《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第137話 初手

怨嗟の聲を上げながら走ってくるゾンビに対してこちらは盾と槍を構えさせ集隊形で迎え撃つ。

程範囲ったゾンビ達に一斉に魔法が飛ぶ。

魔法は張られていないようで、魔法範囲のゾンビがあらゆる魔法で々にされて宙を舞う。

しかし、それらをけてなおゾンビ達は無機質に、ただ真っ直ぐに突撃してくる。

散った片や倒れたゾンビ達を踏みつけながらその腳はまるで緩めない。

そして、激突する。

弾ける片と雙方の悲鳴が戦場に響く。

ゾンビに複雑な戦法はない。ただ突撃して手當たり次第生きた人間に攻撃すること。

一方、こちら側はポルネシア王國の鋭。ゾンビの大群の突撃を見事に抑えている。

それをチラリと見るが、俺の意識はその後ろに向いている。

フレッグスの常勝戦。ゾンビに突撃させた後にゾンビごと巻き込んだ攻撃をする。

時には魔法で、時には矢で、時には騎馬に突撃させる。

単純だが対策の難しい、數多の軍が壊滅させられてきたフレッグスの必勝戦だ。

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第二波で何がくるか気をつけなければならない。周りの參謀達も含め、たった一人を除き、帝國軍の第二陣を警戒しているとかだった。

「レイン様!」

真橫で聞こえてきたび聲。次の瞬間、俺の數メートル橫で火花が散り剣戟の音が響く。

そこには舞い散る本陣周りの兵だった殘骸と吹き荒れる暴風の中、一人の男が立っていた。

おいおい。冗談だろ。いきなりお前が來んのかよ。

「ウィンガルド!」

そこに立っていたのは、3年前に見た時と変わらず溢れる暴風を見にまとった軽裝の男。ガルレアン帝國が誇る六人の英雄級魔法使い。

風のウィンガルドだった。

ウィンガルドは鋭い眼で俺を睨みつけると即座に2撃目を放とうとする。しかし、その剣戟もスクナが弾く。

「レイン様、お下がりください!」

「兵は何をしていたんだ!?」

何の前れもなく真橫に現れたウィンガルドに、本陣の參謀や將軍達も揺しながらも指示を出す。

「何であれ敵將がまんまと現れたのだ! 皆の者、囲んで殺せ!」

その言葉に本陣守りの兵達が一斉に駆けつける。

俺は後ろに下がりながら自分の周囲に防魔法とウィンガルドにデバフ魔法をかける。

しかし、俺の魔法が當たる瞬間、ウィンガルドから暴風が吹き荒れ、一瞬でその場から消えてしまった。

しかし、俺の目にははっきりと見えていた。

風魔法とステータス移で限界まで早くしたAGIでポルネシア兵の間をって自軍に帰るウィンガルドを。

「レイン様申し訳ございません。やつを取り逃しました」

スクナが即座に俺に駆け寄り謝ってくる。

「いえ、ウィンガルドの目論みに気付けなかった私の落ち度です」

まさか初手で終わらせにくるとは流石に思わなかった。今はもう俺の神眼でしっかりウィンガルドを追っている。

AGIとSTR以外の全てのステータスを犠牲にした超速移。俺ですら見失いかけるほどだ。他の兵士に見えなくても仕方がない。

「レイン様、本陣を今すぐ移させましょう!」

「そうです! もう一度同じことがあるかも知れません。本陣を隠し、敵の目から隠しましょう」

そう進言して來る參謀達に俺は首を振る。

「いえ、本陣が無くなってしまえば兵の指揮に関わります。ここはこのままでいきます」

「しかし! 魔導將に何かあればこの軍、いえ國は……」

「不甲斐ない姿を見せてしまったことは謝罪いたします。汚名はきっちりと武功を持って返上させていただきましょう!」

不安がる參謀達を橫目に俺は前に出る。

「帝國兵騎馬突撃してきます! 數およそ一萬!」

斥候の報告を聞く。

「今度はこちらの番です!」

俺は両手を虛空に掲げ魔法を発する。

レベル8聖魔法「聖域方陣サンクチュアリ」

ポルネシア前線が淡くり輝き、戦っていたゾンビ達が一斉にきを止め、元の骸へと戻っていく。

「こ、これは……」

「魔導將……」

絶句する周りの者達を無視し、俺は次の魔法の餌食となる者達を見る。

突撃して來る騎馬隊だ。

浄化されたゾンビ達を見て突撃を緩めているがもう遅い。

レベル4水・土複合魔導「泥沼マッドフィールド」

ジュブリ、という音が聞こえそうなほど、踏み固められていた草原一帯が地面に沈んでいく。

沈みゆく泥沼から抜け出そうと馬がもがくが、どんどんと沈んでいく。

それを橫目に俺はこちらを見上げる弓兵と魔法兵の隊長に合図を送る。

気勢を上げて一気に放たれる魔法と矢に泥沼の中の帝國兵が次々と斃れていく。

帝國側の魔法兵が帝國騎馬隊を助けようと土を固める火・水魔法をかけている。

しかし、泥沼は全く固まらない。

相反する魔法をかけた場合、MPが強い方が勝つ。帝國の鋭が束になろうと俺のMPには絶対に勝てない。

いつまで立っても変わらない泥沼に帝國側は痺れを切らし、帝國騎馬を救おうと歩兵が縄を持って泥沼にる。

それを見た俺は、魔法を解除すると同時に帝國魔法兵がかけている魔法と同じ魔法をかける。

レベル5火・水複合魔導「堅土ドライグラウンド」

次の瞬間、先ほどまで泥沼だった場所が一転、ガチガチに固まった堅土に変わる。同時に俺はポルネシア王國の將軍リークに合図を出す。

「任せましたよ!」

「お任せあれ!! 全軍突撃だぁ!!!」

その號令と共にポルネシア王國全軍が突撃を開始する。

帝國側も慌てて兵をかすが、こちらの方が圧倒的に速い。

泥沼に下半を埋められ抜け出せない帝國軍はポルネシア王國騎馬隊の突撃をまともにける。

もがき苦しむ帝國兵に、ポルネシア王國軍の無慈悲な刃が突き刺さる。

その日、帝國は一萬の騎馬兵を失った。

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