《一兵士では終わらない異世界ライフ》盜賊のアジト

–––☆–––

俺とクロロは見張りが倒れているり口から盜賊団のいるであろうへ侵する。

「この……鉱山の跡か何かですかね?」

俺はそんな風にじ、クロロに尋ねてみた。クロロは橫に首を振った。ありゃ。

「鉱山であればもっと周りの環境に影響が出てますよ。でも特に変わったことはないですよね?」

「確かに……」

「恐らく盜賊団が自分達で掘ったんでしょうね……」

「それにしては、かなり広いみたいですけど……」

道が沢山枝分かれしているのだ。それだけ部屋もあるということだろう。これを果たして自分達で掘るだろうか……何かある気がするな……。

「どうしました?」

「いえ……なんでも」

気にしすぎかな。俺は頭を振って思い浮かんだ変な思考を外へ追い出しておいた。集中、集中……。

の中に広がる道には遮蔽となるない。途中で盜賊と鉢合わせた場合は勿論生かさず殺すしかないだろう。

俺とクロロはササッと移する。と、の悲鳴が聞こえてきた。

「今のは?」

「恐らく捕らえられたの聲です。盜賊はの捌け口にを攫っていくんですよ。それから奴隷商人に売り飛ばすんです」

奴隷……俺は思わず顔を歪めた、

クロロは嫌悪をじているのか、おっかない顔でそう言った。確かに、襲ってきた盜賊やら山賊がよくを置いていけ、なんて言うセリフをよく聞くな。

俺はどうするかという目線をクロロに向ける。クロロは迷いもせずに悲鳴が聞こえた方へ向かっていった。

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俺の索敵スキルの範囲に既に気配を捕らえている。気配はおよそ三人……が最低一人だから盜賊は一人か……二人か。

俺もクロロの後ろについていって、悲鳴の聞こえた方にいく。突き當たりを右に曲がったところで、視界に盜賊の男が一人とが二人いるのが見えた。

は鉄格子の中にっており、盜賊の男はその中にって一人のの腕を無理矢理に引っ張っていた。

「おら!早く來やがれ!」

「い、いやぁっ!」

「おやめください!」

もう一人のは盜賊に縋り付き、止めようとしているが毆られたり蹴られたりしている。二人のはどちらもメイドの服を著ていて、馬車での移中に襲われたのだと考えられた。主人はどこだ?

と、そこへ鬼の形相のクロロが突っ込んでいった。俺は後ろで誰かこないかを見張ることにする。

後ろから盜賊の男が、聲もあげずに倒れたのが聞こえた。さすがクロロだ。

「大丈夫ですか?」

「あ、貴方は……?」

これはさっき連れて行かれそうになっていたの聲かな?これでクロロが男ならラブストーリーが始まっただろうが、クロロはだ。

あ、でもクロロにそういう趣味があればいいのか?おぉ……百合の花が見えますねぇ。いいですよぉ……もうユリユリしちゃうぅ!

(閑話休題)

「私は名を名乗るほどの者では……それよりまずはここから出ましょう」

クロロがそう言っての手を引こうとすると、それを遮るようにんだ。

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「お待ちください!お、お嬢様がまだ!」

必死のびに俺は思わずそちらへ視線を向けた。メイドが二人、クロロに縋り付いていた。その表は必死そのものだ。

なるほど、この人達の主人は別で監されているか……既にの捌け口となっているかもしれない。

「わかりました。私達が必ず助け出しますから、ここからかないでくださいね?」

「は、はい……」

それでメイドの人達は安心したのか、そのまま気を失ってしまった。見ると、顔には疲労のが見える……そりゃあそうか。

こんなところに監され、主人はどこかに連れて行かれ、いつ犯されるか不安で仕方なかったのだろう。

「グレイくん……」

「あ、はい……」

クロロはメイドの人違をそっと寢かすと只ならぬ殺気を放ち始めた。ふえぇぇ……。

「盜賊共に目にもの見せてやりましょう……ね?」

「あ、はい」

怖い。なにが怖いってクロロの殺気が怖い。クロロさんパナい……っす。

–––☆–––

の中を進んでいき、途中途中で鉢合わせた盜賊をマジで怖い笑みを浮かべたクロロが全員気絶させていた。

なぜ殺さないのかというと……、

「後で懲らしめるためですよ?」

とのこと……クロロは正義が強い上に下衆を許さない質らしい。俺はこのとき、クロロを敵に回さないと誓うことにした。もう、エッチなことを考えないようにしようね!

