《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第128話 迷いの森
「いやぁ先ほどは大変お見苦しいお姿をお見せして申し訳ありません」
そういって頭を下げるのは、ポルネシア王國の魔導師団師団長プリタリアである。
お見苦しいというか狂気そのものだったけどね。
「はっはっは、いえいえ、何かにそれほど熱中できるというのは一つの才能というもの。お気になさらず」
そう言って笑うお父様の顔は今でも若干ひきつっている。
あの後無事回復したプリタリア様の狂気はいったん収まった。そして、お食事を用意しているということで中に案された俺とお父様は、服裝の変わったプリタリア様と対面していた。
「これはお恥ずかしい。昔からの悪い癖でして、一つのことに熱中してしまうとどうも他の事が考えられなくなってしまうのですよ」
恥ずかしそうに頭をかきながら笑うプリタリア。
他の事には目もくれず、自分の世界を追求する。
変人と天才は紙一重という言葉を前世で聞いたことがあるが、ちゃんと結果を出しているプリタリアはまさしく天才というやつなのだろう。
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だからと言って自分の腕まで切り落とすのは狂人の所業だと思う。
「ところでレイン様、早速お聞きしたいのですが、他の魔法レベルもご報告があった通りですかな?」
「ええ、陛下に報告した通りでございます。最近は水魔法に付きっきりでして。他はからっきしで」
「とんでもない! 六屬の全ての魔法を扱えてその全てがレベル7以上などレイン様をおいてほかにおりませぬ!」
「ありがとうございます。ところでそのレイン様というのはちょっと……。私のような若輩者をプリタリア様ほどの方が様付けするなど」
「とんでもない! 魔法の世界は実力主義! 優れた才能を持つものに敬意を持つのは當然でございます」
機に乗り出して答えるプリタリアに頬をかく。
「ああ、私は生きている間に魔法の深淵を見ることができるのか……。もう五十年遅く生まれていれば。若返り薬でも開発してみるか……」
プリタリア様が自分の世界にトリップし始めた。若返り薬とか絶対売れそうだな。
ポルネシア王國の北に存在する風エルフの國にあるとかないとか。
それから、トリップ狀態から戻ってきたプリタリア様と軽く談笑し、家路へと著く。
それから數週間後、俺はとある場所に行くための馬車に乗っていた。
それは先日話の合ったオリオン領から他貴族領にまで渡って存在する、広大な森林ダンジョン。通稱『迷いの森』。
広大な森と視界を奪う霧が行く手を阻み、ダンジョンの弱強食による魔のレベルが他のダンジョンとはけた違いに強くなっていた。
長い間放置され続けたそのダンジョンだが、方位のスキル持ちを手にれたことにより攻略可能と判斷された。
高レベルの魔を倒せば、それだけ多くの経験値が手にり、そして、それだけ早くレベルが上がる。理論上はそうだ。
しかし、そこには多くの死が付きまとう。
特に迷いの森は未開拓のダンジョン。
では、なぜそこに俺を送るのか。
きっと、お父様は俺に死になれろといいたいのだろう。お父様の持つ継承スキル『十萬軍』。聲に出さなくとも効果範囲全ての人間に指示を出せるオリオン公爵家のスキル。
その指示には死ぬとわかってて出す命令もある。躊躇すればするだけ時間が奪われ、一秒を爭う戦場でそれは敗北につながる可能がある。
俺はオリオン公爵家の後継ぎとして指揮をしなければならない時があるだろうし、お父様もそれをんでいるし、國を守るためには必要なことだ。
「すでに先行部隊をを向かわせ、り口付近ではあるが、地図と探索、拠點造りを行わせている」
そういって先行部隊が作った地図を渡してくれる。
直徑だけでも數十キロにも及ぶ大陸でも指折りの巨大なダンジョン。
この森を長くても5年、できれば3年で攻略しなければならない。
移が終わり、迷いの森の前までくる。
十メートル近い巨大樹が不規則に並ぶその景は圧巻であった。まだ太を燦燦と照り輝いているというのにすでに口付近は暗くなっている。巨大な木が集しているため、太が地面まで屆かないのだ。
口付近はまだ霧がないのにもかかわらず先を見ることができない。
連れてきたスクナ、アイナ、コウ、メイ達も張を隠せないようだ。
「レイン様、本當にこの中に?」
「ええ、そうしなければいけない理由がありますから」
大國であるガルレアン帝國を敵に回している以上、ポルネシアの未來は俺たちにかかっているといっても過言ではない。
俺の後ろには、お父様が各地から買った奴隷達と、お父様に忠誠を誓っている鋭、そして、リュミオン王國の元騎士達。
皆一様に不安そうな顔をしており、特に奴隷達のモチベーションはあまりに低い。
「ではお父様、行ってまいります」
「ああ、頼んだぞ」
不安を押し隠すように、俺は連れてきた者達と共に迷いの森に足を踏みれる。
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