《一兵士では終わらない異世界ライフ》殺意

–––☆–––

そのまま、メイドさんを気遣いながらテレテレと歩いていき、俺たちは領主邸のところまで著くと、門番の人に言って通してもらった。

「じゃあ……」

と言いながら、俺はメイドさん達を連れてアリステリア様のお部屋の前までやってきた。

「まずは僕から行きますね」

俺は後ろをついて歩いてきていたメイドさん達とクロロに言ってから、扉を叩くために手を扉の前まで持っていった。

さすがに……張するな……。

いくらなんでも、いきなり公爵令嬢の部屋を訪ねるというのは非常識だ。特に、俺のような一平民がだ。もちろん、アリステリア様はそういった些細なことに無頓著で、接しやすいフレンドリーな人だと分かってはいるが……それでも、気になることは気になる。

俺はし躊躇いがちにドアをノックすると、中からアリステリア様の聲が聞こえ、ノブを回して中へった。

ドアを開けると、甘い香りが鼻腔を擽った。見ると、テーブルの上に暖かな湯気を立ち昇らせる紅茶のティーカップと、バターのいい香りがするクッキーがお皿に並べられており、テーブル付近の高価なソファにアリステリア様と、楽しそうに談笑するギルダブ先輩がいた。後ろにはアイクが控え、どこかにソーマもやはり、いるのだろう。

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意外な訪問者にアリステリア様とギルダブ先輩は驚いたようで、俺に視線を向けていた。微妙な居心地の悪さに、一つ咳払いして間合いを図ってから切り出した。

「突然申し訳ありませんでした」

「いえ、お気になさらず。それよりも、どういったご用件でして?」

「えっと……単刀直に申し上げますと」

俺は一拍だけ間を持ってから、言い放った。

「オーラル皇國の皇族の関係者と思わしき方を保護しまして……それで、アリステリア様に々とお聞かせ・・・・いただきたく參りました」

俺が強調して言うと、アリステリア様はしだけ眉を寄せると薄い笑みを浮かべた。

「まさか……わたくしの仕向けた部隊よりも早く見つけるとは……やりますわね?」

俺はやっぱりと、肩を竦めた。

「探していたんですね」

「えぇ……こちらに來られたのは皇妃様に加えて、三カミーラ様のみでしたから……。皇妃様の話ですと、どこかで野盜に襲われたと」

アリステリア様が鋭く目を尖らせ、俺を見據えてくる。俺はそれに答えるようにして口を開いた。

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「はい。クロロ……クーロン・ブラッカスさんと一緒に言った盜賊退治の仕事でたまたまった窟にいました」

「そうですか……鉱山跡か何かでしょうか」

「いえ……そのようには」

アリステリア様は表を変えて、真面目な顔で顎に手をやる。それから目を伏せて、ギルダブ先輩に視線を向けた。

向けられた先輩はそれで何か察したようで、「失禮しよう」といって部屋を退室した、

ギルダブ先輩がいると話せないことか……?俺は張で頬に一つ汗を流した。

「それでは、詳しいお話しをしていただきましょうか」

アリステリア様のがすくむような威厳ある聲音に、俺は素直に答えた。

なんか怖いよぉ……ふえぇぇ……。

–––☆–––

アリステリア様のお部屋にて、俺とクロロ……それにメイドさん達と、未だに気を失っているお姫様がソファに橫たわっている。

俺たちもソファに座って、向かい側にアリステリア様が真剣な表でお姫様を見つめていた。

メイドさん達は俺の後ろで控えて立っている。アイクも同じじだった。

アリステリア様に一通りの説明をした俺たちは、アリステリア様の言葉を待って、黙っていた。

「なるほど……」

アリステリア様はポツリと呟き、手をパンパンと叩くと、颯爽とどこからか現れたアンナに何かしら耳打ちした。

「それじゃあ、宜しくお願いしますわ」

「かしこまりました」

アンナは深くお辭儀をすると、再びどこかへ行ってしまった。すごいね!プロフェッショナルメイドだね!

俺が心の中で賛辭を送っていると、アリステリア様が眠るお姫様を見ながら、口を開いた。

「そのお方は、オーラル皇國の第二皇……ユリア様で?」

「はい……」

メイドさんの一人が答えて、頷いた。

アリステリア様はふぅっと息を吐いてから、何かを逡巡してから再び口を開いた。

「どこから話ましょう……そうですねぇ」

そこでアリステリア様は一拍置いてから、続けた。

「戦時中に、王都の方でわたくしのお父様がたまたまイガーラ王國へ使節として逃げてきた皇妃様達を保護なさったんですけど……って、そんな話はとりあえずどうでも良いですわよね」

