《一兵士では終わらない異世界ライフ》強くなった理由
俺は挑発的に言いながら、矢を番えて焦點をエドワード先生に合わせる……と、そこでギシリス先生が何かを悟ったように口を開いた。
「なるほどな……この試合が始まってからずっと違和をじていたが……理由はそれか」
「違和……エーデルバイカ殿もじていましたか」
はて……と俺はアフィリアとギシリス先生の會話が気になって、エドワード先生に矢を向けたままに、攻撃の意志を止めた。
「あいつは弓の方が強かった……ロングレンジでは昔から私でも勝つことは出來なかった。だから、あいつがクロスレンジで私と互角に戦っていることに長をじていたのだがな」
ギシリス先生の言葉に続いて、アフィリアが口を開いた。
「その彼の剣筋は、一見練の剣士のようでしたが違う……彼のきは剣を使いながらも剣ではなかった。終始、初めの素手の時と同じ・・のきをしていた……だから、剣士である我々から見て彼のきがチグハグとぎこちなく、違和を覚えていた……」
なるほど……さすがに剣の練級エキスパートともなると、俺のなんちゃって剣くらいは見破れるか。
二人の言った通り、俺がさっきまでしていたことは剣に見えて剣ではない。剣士殺しと言われるの流派……滅剣流というのを剣に適応させただけ……。
俺が本気じゃない『花に集う戦乙ワルキューレ』を圧倒して見せているのは、この滅剣流のおかげってわけだ。
もしも、彼達が俺の使っているものが剣ではなくだと見破ることが出來たなら、不用意に俺の間合いにることはなかっただろう。そこに気が付いたのは予想通り、アフィリアとギシリス先生だ。
まあ……エドワード先生は魔師だからいいとして……。
この滅剣流は文字通り剣士相手に高い封殺力を持つ。相手が達人級マスターでもなければ、簡単に負けはしない。
さて、種はバラされてしまったわけだし……今の俺では殘念なことに、剣で二人を圧倒することは無理だ。二人の練級エキスパート剣士を相手にするには、俺の剣ではまず勝てないし、そこにエドワード先生クラスの魔支援が加わると、どうしようもなくなる。
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となると……後は俺の十八番である弓を使うしかない。まあ、々見せてあげよう……俺が四年も山に篭って會得した、弓の極意をな。
何やら作戦でも立てているのか、ギシリス先生とアフィリアは目配せすると散開し、代わりに俺の正面六十メートルほど先からエドワード先生が、魔を仕掛けてくる。
速度の速い魔で、雷の槍が幾つも飛んできた。まさに雷の如き速さ……俺は首を捻って最初の三発ほど躱してから、し遅れてやってきた電撃を上だけかして避ける。
俺がそうしている間に、左右からギシリス先生とアフィリアがほぼ同時に剣技を始する気配……さらに前方でエドワード先生も大きな魔を詠唱し出した。
それで一時止んだ攻撃の雨……その剎那に俺は、無詠唱で固有魔を周囲一帯に放った。
「【ディスペル】」
俺を中心に波の波が流れ、アフィリア、ギシリス先生、エドワード先生の三人を襲い、脳を揺さぶり、魔力保有領域ゲートで行われていた魔的工程の全てを足元から崩れさせる。
「っ!?」
「バカなっ!!」
「むっ……!?」
三人は同様の反応を見せ、驚愕に表を染めていた。それはそうだ……抜群のタイミングで仕掛けた大一番の攻撃が不発に終わったのだから……そして、それで生まれた揺によって出來た隙を見逃すほど俺は甘くない。
俺は弓の照準をエドワード先生からアフィリアへと変更し、弦を引いた。
アフィリアはそれに気がつくと、間合いを詰めるために先程の【剎那】という剣技で、人間の視力を超越した速度で急接近してきた。
だが……、
「なっ……に!?」
アフィリアは短い悲鳴とともに前のめりに倒れこみそうになるのを一歩踏み込んで回避する。
今、アフィリアが態勢を崩したのは俺が【剎那】で間合いを詰めてくるだろうと予想・・して罠を張っておいたからだ。
【剎那】という剣技は確かに速い……だが、速いが故に途中で急な方向転換が出來ないのだ。だから、俺が【剎那】を使ってくるであろう進路上に無詠唱でポコっと隆起させた地面にも気が付かず、足を引っ掛けて躓いたのだ。
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それはもう致命的なミスだ。
「【錬】」
俺は空かさず、番えていた矢を【錬】して質な矢かららかく作り変える……何故か……それは見ればお分かり頂けるだろう。
俺は照準をアフィリアの足元に向けて放った。
放った矢は勿論アフィリアの足元に向かって飛んでいき、アフィリアはそれを目で追っていく。もしも、普通に放っていれば避けられていたかもしれないが……この矢はアフィリアでは避けられない・・・・・・。
放った矢は地面に衝突すると、ビヨヨーンとんでから力を溜めてもう一度宙に跳ねた・・・。
跳弾……それは銃弾が壁などに當たることで起きる現象だが、本來矢では出來ない……しかし、矢の質を【錬】で作り変え、正しい角度と力を加えて放つことで可能となる……矢での跳弾!