それから、奧に進んでいくとやがて、人の気配が多數確認できるところまで來た。の道が大きく開けた空間だ。

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俺とクロロは道の角にを潛め中の様子を見てみる。中の様子はというと……広々とした空間をしており、中には盜賊が數十……奧の方に、し豪華な造りをした椅子に盜賊の頭であろう髭の生えた禿頭の親父がどっさりと座っていた。そして、その禿頭の右隣に見目麗しいを強張らせて震えていた。服は白が基調な綺麗なドレスで、緑の髪がしく、緩やかウェーブがかかっていた。

年齢は俺よりは上だろうというのは分かる。だが、あんまり離れてもいなさそう……といったところだ。

髪と同じで深みのある緑の雙眸に涙を溜めている。おそらくは、さっきのメイドの人達の主人だろうな。

「どうします?」

「とりあえず奴等を生け捕りにしましょう……そして死より恐ろしい報いをけてもらいましょう……」

「怖いんですけど……」

「なにを言っているのですか、グレイくん?の捌け口としか使わない愚かな者共には當然の報いですよ?」

うわぁ……まあ、俺も強とかアダルチィーなもので見るなら興するが現実でおきたら嫌悪しか抱かないな。

俺たちがそうこうしているうちに、禿頭がに手をばし、抱き寄せる。そしてその手は躊躇いなくそのへとばされ……。

ヒュン

と、俺の頬をなにかが掠め通った。そして俺の視線の先で禿頭が泡を吹いて気絶した。その鳩尾には鞘に刺さったままの刀が突き刺さっていた。俺は振り返って、後ろにいるであろうクロロに目を向ける。それと同時にクロロが飛び出し、禿頭のところまで一直線に走っていく。

その場にいた盜賊共はなにが起こったのか訳が分からず、ただ呆然としていた。俺はやれやれとクロロの後についていった。

クロロは禿頭の隣に落ちていた刀を拾い、再びそれはクロロの腰へ戻った。それからクロロは直ぐにの元に駆けつけてその肩を抱いた。

「あ……ぅ……」

は恐怖で強張っていたために呂律が回らないようだ。クロロは、「大丈夫」と微笑みかけて、呆然としている盜賊共の方に振り返った。

「哀れな人達ですね……貴方方は、今からこの私の刀の錆としてやります」

「な、なんだと!?ふざけたこと抜かしてんじゃなぇぞ!」

と、一人の盜賊がんだのを皮切りに他の奴等も我に返って、口々にびあげ武を取り出した。

もし、ここで盜賊達が武をとらずに投降してくれたら地獄を見るくらいで済んだ。でも武をとってしまったこいつらは、地獄よりも恐ろしい目に遭うことだろう。なーむ。

だから、仏教じゃねぇんだよなぁ……。

「おめぇら!やっちまうぞ!」

襲いかかってくる盜賊共。俺は弓で襲いかかってきた最初の四人の頭を抜く。クロロはを守るように盜賊を三人ほどぶった切った。

しかも半分に……。

これに盜賊共は震え上がって泣きんだ。目の前で仲間が半分にぶった切られるグロい景を見たんだ。普通の人間ならば恐ろしくて泣きぶだろう。

こいつらの反応は當然のものだった。

というか、俺も震え上がった。人間を文字通り真っ二つ……果たして、それをするにはどれだけの修練が必要だっただろう。

「ふっ……詰まらないものですね」

怒り心頭のクロロ。お前、キャラ変わってねぇか?

