《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第143話 吠える
空を覆う絶。逃げうポルネシア・リュミオン兵達。
そんな狂の最中、示し合わせた聲が響き渡る。
「「「「「「魔法反マジックリフレクション!!!!!!」」」」」」
ポルネシア・リュミオン連合軍の六箇所から響いた聲と共に、魔法が放たれる。
次の瞬間、手を掲げた六人の天上、ポルネシア・リュミオン連合軍全域に半円狀の壁が出來上がる。
その景に先程まで半狂であった兵士達は空を見上げる。
両軍が微だにしない中、隕石が魔法反マジックリフレクションにれる。
その瞬間、両軍の兵士達は信じられないものを目にする。
隕石が魔法反マジックリフレクションにれた途端、空を割るような轟音と共に帝國軍側に跳ね返ったのだ。
その信じられない景を呆然と見守る両軍。まるで時間が止まったかの様に、30萬を超える全ての人間がじろぎ一つせずその景を見ていた。
そして、突然のことに困し、死が迫っているというのに夢でも見ている様な視線で見ていた帝國兵達の陣のど真ん中に隕石が落下する。
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次々と降り注ぐ隕石。弾ける大地と塊となった人間達。
靜寂に水を打ったように悲鳴と困の聲があちこちから聞こえてくる。
それはまさに阿鼻喚の地獄絵図であった。
『全軍、突撃態勢!!!!』
ある種の幻想的な景の中、ロンドの『十萬軍』によりポルネシア・リュミオン全軍の脳に聲が響き渡る。
だが、呆気に取られた兵士達はけなくなっていた。そんな兵士達にロンドはさらなること発破をかける。
『全軍、今すぐ持ち場に戻れ!! 突撃態勢だ!』
「「「「お、おおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!」」」」
再度の聲掛けに兵士達は雄びを上げながら持ち場に戻り次の合図を待つ。
そして、最後の一つの隕石が落ちた瞬間、全兵士の脳にロンドの命令が響き渡る。
「全軍! 突撃だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」
「「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!!」」」」」
ーー帝國軍にて。
「あ、有り得ない……」
「こんなことが……」
跳ね返り続け、降り注ぐ隕石によって半狂で逃げう帝國軍を見つめながら、帝國六魔將、土のバスターと火のキャンティスは呆然とする。
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「あ、あんな魔法が……」
「……」
絶句する二人をよそに、隕石の最後の一つが帝國軍に落ちる。
それを合図にポルネシア・リュミオン連合軍が突撃を開始した。
「バスター様、キャンティス様! 今すぐお逃げ下さい!」
その景を見た將軍や參謀達がしきりにバスター達を急かしてくる。
だが、二人はくことはできなかった。
失敗をした事がなかったが故に、そして帝國六魔將の誇り故に、周りの聲を聞かずに現狀を打破する方法を考えてしまっていた。
そんな時だった。
ポルネシア・リュミオン連合軍の戦闘が帝國の最前線、いや最後尾に到達する。
「な、何だあれは!?」
參謀達の視界の先では、真っ黒な腕が重裝備で固めた帝國軍の兵士を次々と宙に薙ぎ払っていた。
そして宙に舞った帝國兵は空中でバラバラになりながら逃げる帝國兵に降り注ぐ。
帝國兵によって埋め盡くされており前に進むのに苦労するはずだが、その悪魔の様な突撃はまるで速度を緩ませることなく真っ直ぐバスター達がいる本部に突撃してきていた。
「は、速すぎる!」
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「真っ直ぐこちらに向かってくるぞ!」