地面から跳ね返った矢はアフィリアの顔の直ぐ橫を通り、大きく大気が震えたことでアフィリアの脳が揺さぶられて意識を失い、その場で倒れこんだ。
跳弾した矢は、それで止まらずにある程度まで空高く跳び上がると、自然落下で地面に落ちていく。
俺はそれに向けて軽く矢を放ち、宙で跳弾させた矢が今度はエドワード先生目掛けて飛んでいく。
「……くっ」
突然の奇襲に魔師であるエドワード先生では対処出來ず、アフィリアと同じようにして地面に崩れた。
そして、再び地面を跳ね返ってきた矢は俺の方へ向かってくる……この矢は跳弾を付加させるためにらかくなっているが當たれば普通の矢と同じで刺さる。そういう風に作ったからだ。だから俺は、魔力保有領域ゲートを解放し……、
「【イビル】」
と固有地屬魔である【イビル】を使って、己の足を超合金に固め、飛んできた矢を蹴り飛ばして跳弾させた・・・・・・・・・・・。
スパンっと風鳴りが響き、ギシリス先生に向かって飛んでいくが、さすがに人間を超えた知覚を持つ獣人である。寸前で首を傾げて躱された。
さすがに跳弾矢も運エネルギーを使い果たしたようで、カツンっと壁に當たると沈黙した。
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だが……これで殘るはギシリス先生一人のみとなった。つっても、ギシリス先生は練級エキスパートの剣士の中でも群を抜いて強い……まず、獣人としての能力が馬鹿げている。恐らく、その気になれば人間の反応速度などでは反応することも出來ない速度で接近されるだろうし、剣速も然りだ。
五年前に俺が【ブースト】を使ってやっと勝てたレベルの相手……それを生の俺が勝とう・・・としているのだから無茶もいいところかもしれない。それでも、俺は【ブースト】は使わない。むしろ、弓を使う時の俺には邪魔・・な枷となるからだ。
俺は対峙しているギシリス先生を見據え、何の前れもなく腰にある矢筒から矢を取り出し、弓を引いた。その時にはギシリス先生はき出し、一歩で數メートルを飛んで俺の懐へ潛り込んできた。
はやいっ!本気できてる!
俺は一歩右足を下げて半になり、ギシリス先生が振り下ろしてきた剣を躱す。振り終わりを狙おうとしたが、ギシリス先生は持ち前の能力をフルに使って全のバネでもって、瞬時に剣を切り返してきた。
俺は弓をギシリス先生に向けながら橫に飛び、そのまま矢を放った。
振り終わりに加え、ギシリス先生のバネを使った一振り……さすがにその後直ぐにはけない!