アリステリア様は、皇妃様や第三皇が無事である有無だけを伝えると必要なことだけを話始めた。

「それで、現在のオーラル皇國は先日話した通りなのです。手紙にて、お父様から送られてきたことがわたくしの知っている全てですわ。

向こうの方では、オーラル皇國の皇妃様とイガーラ國王で會合が進められているようですけれど、こちらにオーラル皇國の皇族がいるとゼフィアンにバレるのは不味いと判斷して先日のお話しは數の方々に聞いていただきました。

えっと……あとは、何か訊きたいことはございますかしら?」

と、アリステリア様は困ったように表を歪めた。何を話したらいいのか分からないのだろう。実際のところ、皇妃とか皇様が無事という話はこの際どうでもいいのだろう。

問題なのは、それによって何がもたらさらるか……だろう。

俺も、ここへ來たが特に訊きたいことがあるわけではなかった。ただ、皇妃様や皇様が無事であるというのならそれ以上に聞くべきことは俺にはない。

家族が離れ離れなのは……やはり、悲しいことだから。難しい政治の話なんて、俺には合わない。だから、イガーラ王國がオーラル皇國に対して、どのような処置をらとるのかも知らないし、聞くつもりも特になかった。

しかし、メイドさん達は別だろう。なんせ関係者だ。皇族に対しての忠誠心も、今までの行を見ていれば分かる。それでも、この場で俺よりも分が高いとはいえ、異なる國の皇族に仕える者が、無闇矢鱈に口を挾んでいい場ではないことを彼達は弁えているらしく、訊きたくても口を噤んでいた。

アリステリア様は俺の背後に立つそんな彼達を見て、優しげな笑みを浮かべて言った。

「何かお聞きしたいことが?」

アリステリア様からの申し出に、ついに我慢を切らしたメイドさんの一人が聲を上げた。

「あの……王都にいらっしゃる皇妃様とカミーラ様はこの後どのような待遇を……なされるのでしょうか……」

深刻そうなメイドさんの問いに、アリステリア様も目を伏せて答えた。

「……一応、オーラル皇國の使節として扱われていますから、それ相応の対応はされていますわ。しかし、魔王が絡んでいるとはいえ敵國の皇族……人質としての価値は全くありませんから、今後は捕虜という扱いがとられるかと」

「捕虜……」

そう聞いたメイドさん達は、二人して顔を青ざめさせた。

捕虜の扱いは國によって変わる。代金を要求して、返還する場合の方が多いと思われるが、今回のケースではそういう手も打てない。それは、この戦爭がゼフィアンによって引き起こされ、オーラル皇國が完全にゼフィアンによって乗っ取られているからだ。

ゼフィアンが皇族の返還をんでいるわけがないし、人質としての利用価値も先の通りにない。

メイドさん達はだからこそ、この場合での捕虜・・という扱いに深い恐怖を抱いたのだ。しかし、アリステリア様は笑って首を橫に振った。

「安心してくださいませ。わたくしが、安全を保障致しますわ」

そう言うと、メイドさん達から張がしだけ和らぐ気配を俺はじた。それでも、まだまた気になることがあるようで、メイドさんのもう一人が口を開いた。

「こ、この戦爭は……どのようになるのでしょうか……」

はて、どういうことだろう?

俺は首を傾げて、アリステリア様がどのように答えるのが黙って待った。

アリステリア様はメイドさんの言葉をしっかりと理解した上で答えた。

「事が事……ですけれど、このまま我が國が勝てばオーラル皇國は我が國の屬國となるでしょう。皇王ユンゲル様もその場合は殘念ながら……」

メイドさん達は悲しそうに目を伏せた。ユンゲルという人は、とても慕われていたんだな……。

ふと、俺は気になってこんなことをメイドさん達に訊いた、

「あの……皇王陛下というのはどのような方でしたか……?」

し躊躇いがちに訊くと、メイドさん達は悲しそうな笑みを浮かべながらも、答えてくれた。

「とても……とても家族が思いのお方でした……」

「優しく……暖かで……使用人の私どもも家族のように扱ってくれました」

家族……俺は深い眠りについているユリア第二皇に目を向けた。

ふと、その姿が五年前のソニア姉の姿に酷似しているように見えた。

「ゼフィアン……」

そいつの目的も知らないし、何者かなんて知らない。何も知らない……それでも、家族を滅茶苦茶にするような奴を俺は許せない。家族を傷つけるようなことをしてしまったユンゲルの心のが、今の俺ならよく分かる、理解出來る。家族を奪われた皇妃のカミュリア様やカミーラ……それにユリアの心が痛いほど分かる。

これほど哀しいことはない……。

「ゼフィアン……」

ポツリと、俺はもう一度呟いた。

ユンゲル……例え、顔も知らないお前のことでも俺は分かる……だから、俺が必ずゼフィアンを倒してやる。父さんが死んだ原因……全ての元兇を俺が殺す・・。

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