「バスター様! キャンティス様! お逃げ下さい! 我々が時間を稼ぎます!」
「バスター様! キャンティス様!」
その周りの聲にバスターはカッと目を見開くと、隣で唖然としていたキャンティスの肩を摑む。
「きゃっ! 何?」
「キャンティス! お前は逃げろ!」
「え、え? 何を言ってますの?」
「そうです! バスター様も一緒に……」
突然のバスターの大聲にキャンティスや周りの參謀達も驚く。
「このまま逃げればあれに背を討たれる。英雄級の魔法使いに小手先の技は通用しないとは俺たちが1番よく分かってる。キャンティスと俺、殘るのなら俺が適任だ」
「そんな……」
「お前達は帝國兵を一人でも多く帝國に逃がせ」
「……」
バスターのその一言は帝國軍の敗走を意味していた。
「バスター様……」
「行け……!!」
「ご武運を!!」
バスターの覚悟を見た參謀達は馬に乗り敗走する兵士達に紛れ後退していった。
それを見送ると、既に眼前にまで迫った敵を見據える。
「くっ!? 地突巖壁アースウォール!」
突如びてきた真っ黒な手を防ぐために魔法を使う。
地面から壁の様に突き出てきた巖の壁は激しい音を立てる。
どうやら地突巖壁アースウォールは黒い手を防げた様だ。そんな安心したのもつかの間、橫に真っ二つに斬られる。
そして、平になった地突巖壁アースウォールの上に五人の人影が降り立った。
「あははははははは!!!!! よえぇ、よえぇ! 弱過ぎんぞテメェら! あっさり負けてけつ捲ってんじゃねぇぞ! あははははは!!」
「ミリー、はしたないよ」
笑う怪の様な様相をしたを銀髪の獣人のがたしなめる。
「あっさり終わるならいいじゃん。どうせつまらない戦爭だよ」
「そうそう。全然楽しくない戦爭だよ」
金髪の小人族らしき年達が気怠そうに話している。
「み、みんな。失禮だよ。あ、あの! 貴方は帝國の偉い人ですか? お名前は……、バスター・イール・ド・ラチェス、様ですか?」
「バスター? おいウルカ! 今バスターっつたか?」
話の途中で興した様子のミリーが會話にってくる。
「う、うん。私の鑑定眼に間違いがなければ、だけど……」
そんなミリーに、ウルカは自信なさげに返答する。
「バスターっつったらおめぇ、くくくくく。帝國六魔將、土のバスターだろ? くくくくく、あっはっはっはっは!」
バスターの名前を聞き、ひとしきり笑ったミリーは、次の瞬間、さっきを振りまきながら歯をむき出しにしてバスターを睨む。
「こいつは俺様の獲だ。おめぇらは先行って帝國兵の汚ねぇけつでも追いかけてろやぁ!」
「だめ」
「ぁああ? 俺様とやるっつうのかアイナよぉ?」
即答で拒絶するアイナにミリーが食ってかかる。だが、そんなミリーの殺気の籠った視線にもじず、アイナは淡々と言葉を返す。
「レイン様が帝國六魔將は必勝の條件で戦えと。貴方がメインなら私と風魔法のコウとウルカの四人掛かりでやる」
「んなかったりぃ事できるか! 邪魔だからさっさと行け!」
納得できないミリーと淡々とゆずらないアイナが一即発になりそうな雰囲気の中、金髪の雙子が発言する。
「いいんじゃない。この人、MP使いまくってもう手負いでしょ? ミリーが負ける要素ないし。そもそもこの時間が無駄だよ」
「そうそう。それにアイナはともかく僕達は普通に邪魔になるよ。レイン様抜きの連攜訓練とかしてないし」
「おう! 分かってんじゃねぇか! さすがコウメイ兄弟!」
「……」
「3対1。文句ねぇな?」
無言になるアイナにミリーが上機嫌で聲をかける。しかし、その瞳にはそれ以上ガタガタ抜かすとお前からやるぞ、という言外の意味が込められていた。
「ウルカ」
「はっはい!」
ほんの數秒の思案の末、アイナは今まで黙ってことのり行きを見守っていたウルカに聲をかけた。
「貴はここに殘りなさい」
「おい!」
「手を出す必要はないわ。追撃戦と言ってもこちら側でも多數の戦傷者が出るわ。後のことはロンド大將軍に任せる。いいわね?」
「は、はい!」
「おーけーおーけー! さて話は決まった。待たせて悪かったな、おっさん」