俺の矢は大気を貫き、ギシリス先生のコメカミの直ぐ橫を通り過ぎようとするが首のきだけまたしても避けられた。
俺はそこで一度距離を取ってギシリス先生へ目を向けると、ギシリス先生は直ぐに間合いを詰めて迫する距離で剣を振るってきた。
ギシリス先生の豪腕から放たれる、大気を震わせる一撃に全が震える。
何という一振りだろうか……。
だが、俺はそれに臆せずにを捻りギシリス先生の振り下ろす剣に背中を向けるようにして避けた。それは本來致命的な避け方……事実、ギシリス先生は勝負をかけるべく完全に俺の背後に廻ると間髪れず剣技を放つ。
眩い閃と強大な力の気配が俺の背後に襲いかかる。俺はそれに対して、ただ淡々と対応した。
「【ディスペル】」
「しまっ……」
その瞬間、ギシリス先生のきを加速させていた魔力の力が四散し、失速……俺は背を向けたままギシリス先生の失速した刃を躱し、弦を背に回して後手に矢を引いた・・・・・・・・。
こんな姿勢で普通は真面にることなど無理だろうな……だが、今の俺はどんな狀況どんな姿勢だろうが完璧なショットが出來る……。
額に鏃を突き付けられたギシリス先生は、そんな姿勢でることは出來ない……と心中思っているだろうが、それでもけずにいるのは俺の気迫に圧倒されているからだ。
俺はこの態勢からでもる……そういう気迫。
やがて、ギシリス先生は肩を落とすと目を伏せて言った。
「……私の負けだ」
俺は弓を【錬】で仕舞い、笑顔で答えた。
「ありがとうございました」
※
試合が終わり、暫くして日が落ち始めた頃に気絶していた全員が起き上がり、闘技場前でその人達と改めて対面することとなった。
本當に『花に集う戦乙ワルキューレ』の人達は人が多い……これは一重にギルダブ先輩が強いからかな。
強い男ほどかわうぃーを集める……悲しい世界ですね。
俺がドアホな思考をしていると、目の前に立つ威圧のあるギルダブ先輩が、俺に近寄りつつ口を開いた。
「観客席から見ていた。隨分と強くなった」
「ありがとうございます」
ギルダブ先輩はそう言って、し自嘲気味に笑った。
「ふっ……俺が育て騎士程度では相手にもならないようだ」
「あぁ……いえ、十分に強かったです。ただ、一瞬で間合いを詰めてくる剣士……つまりは速くく剣士に対して、僕の學んだ対剣士用との相が良いだけですよ」
「滅剣流か……」
俺は肩を竦めるだけで、特に答えなかった。この世界に數多ある流派……俺はその流派を極めてきた様々な達人と出會い、教えを乞い、時にはボコボコにされたり……まあ、本當に霊峰ではんなことがあった。
滅剣流は俺が學んだ技の一つに過ぎず、まだまだ引き出しは沢山ある。
んな達人から異なる魔理論を教え込まれ、異なる流派の剣や、そして弓……俺はその中から自分に最も合う知識を自に最適化していった。
今の俺は以前とは全く違う。強くなって帰ってきた自信がある。今度こそ間違えずに、真っ當に生きていくための力を付けてこれた。これで……この力で俺は守りたいものを守ってみせる。
そういう決意を……志をに俺は帰ってきた。ここでやすやすと負けてやれない。
ギルダブ先輩はしの間考え込むと、何か決めたように頷いて言った。
「どうだろう……お前が良ければ俺の下で兵士として戦わないか?兵士になるつもりだったのだろう?」
その申し出にから手が出かかった。ギルダブ先輩の下で一緒に戦える……それは良いことだ。ギルダブ先輩は良い人だから……この町をきっとより良くしていくために盡力してくれるに違いない……ならば、ここで家族と一緒に過ごすのも幸せな選択だろう……だが、俺は首を橫に振って答えた。
「すみません……実はこれから王都へ行く予定がありまして」
「王都へ?王都で志願するつもりか……?確かに、王都で志願すれば出世するのは早いがな……しかし、何故だ?何か理由があるのか?」
あ、そうなんだ。知らなかった……。とりあえず俺は、ギルダブ先輩にソニア姉が王宮治療魔師として呼ばれた旨を伝えると、し驚いたような表をした。ギルダブ先輩の隣で聞いていたアリステリア様は、目を輝かせて割ってった。