クロロは、恐ろしさのあまり腰を抜かしてけないでいる盜賊の一人に刀の切っ先を向けて侮蔑の視線でもって、相手を見據えた。

「下衆なあなた方は生きている価値もありません。死んで償うことができることを謝してください」

「あの……クロロさん……殺さないんじゃ?」

「いえ、やはり限界です」

そうですか……しかし、こいつらには同してしまう。前世の俺もかなりのクズだったからなぁ……俺はこうして転生しているがこいつらは償う機會すら與えられないんだもんな。でも、ここで殺さないという選択もまた俺にはない。

クロロが切っ先を向けた盜賊を斬ろうと刀を振りかぶったときである。

俺の脳に警報が鳴った。

ガンガンと頭痛にも似たアラーム音に俺は咄嗟の反応でクロロとを抱いて飛んだ。

「なっ!?」

クロロは突然のことで驚いており、に関しては気絶してしまっているがそんなことを気にしている余裕はなかった。

俺の索敵範囲に突如現れたそれ・・から攻撃の気配が迫ってくる。次の瞬間には俺の頭上を輝かしいが通り過ぎた。

後に殘ったのは焦げ臭い匂い……ふと、振り返るとさっきまで椅子の上で泡吹いて気絶してた禿頭が黒焦げになっていた。脂ぎったの相乗効果かこんがりを超えて真っ黒焦げ。豪華な造りの椅子は見る影もなく灰となっていた。そして視線を逆にすると、俺たちがこの空間にったときのり口のところに人影があった。

オールバックの髪に鋭い目付き。服は鼠きやすそうな素材だ。つきがガッチリとした男で、雰囲気が只者ではないというじを醸し出している。そして特出すべきは男の右手だ。そこには、あるはずの右手がなく、正確にはあるにはあるが……右手首から肩に掛けて何かが取り付けられていた。機械的なその造りはあの林でみた魔道機械マキナアルマのように見える。ただサイズはそれこそ男の腕の長さくらい……。

なんなんだ…?

「まったく邪魔してくれるなぁ……クソがっ」

男は悪態を付きながら、こちらに向かって歩いてくる。クロロは後ろにを寢かせると男と対峙した。

「何者ですか貴方は……」

男はハッと笑い飛ばした。

「まあ……用心棒ってところだな」」

「そうですか」

男の馬鹿にし切った態度に、クロロはイラッときたのかコメカミ辺りに青筋を浮かべている。そのうちブチッとか聞こえてくるかもしれん。

「たくよぉ。このまま楽に仕事を終わらせられるかと思えば面倒くせぇ。なんだ?全員ヤラレちまってんじゃねぇかよ」

男は辺りを見回して死んでる奴等に目を向ける。生きている奴もいるが、眼中にないように見えるのは何故だ?

「はぁ……面倒だが仕事だからよぉ。てめらには死んでもらう」

「仕方ないですよね仕事なら……面倒であってもやらなくてはいけませんから。でも、貴方に殺せますか?」

「生意気だなっ!」

クロロの挑発で男はんで右手の機械部をこっちに向けてきた。あ、やばい。

俺は咄嗟に地面に手をついて魔力を流し、詠唱を始めた。

「〈鋼鉄の障壁・荒れ狂う大地に立て〉【ロックシールド】」

中級地屬【ロックシールド】……巖盤をひっくり返し、ズガンッとひっくりかえった巖盤に男の右手から放たれた白い線がぶち當たった。ぶつかった瞬間に衝撃波が轟き、音が痛いくらいに聞こえてくる。幸い線が巖盤を貫くことはなく、攻撃が止んだと同時に巖盤がバタンと地に戻る。再び視界にった男は意外そうに顔を顰めていた。

「たくよぉ……面倒だな」

「こっちだって簡単にやられるわけにはいかないんですよ……」

死ぬなんて冗談じゃない。ソニア姉やラエラ母さん……何より俺を守ってくれたアルフォード父さんのために死ぬわけにはいかないんだよ。

クロロは元から戦う気満々のようで、刀の柄に手をかけている。男はそれを見て面倒くさそうに頭をガシガシと掻きむしった。

「本當に面倒だなぁっ!!」

男は再度右手から線を放ってくる。今度は防がずに、俺とクロロはそれぞれ左右に避ける。クロロは避けると同時に前進し、男に接近する。刀の間合いにると同時に抜刀し、男目掛けて刃が飛んでいく。線を放ち終えた男はクロロの攻撃を右手の機械部でけた。かなり頑丈なようでキリキリと音を立てて、男とクロロが鍔迫り合いの狀態となる。

