《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第114話 兵力
「何かあったときは彼を連れて子ども達だけでも助けてほしいと、リュミオン王から頼まれていたのだ。リュミオン王とポルネシア王と私しかいない場で頼まれたのだがな、驚き過ぎてびそうになったぞ」
笑いながらお父様は言った。
「それは驚きますね」
急いではなかったが、船での他國への輸送の一部を取り仕切るオリオン家は他國との繋がりも當然ある。ついでではあるだろうがそれなりに聞いて回っていたのだろう。
それでも見つからなかったスキルが橫の友好國にいたらそりゃ驚くだろう。
しかも、王自らの紹介だ。(用途は違うけど)
お父様はしばらく笑った後に咳払いをして空気を変えようとする。
「ごほん!笑い事じゃなかったな」
全くもってその通りだ。
「そうですね」
取り敢えず同意しておく。
「まあそれは置いといて、とにかく方位スキルが手にったのだ。こちらの指定する期間の間、そこでお前自と兵のレベルを上げてきこい」
「僕自と……兵?スクナ達のことですか?」
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疑問に思って素直に問いかける俺の言葉にお父様の目が輝いた気がした。
「彼達もそうだが、四人だけではあまりにないだろう。そこでだ、レイン。お前に兵をやる。彼らを連れて迷いの森を攻略してこい!」
「はぁ……」
盛り上がっているお父様とは真逆に俺は間の抜けた聲を出す。ドヤ顔で踏ん反り返っているお父様は、俺の塩対応に訝しげな顔をする。
「……乗り気じゃないのか?」
「え、いや、別にそういうわけではないですけど」
なんか俺の反応がおかしいみたいになっている。
おかしい。俺の反応が普通のはずだ。
「わかりました!このレイン、お父様から頂いた軍勢を率いて迷いの森を征服してみせます!」なんてことになるわけが無い。
「いや、お前なら『おお、冒険者ですか!憧れてましたので真似事ではあっても同じことが出來て嬉しいです』くらいは言うかと思ってたぞ」
「……」
確かに俺が言いそうな言葉だ。端から聞くとなんか馬鹿っぽいな。今度からもっとちゃんと考えよう。
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そう決意しながら、話を続ける。
「先ほどもお伝えした通り、僕は構いません。ただ疑問點が幾つかと不安點も幾つかあるだけです」
「お前の心配はわかっておる。もちろん解決済みだ」
未だに疑問を口に出していないのに既に解決していた。凄い。
「既に下見は済んでおる。それに鍛える兵のあてもな」
俺の疑問點をお父様は即座に返した。
お父様の私兵は使えない。周辺諸國に知れ渡っているオリオン家の兵の大の人數は周知されている。それが減ればは俺が骨に鍛えていることを公表することに他ならないからだ。
だからと言って平民も連れて行けない。
「兵のあてですか?」
「ああ」
「……奴隷を使うのでしょうか?」
「まあそれもある。オリオン家がここ數年、奴隷商たちから獨占的に買い取ってまだ訓練を終えていないデュオやダブル以上の魔導士、スキル持ちも連れて行かせる。それに引退はしたが、練の冒険者もな」
魔法才能を二つ持つ者をデュオ、スキルを二つ持つ者をダブルという。ポルネシアでは彼らが奴隷になり奴隷商が彼らを売る際にはまず必ずそこの街の領主に持って行くことが法律で義務付けられている。
その為、このオリオン城には多くのデュオ以上の魔導士やスキル持ちがいる。
「ですが、訓練兵、しかも魔導士だけでは接近戦に不安が殘ります。そこはどうするのでしょうか?」
魔法才能持ちを買ったならまず魔法の訓練しかしていないはずだ。
魔法才能を持たないダブル以上のスキル持ちははっきり言ってない。
世界の不公平さを表すかのように持っている奴は持っているのだ。
騎士クラスになれば、魔導士単でもレベル差を含めれば農民三人くらいなら相手が出來るくらい鍛えている。