「王宮治療魔師!わたくし、あれに憧れていましたの……まあ、分上神になれずにこうしている訳ですけれど……。それにしても王宮治療魔師ですか!この町にいながら、どうやって王宮へ売名したのでしょうか……」 
顎に指先を當ててあれこれ考え始めるアリステリア様……売名ってあーた……しかし、俺もそこは気になる。ソニア姉の治療魔師としての腕前は知らないが、一どうやってソニア姉のことを王宮は知ったのだろう。何か俺がいない間に、王宮とソニア姉との間で接する機會でもあったのだろうか……。
やはり、こういうことに詳しいのはこの町の領主であるギルダブ先輩だろうと思って視線を向ける。
と、何か心當たりがあるのかギルダブ先輩は思い出したように口を開いた。
「そういえば……一年か二年か……それくらい前に王都から侯爵が來ていたな」
「侯爵が……?何かあったのですか?」
侯爵は建國當時から國を支えている貴族であり、貴族の中にある序列では王族の親戚にあたる公爵に次ぐ。
そのような序列の侯爵が、アリステリア様のように大好きな男のもとへ來るというのなら分かるが……中々自分の領地からは出てこないと思われる。どうしてだろう?
俺の問いにギルダブ先輩は簡潔に答えた。
「剣を教えてしいと」
なるほど……。
「ただ、その時に突然の病にかかられてな。治療院から治療魔師達を呼んだが、一向に良くならない……さすがに焦ったぞ」
ギルダブ先輩でも焦ることがあるのか。まあ、自分の領地で侯爵が病死なんて腹切もんだろうな……想像しただけで俺も震える。
「それで困っている時にお前の姉が他の治療魔師達と同じように【キュア】の魔を使ったのだ。當然、何度も試したから諦めていたが……次の瞬間に侯爵は元気なっていた」
「は……?」
思わず俺は素で反応した。他の人が【キュア】を使って治せなかったのに、ソニア姉が【キュア】を使って治した?
「……あぁ。そういえば、そんな事があったな」
と、どうやらそれはギシリス先生も知っていたようでウンウン頷いていた。
「すごいですわね!」
アリステリア様はそう言って、両手を合わせて笑った。確かに……しかし、どういうことだろう。ソニア姉の使う【キュア】は他の人と何か違うのか……?
「まあ……恐らくはそれで侯爵が國王に進言でもしたのだろう」
そういうことならソニア姉が王宮魔師ときて呼ばれたのも納得だな。俺はソニア姉の凄さに驚きつつも、「そういうことですから」とギルダブ先輩のおいを斷らせてもらった。
「仕方がない……ならば、諦めよう」
ギルダブ先輩は殘念そうだったが、諦めたようだ。ギルダブ先輩にここまで評価されると嬉しいですなぁ……。
ギルダブ先輩は後ろを振り返り、『花に集う戦乙ワルキューレ』に向けて言った。
「さあ……領主邸に戻るとしよう。お前達は鍛え直しだ」
「「ハッ!」」
ギルダブ先輩はそれからチラリと視線だけ俺に向けて、俺に訊いた。
「グレーシュ……霊峰でリフェルデュオという男に會わなかったか?」
「リフェルデュオ……?」
訊かれた俺は、その名前を復唱して頭の中で検索を試みるが……特に覚えはない。この人がギルダブ先輩にとってどのような人か尋ねると、ギルダブ先輩はどこか恥ずかしそうに頬を染めて答えた。
「……俺の恩師さ」
「ギルダブ先輩の……剣の師匠ですね!」
そうだった!ギルダブ先輩も霊峰に登っていたんだ……なるほど、そこでリフェルデュオという剣の達人から教えを乞うていたんだなぁ……殘念ながらリフェルデュオという人には會っていない。
他でもないギルダブ先輩の師匠……會ってみたかったなぁ……。
ギルダブ先輩はそれだけ確認したかったようで、軽く手を振り、隣を歩くアリステリア様に合わせて歩き出した。
その背中を暫く眺め……そこでエドワード先生が俺に告げた。
「とりあえず試験は合格だよ。卒舎おめでとう……グレーシュ君」
