才能を発揮し、強くなり、皇帝直屬の部下にまでなって、好きなと結婚した。

ウィンガルドは人生で引き分けはあっても負けた事はない。

たが、今回、ウィンガルドは初めて敗北した。

圧倒的に上位に立つ者が、頭をでるかの如く自分の最高の防魔法を貫いた。

なくともウィンガルドはそうじた。

それだけならまだよかったのだ。

そんな事は今後あるかもしれないと思っていたからだ。

問題はその後、吹き飛ばされ、朦朧とした意識の中でウィンガルドは見た。

未だいレインの顔を。

「子供だった」

そうウィンガルドは呟く。

「はい?いま、何と?」

よく聴こえなかったウージェスは聞き返す。

「だから、子供だった。七、八歳の子供だったんだよ!あの軍の強さの正は!」

「な、んですって……。あり得ません!そんな事はあり得ません!私達がどれだけの努力をしてこの境地に立っているか貴方ならご存知でしょう!?小人族と見間違えたのではありませんか?」

ウィンガルドの呟きを即座に否定するウージェス。

しかし、ウィンガルドには確信があった。

「あり得ねー。小人族にしては背が高過ぎる。それに、奴の腕を切ったはまごう事無き高レベルのだったが、子供のもんだ。それにレベルに釣り合わねー程の経験不足。あの強さで大人までなってあれはねー」

「そうですか……」

納得はしていない。

しかし反論しても仕方がない。

「戻ってすぐにポルネシアとの戦爭ですかね?」

「今てめーが言ったんだろうが。無理だろ。食料も武も大義もねー。俺がやられただけじゃあのクソ貴族どもを納得させられねー」

「そう……ですね。それでも出來る限り上に話してみますよ」

それをウィンガルドは聞くと寢転がる。

「ああ、負けた……。チクショウ……」

生きててよかった。

「ちくしょうが……」

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