真っ黒な闇に覆われた腕に巨大な大剣を持ち直し、再度バスターに向き直る。
他の三人は先を急ごうと駆け出そうとする。
「行かせん! 地突砲巖アースバレット」
「やらせねぇよ! 詠唱霧散アリアバニッシュ!」
地面から生えようとしていた土は、ミリーの魔法により砂となって崩れ去る。
「さっさと行けやザコども! ここからは大人の殺し合いだ!! あはははははははは!!」
全から闇のオーラを噴き出しながらぶミリーを置いて三人は帝國軍を追っていった。
ウルカもし離れた場所でことのり行きを見守る。
「ああ……滾る。おめぇの魂の輝きに! 俺様の魂が震えてるよぉぉぉ!!」
恍惚とした表で歯をむき出すミリーに怯えることなく、バスターは右手の大剣、左手の大盾を構える。
「ガルレアン帝國六魔將、土のバスター」
「あはははははは、レイン六剣奴、ミリー・シュタルタル! お前の魂の音を俺様に聞かせてくれぇぇぇぇぇぇええええええあああああ!!!」
二人が激突する後方にて、ロンド率いるポルネシア・リュミオン連合軍本軍は駆け足で前に進んでいた。
そんな中、ポルネシア王國の旗を持った數名が移しているロンドの本軍までやってくる。
「ウルカか、どうした?」
「あ、ロ、ロンド西部大將軍様、あの……」
「簡潔に述べよ。急いでいる」
「は、はい! 帝國軍中央司令部でミリーが暴れてます!」
「バスターとキャンティスか?」
「バ、バスターさんだけです。他はアイナちゃん達が追ってます!」
「分かった。お前は救護班に回れ」
「は、はい!」
ウルカからの報を元に味方の軍全に指示を出す。
元帝國軍司令部で暴れているミリーから距離を取ること。敵將のキャンティスや將校達が逃げていること。追撃戦で帝國軍をばらけさせない様に気をつけることなどである。
だが、次の瞬間、吠える様な聲と共に前方から歓聲が聞こえてくる。
「ガルレアン帝國六魔將、土のバスター討ち取ったぞーーーーー!!」
「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉおおおーーー!!!!」」」」」
歓聲が上がるその中心では悪魔の様な様相をしたミリー・シュタルタルが天に高く吠えながらんでいた。
「信じられぬであろうな」
掲げられるバスターの首と吠えるミリーを見ながらロンドは呟く。
「お前達のこの今の狀況を作ったのが、三年も前……わずか十歳にもならない子どもが作ったものであると言うことはな」
ポルネシア王國貴族の裏切りから始まり、不戦協定を結んでいたはずのリコリア共和國の突然の協定破りからの宣戦布告。友好國であった筈のナスタリカ皇國の反転。
そして、ガルレアン帝國、バドラキア王國からの宣戦布告なき國境橫斷。
その全てが神の眼を持つ十歳にも満たない年によって見破られ、対策されていた。
予定外の事態はたった一つ。北のエルフの森を帝國軍が抜けてきた事だ。
それ以外の萬事は全て想定。
「父親であるこの私ですらゾッとするよ。レインがもしお前達帝國側で産まれていたらと思うと」
帝國は現在の皇帝になってから貴賤問わず優秀なものであれば高い地位につけるようになっていた。レインならばきっと、仮に奴隷として生まれていたとしても重寶され、あっという間に皇帝の耳にり、國の重鎮となっていたであろう。
そんなことになればポルネシア王國はなすもなく躙されていた。今ポルネシア王國に存在する全ての人員を員しても、帝國兵を率いたレインは止められないのだから。
そんな最悪の事態にならなかったことに、天に謝する。
「ポルネシア王國最大の幸運は、レインがオリオン家の長男として生まれた事」
まさに幸運。そうとしか言いようがない。
「そして……」
波が引くかの如く逃げる帝國兵を冷たい瞳で見つめ、呟く。
「お前達ガルレアン帝國最大の幸運は、三年前のあの日……私を殺せなかったことだ」
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