その祝いの言葉に俺ははにかんだ笑みを浮かべ、その日は家へと帰ることになった。
帰路の途中で、俺の隣を歩くギシリス先生は、耳をピクピクかしながら俺に訊いてきた。
「そういえば……【ブースト】を終始使っていなかったが何故だ?」
ギシリス先生のらしい耳を眺めていた俺は反応が遅れ、首を傾げたギシリス先生に気がついて慌てて誤魔化すように咳払いした。
ふぅ……ギシリス先生はギャップ萌えしちゃうからついつい耳やら尾やら……そしてオーパイに目がいってしまう。しかも、結構大膽な服裝だから鍛え上げられて引き締まったしい曲線を描く腹筋からのオーパイの丸みは、こう……なんだか能的だ。
やばい……思考が十六歳男子だ。完全に思春期!イエス・思春期!!もう神年齢はそんな歳じゃねぇけどな!
脳的な発達の意味で、再び思春期が到來するとは思っていなかった。何だか新鮮である。
俺はとりあえずもう一度咳払いして、ギシリス先生の質問に答えた。 
「実は々ありましてね。【ブースト】のルーン構を変更したんですよ」
「ルーン構を?」
これに反応したのはエドワード先生だ。
「はい。まあ……簡単な話、人間のは複數のことを極められるようには出來ていないんですけど……」
剣の達人が、弓の達人になれないように……何故か?それはの作り方だ。
剣には剣のの作り方があり、は剣を行うのに最も適したを作る……弓もまた然りだ。
唯一例外なのは、を資本としない魔だったりだ。
でだ……俺はこの四年で弓を極めるためにを作っていた。だから、今の俺のの造りではどうしても剣やを行うのに適さない。それでもある程度までけるが、極めることは不可能に近い。
一度を作ってしまうと、他に適したを作るのに相當時間と労力がかかる。
そこで俺は弓以外も極めるために【ブースト】のルーン構を変更し……錬による筋組織の造りを作り変え……それで剣に特化したを再構し、後は以前と同じようにパワードスーツのように魔力でを覆うという構にした。
ちなみに、錬で作り変えた質はものによるが暫く時間が経つと元の質に戻ってしまう。つまりは金を増産して市場で売れないってわけね?
でーこの【ブースト】で剣に特化した戦闘を継続して行えるのは最大十分である。
「とまあ、こんな合で……さっきの試合は弓で戦うつもりだったので使いませんでした」 
俺が方説明すると、ギシリス先生は頷くだけだったがエドワード先生はポカーンと口を開けて立ち止まって呆然とし、暫くして我に返ったかと思うと徐に口を開いてんだ。
「そ、そんなことが本當に可能なのかい!?錬で筋の組織を作り変えるなんて神業が!」
「神業?」
ギシリス先生は立ち止まったエドワード先生の方を振り返り、その発言に首を傾げた。そんなギシリス先生に対して、エドワード先生は切羽詰まったように言った。
「神業だよ!神業!ギシリス君は錬を知らないだろうが……あれは凄く難しいんだ。例えば、そこらへんの道端に転がる石ころを金屬に変えるだけでも凄い集中力が必要なんだ」
その通り……エドワード先生の言う通りだ。錬は簡単そうに俺は使っているが、これがかなり難しい。
錬ってのは質を他の質へ変換するなわけだけど……これが思っているよりも使い勝手が悪い。
石ころを金屬にする場合を例に挙げると……石ころを金屬に変える過程で者は石ころを分子・・レベルで把握し、分子の一つ一つを金屬へと変換しなくてはならない……。それが筋組織となると、筋の細胞を構する質から変換していかなくてはならない……。
「もしや……グレーシュ君は錬の達人になったのかい……?」
恐る恐ると訊いてきたエドワード先生に俺は困ったように笑って見せた。
「さぁ……師匠に直接言われたことはありませんから」
俺の數多くいる師匠の中で、弓と錬では師匠は一人ずつしかいない。錬の師匠には特に何にも言われなかったなぁ……。
俺が慨に耽っていると、何故かギシリス先生が納得したように頷いた。俺が首を捻っていると、ギシリス先生はポツリと呟いた。