この狀態、普通に考えればであるクロロの方が不利なのは間違いない。が、鍔迫り合いの均衡は崩れることなく……むしろ、クロロが押しているように見える。

「ハァッ!」

クロロは裂帛の気合いとともに男の右手を弾く。堪らず男のその右手が上方に吹き飛び急所がオープンとなる。その一瞬の間隙で、クロロは男の腕を弾くために左上方に振り抜いた刀を返して、男の右肩から左脇腹までを切り裂いた。

否……切り裂くことは出來なかった。弾かれた右手でその攻撃を防いだのだ。戻りが速い。これにクロロは驚いていたが、直ぐに激しい剣舞を男に見舞ってやる。男はその猛攻を顔を顰めて全て防ぐ。こう激しいと援護がし難い……そもそもクロロは援護とか求めていなさそうだ。

俺はの方に駆け寄り様子をみる。気絶しているだけというのはわかっているが、一応呼吸や脈の確認をしておく。

ちゃんと生きているな……ふと辺りを見回すと盜賊共がいない。混に乗じて逃げたな……。

俺は一度を安全な場所へ移させるために背中に背負い、この広い部屋から出てさっきの牢屋のところまで行く。メイドさんに會わせようと思ったからだ。り組んだ道だがマッピングは完璧。スイスイと進んでいき、牢屋に向かっている途中で道の先に人影を見つけた。

盜賊が二人とさっきの牢屋で出會ったメイドさん達だ。なんでこんなところに……と思ったが、おそらくメイドさん達は牢屋で気が付いて俺たちがいないから自分達で主人を探しに來たのだろう。そして盜賊の方はさっきの部屋から逃げ出した奴だろう。きっと、この道で運悪く鉢合わせしたんだろうな。

俺は弓を引いてんだ。

「【フェイクアロー】!」

放たれた矢がぶれて二本になる。この弓技は一本の矢で複數の敵を抜く魔技だ。矢の節約と時間短が期待できる。

二本の矢は盜賊の二人のコメカミに直撃し、貫通する。赤黒いが流れ、盜賊の二人は死んだ。

放心するメイドさん達を他所に、俺は走って二人のメイドさんの元に駆け寄った。

「大丈夫でしたか?」

「あ、君は……先程のお方と一緒にいた……」

「あぁ、はい。まあ、今はとにかく安全なところへ……あと、この人が貴方方のお嬢様ですか?」

と、俺は背中に背負っているを強調する。メイドさん達はそれでに注目した。

「はい!ありがとうございます!」

「あ、そうですか……よかったです」

よかった……俺はこのを、この人達に任せてクロロのところへ戻ろうと歩を進めた。

彼奴の戦いが終わっていなければ……なんとか加勢してみるか。俺は來た道を戻っていき、再びあの広い空間のり口へやってきた。するとガキンガキンと、金屬同士が激しくぶつかり合う音が聞こえた。

「っ!」

それを見た瞬間、俺は戦慄した。俺の視界に映るのは異次元の戦い。がブレるくらい速いきで、クロロと謎の男が激しく戦っているのだ。クロロの刀を男が弾き、あの白い線をぶっ放す。クロロがそれを避けて間隙をって攻勢に移る。踏み出した一歩は鋭く、そして速い。合理的なまでに考慮された足運び。クロロの生真面目な格にぴったりだ。対して面倒だと言っていた男のきは、クロロの霞むようなきにも遅れることなく対等に渡り合っている。

明らかに普通の相手じゃなかった。

「らぁっ!」

「くっ」

ここで男の攻撃がクロロの肩口を掠めた。男はニヤリと笑みを浮かべると後方に一歩下がって線を放つ。

クロロは目を見開き避けられないということを悟っているかのようだった。俺はクロロに線が當たる直前で巖盤をひっくり返してそれを防ぐ。

「ちっ!邪魔すんじゃねぇよクソっ!」

男は俺に振り向き右手を向けて線を放ってきた。それを【ロックシールド】で再び防いでやった。

よし……バトンタッチだなクロロ。

俺は【ロックシールド】がバタンと倒れる前に切り札の詠唱を始め、そして発した。

「〈……切り開け〉【ブースト】!」

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