しかし今回の敵は殆どが魔だ。兵士になる為に訓練をしている彼らがどれだけ役に立つかは未知數だ。
練の冒険者も引退した人を大量に雇えるとは思えない。
「それも、と言ったろ。オリオン家から出せる人材はない。ならば當然……」
「外から連れてくるんですね」
「うむ」
その答えにお父様は深く頷く。外から、というと他の貴族の領からだろうか。しずつ実力者たちを集めればそれなりの數にはなるはずだ。
(いや、待てよ……)
自分の思考に待ったをかける。
(そうすると説明責任が出てくるか)
將來の戦力を貸してしいというのだ。特にほとんどの奴隷はんで奴隷になったわけではない。主人への忠誠なんてあってないようなものだ。早い話、オリオン家に鞍替えする可能がある。仮に強くなって戻ってきても、信頼出來るかどうかは難しいだろう。
事実上、その奴隷しいからくれ、と言っているのと変わらない。
それを解消する為にはそれ相応の説明、つまりは俺の存在、能力の説明をする必要がある。
知る人がいればいるほど他者に伝わるリスクが増えるのだからあまりいい手には思えない。
すると、お金はかかるが他國の奴隷を買ってくるのだろうか。
(安くない出費になるなー)
そう予想する俺とは違う意見をお父様は出してくる。
「リュミオン王國の難民を連れてくる」
「え……え!?」
驚いて二回聞き直してしまった。そんな俺にお父様は真面目な表で続ける。
「リュミオン王國が事実上占拠され、各地から同盟國のポルネシアに難民が押し寄せている。もちろんそんな大量の人間を養っていけない。無理をすればなんとかなるかもしれんが、今の周辺諸國の狀況も考えればやはり無理だな。選別しなければならない」
選別。重い言葉だ。
「わかってます」
戦う前から分かっていたことだ。
「デュオ以上の魔導士や使えるスキル持ちなどを難民者から募り、連れてくる」
「そう、ですか。反対するわけではありませんが、信用出來るのでしょうか?」
「心配するのはもっともだ。だから、家族がいる者たちに限定する」
ゾッとした。今のお父様の顔は、目的の為ならなんでもやりそうな決意があった。
「なっ……それは、人質ですか」
「言い繕うつもりはない。代わりにこちらは家族の安全、ポルネシア國での最低限の生活を保障する」
「わ、かりました……」
言い返そうと思った。だけど、結果は変わらない。奴隷も平民も同じ人だ。どう言い繕っても、強制していることは変わらないのだ。
俺がそう結論づけ、頷くと、お父様はフッと顔を和らげる。
「連れてきたリュミオンのデュオ以上の魔導士たちを森に連れて行き、出來ることなら開拓をしてしい。そうすればそこにリュミオンの難民を連れて行くことは可能だろう。もともと使っていなかった土地だ。法律でも未開の地は開拓者の土地になるしな」
ポルネシアの法律にはお父様が言ったように未開の地の開拓に功すればそこは開拓者の土地となる。
迷いの森を開拓した場合、その土地は開拓者の代表、俺かお父様。オリオン家の者になるがそれはリュミオン人に譲る、と言っているのだ。
「それでも最低でも數年後、お前が、そうだな。最低でも一つ、魔法才能を神話の領域、レベル10に到達させてからの話だろうがな」
お父様はニヤリする。
俺は先ほどとは別の意味で鳥がたった。
レベル10。神話の領域。それは今の俺の一つの目標。何をすればいいのか、このままでいいのか。魔神オルガノン以外前例がなく、オルガノンは世に出回っている神話以上の報がない。彼がレベル10の魔法を使ったのは、間違いないそうだが、どうやってレベル10に至ったのかは殘っていない。
不安だ。取り敢えず水魔法をレベル10にしたい。
「取り敢えず目指すは水魔法のレベル9到達だな」
(ん?ああ、言ってなかったな)
俺がレベル9に到達したことを伝えるのを忘れていた。だから慌てて付け足す。
「伝えるのが遅れてごめんなさい。水魔法レベル9でしたらあの最後に使ったエクスヒールで到達しました」
「なんだと?」
俺はお父様が喜ぶかと思っていた。
しかし、お父様は逆に真剣な表に戻った。
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