「なるほど……ギルダブは三年で帰ってきたが……お前が五年かかった理由が分かった」
ご理解いただけて何よりです……。
【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】
2022/6/7 書籍化決定しました! 「フィーグ・ロー。フィーグ、お前の正式採用は無しだ。クビだよ」 この物語の主人公、フィーグはスキルを整備する「スキルメンテ」が外れスキルだと斷じた勇者によって、勇者パーティをクビになった。 「メンテ」とは、スキルを整備・改造する能力だ。酷使して暴走したスキルを修復したり、複數のスキルを掛け合わせ改造することができる。 勇者パーティが快進撃を続けていたのは、フィーグのおかげでもあった。 追放後、フィーグは故郷に戻る。そこでは、様々な者にメンテの能力を認められており、彼は引く手數多であった。 「メンテ」による改造は、やがて【魔改造】と呼ばれる強大な能力に次第に発展していく。 以前、冒険者パーティでひどい目に遭った女剣士リリアや聖女の能力を疑われ婚約破棄されたエリシスなど、自信を失った仲間のスキルを魔改造し、力と自信を取り戻させるフィーグ。 次第にフィーグのパーティは世界最強へ進化していき、栄光の道を歩むことになる。 一方、勇者に加擔していた王都のギルマスは、企みが発覚し、沒落していくのだった。また、勇者アクファも當然のごとくその地位を失っていく——。 ※カクヨム様その他でも掲載していますが、なろう様版が改稿最新版になります。
8 68【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎の虐げられ令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される〜
【DREノベルス様から12/10頃発売予定!】 辺境伯令嬢のクロエは、背中に痣がある事と生まれてから家族や親戚が相次いで不幸に見舞われた事から『災いをもたらす忌み子』として虐げられていた。 日常的に暴力を振るってくる母に、何かと鬱憤を晴らしてくる意地悪な姉。 (私が悪いんだ……忌み子だから仕方がない)とクロエは耐え忍んでいたが、ある日ついに我慢の限界を迎える。 「もうこんな狂った家にいたくない……!!」 クロエは逃げ出した。 野を越え山を越え、ついには王都に辿り著く。 しかしそこでクロエの體力が盡き、弱っていたところを柄の悪い男たちに襲われてしまう。 覚悟を決めたクロエだったが、たまたま通りかかった青年によって助けられた。 「行くところがないなら、しばらく家に來るか? ちょうど家政婦を探していたんだ」 青年──ロイドは王都の平和を守る第一騎士団の若きエリート騎士。 「恩人の役に立ちたい」とクロエは、ロイドの家の家政婦として住み込み始める。 今まで実家の家事を全て引き受けこき使われていたクロエが、ロイドの家でもその能力を発揮するのに時間はかからなかった。 「部屋がこんなに綺麗に……」「こんな美味いもの、今まで食べたことがない」「本當に凄いな、君は」 「こんなに褒められたの……はじめて……」 ロイドは騎士団內で「漆黒の死神」なんて呼ばれる冷酷無慈悲な剣士らしいが、クロエの前では違う一面も見せてくれ、いつのまにか溺愛されるようになる。 一方、クロエが居なくなった実家では、これまでクロエに様々な部分で依存していたため少しずつ崩壊の兆しを見せていて……。 これは、忌み子として虐げらてきた令嬢が、剣一筋で生きてきた真面目で優しい騎士と一緒に、ささやかな幸せを手に入れていく物語。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※書籍化・コミカライズ進行中です!
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