《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第123話 五千て……

「じゃあまた七日後ね!」

「ええ、では失禮いたします」

二時間ほど、王の自慢話に付き合った俺は丁寧にお辭儀をする。

そして背を向け、歩き出す。

後ろからまだ王の聲が聞こえるので、しだけ振り向いて手を振った。

それは曲がり角を曲がるまで続いた。

近衛兵に連れられ、お父様がいるという部屋にる。

「失禮します」

「戻ったか、レイン。王殿下とは仲良く出來たか?」

「はい、たくさんお話しさせていただきました」

「よしよし。帰るのはもうし待て。もうすぐ私の仕事も終わる」

「わかりました」

そう返事をした俺は近くの椅子に腰掛け、しの間、ぼうっと天井を見つめる。

それから暫くして、お父様は紙をまとめ始め、近くにいた書のような人に渡してから立ち上がる。

「さて、帰ろうか」

「はい」

立ち上がったお父様につれて、俺も部屋を出て行く。

近衛兵に見送られて城を出た俺達は王都にあるオリオン家別邸まで馬車で移する。

そしてふと、帰路の最中、俺はお父様に仕事について聞いてみた。

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「今日のお仕事というのは僕の事ですか?」

なんとなくだが、そんな気がした。

リュミオンでの領地爭いは未だ激化の一途を辿っているが、既にオリオン家は後任に引き継ぎをして手を引いている。

ならば次の案件といったらやっぱり今話題になっている俺の迷いの森攻略であろう。

「そうだ。オリオン家から出す鋭兵の書類と國から出される鋭兵の人選について目を通していた」

「やはりそうでしたか。何か條件などはあるのですか?」

「もちろんだとも。無能を連れて行っても仕方がないからな。魔法に特化したお前がいるのだ。迷いの森に連れて行く者達は、最低でも一つは魔法才能がしい」

「それはまた……難しい注文ですね」

魔法才能は先天的なものであり、個人個人の才能によるところが大きいものだ。

信頼の出來る居なくなっても誰も気にしない魔法才能のある人。

それらを探すのがいかに難しいかは俺でもわかる。

「それでも國中からかき集めたからな、それなりの數にはなったぞ」

「そうでしたか。それは大変喜ばしい事ですね」

「何を他人事みたいに言っているんだ。お前の部下だぞ?」

「……え?」

今なんて?

「何を惚けているんだ?前からそう言っていただろ?」

「あ……はい、そう言えばそうでしたね」

そうだった。言うまでもなく、現オリオン家の當主であるお父様が來れる訳がない。

そして、鍛えに鍛えた軍勢を他領の人間に任せるわけにもいかない。

ならば次期オリオン家當主たるこの俺こそがそれらを率いるのにふさわしいといえるだろう。

あくまで地位という點だけは。

「まだ中が伴っているとはとても思えないのですが……」

「何事も経験だ。知識はあるのだから頑張れ」

頑張れと言われましても。それに本の中の知識がいかに役に立たないかは先日の件で経験済みですよ。

まさしく百聞は一見にしかずならぬ、百見は一戦にしかずだ。

「私に任せろ!ちゃんと信頼出來る者を用意する。それに素人を連れて行かせるつもりはない」

いや、素人かどうかの心配なんて別にしていないんだが。

だがそんなことを言っても無駄だろう。

あ、そう言えば何人くらい連れて行くつもりなんだろう。

百人、いや多くても三百人くらいなんじゃないだろうか。

三百か……。五人もまとめられる自信がないのにその六十倍は……無理だろうなぁ。

そう思った俺は一応念のため、お父様に質問をして見ることにする。

「一応お聞きしますが、どれ位の數をあそこに連れて行くつもりなのでしょうか?」

百人くらいかなー、なんて思っていた時期が俺にもありました。

「五千人を予定している」

「……スゥーー」

この夜、城の中で子どものび聲が響いたとか響かなかったとか。

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