《一兵士では終わらない異世界ライフ》ある日のソニア・エフォンス…

–––ソニア・エフォンス–––

あたしは戦爭の後、お母さんと同じ治療魔師を目指すために勉強を始めた。と言っても、學舎は暫くお休みだから獨學ということになる。

まず、治療魔師になるには神にならなくてはならない。神になるには教會で神試験に合格し、そして神に誓いを立てなくてはならない。

試験というのは神聖教の教典を覚え、それを暗唱すること。神聖教の教えを理解して初めて神の前で誓いを立てられるというのだ。

あたしはお母さんが使っていた教典を貰い、それを必死に暗唱する毎日を送っているある日の朝…

「ソニー?あまり無理をしちゃダメだからね?」

と、教典をテーブルに開いて暗唱していたあたしのところにお母さんが心配そうな顔で言ってきた。

「大丈夫だよ。でも…ちょっと休憩しよっかなー?」

あたしは肩が凝っていたのでばす。ずっと座って読んでいると疲れる…。

ん〜〜っちょっと目も疲れちゃったなぁ。あたしが自分の肩をトントン叩いていると不意にあたしの肩に小さな手が置かれた。振り返ると、あたしの後ろにグレーシュがいた。グレーシュはあたしの肩に置いた手をかして肩をみ始めた。

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それであたしはグレーシュのやろうとしていることに気がついて思わず笑みが溢れた。

「ありがとっ、グレイ」

「うん」

グレーシュは短く返事をして、あたしの気持ちのいいところを的確にんでくれる。

ふぅー…目の疲れも取れそう…次第にあたしはし眠たくなってきた。ウトウトする目をり何とか起きようとしたがお母さんがそっとあたしの頭をでてきたのでそこで意識が飛んでしまった……。

起きた時にはお晝になっており、あたしの肩に布がかけてあった。お母さんは買いにでも行ってしまったのか家にはいない…

グレーシュはあたしの向かいの椅子に座って、あたしが読んでいた教典を読んでいる。

「あ、起きた?」

「うん…ごめんねグレイ」

あたしが布を畳みながら言うと、グレーシュは手をの前でフリフリして、「気にしないでよ」と言った。

「これ…面白いね」

「ん?教典が?そうかなー?」

「うん。神聖教って多神教なんだね」

「あぁ…そうだよ。神聖教って……」

と、あたしは今まで覚えたことをグレーシュに教えてあげた。神聖教の教えや神聖教で信仰される神様についてだとか々…

そして、あたしが気付いた時には全部暗唱できていた。

「あ…」

「ん?どうしたの?」

グレーシュが急に黙りこくったあたしを、不思議そうに見ている。あたしは慌てて取り繕うように笑って、「大丈夫」と言った。

グレーシュは意図してやったことじゃないかもしれないけど……それでもあたしは今グレーシュのおかげで暗唱出來てしまった。

「ふっふっふ〜ん」

「ん?なんか機嫌良いねお姉ちゃん」

夕食のときにあたしが鼻歌を歌っているとグレーシュがし笑っていった。もちろん、あたしが機嫌がいいのは暗唱出來てしまったからだ。

本來ならもっと時間が掛かるはずなのだが……お母さんに教えたら目を丸くしていた。ちょっと嬉しい……。

「ソニーは教典が暗唱できて嬉しいのよね〜?」

「う、うん…」

実際にそうなのだが、改めて言われる気恥ずかしいものがあった。あたしは思わず赤面して俯く。グレーシュはそんなあたしは微笑ましい目で見つめていた。

「な、なによ……生意気っ」

「あ、いたいいたい」

に腹が立ったあたしはグレーシュの頬を引っ張った。そのときのグレーシュの顔をし面白くてつい笑ってしまった。

「もうーいきなり何するんだよ」

「生意気な態度をとったからだよ」

「えーーー」

グレーシュは不満そうな聲を上げているが、し楽しそう。あたしも楽しい…だからふと思い出す。

夕食の席にぽっかりと空いた空席に座っていたお父さんのこと…だからといって悲しんだりはしない。もう涙は枯れてしまった。

十分に泣いた…だからあたしは前を歩きたいと思うの。治療魔師になって、んな人を助けたい…だからお父さん…あたしを見守っていて下さい…

あたしは空席にそう願い、食べ終えた食をグレーシュと一緒に片付けた。そして直ぐにあたしたちは寢室にった。

「それじゃあ、もう寢るからね」

お母さんはそういって部屋の蝋燭をふっと吐いた息で消す、寢室は暗くなりあたしは眠るために目を閉じた。

暫くして先に隣から寢息が聞こえ始め、あたしは目を開けてチラリと隣でぐっすり眠っているグレーシュに目を向ける。お晝まで寢ていたため頭がまだ冴えている。眠れないのだ。

暗闇になれた目がとなりのグレーシュの顔を捉え、あたしは思わず吹き出しそうになった。

ぐっすりと眠っているグレーシュの顔がとても無邪気な寢顔なのだ。それは年相応の可らしいもので…あたしは思わず布から腕をばし、グレーシュの頭に手をやった。

くすぐったいくらいのの髪をった後にあたしはグレーシュの頬に手を添える。

「グレイ…」

あたしの弟……カワユス……ちょっと添い寢してもいいよね?いいよね?大丈夫だよね?

あたしはモゾモゾととなりの布団に移する…と、パチリとグレーシュと目があった。

「ひっ…」

それであたしは我に返り驚いてびそうになったところをグレーシュが慌てて、その小さな手であたしの口を押さえてくれた。あたしが落ち著くとゆっくりと手を離し、あたしに微笑みかけた。

「なにやってるの?」

「……そ、添い寢」

あたしが正直に白狀するとグレーシュは、「そっかーーー」と言ってまた眠りにり寢息を立て始めた。あれ?

「も、もしかして……寢言?」

そんな寢言があり得るのか……いや、寢ぼけていたのか…あたしは安堵の息を吐いた。

バレないようにもう自分の寢床に戻ろうかと考えたとき…あたしは目の前にある可い弟の寢顔を見てしまいまたキュンっとなってしまった。

カワユス……抱きしめるくらいはいいよね?よし……。

最初はし控えめに…でも起きないと見てあたしはさらに強くグレーシュに抱きつく。ふぅ…なんだろう…お父さんに…似て、て…

そっ……か、家族だもんね……。

あたしは、そのまま眠ってしまった。

次の日の朝になるとグレーシュが、「どういうこと?」と呟いたのを微睡みの中で聞いたのを覚えている。

ごめんね…グレイ……。

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