《一兵士では終わらない異世界ライフ》対立と激震

☆☆☆

何とも狀況は奇妙なことに転がった。

シルーシアやシャルラッハの面々は、グレーシュのを完全に支配しているエキドナを連れ、改めて全員が揃う教會の祈りの場へと集まる。

グレーシュが起きたことにみんな最初は喜んでいたものだが、中がそのグレーシュに仕える霊……エキドナになっていたことを聞くと狀況が理解できなかったのか首を傾げた。

「で……どういう訳でエキドナさんがグレーシュのを?」

ノーラがエキドナへと訊ねる。この場には約十人ほどが集まっており、全員が全員ノーラが訊ねたことを聞きたかった。

さて、當の本人であるグレーシュ――のを乗っ取った狀態のエキドナはというと……ニコニコと笑顔を浮かべ、みんなの中心に悠然と立っていた。その立ち姿はグレーシュ・エフォンスそのものにも見えた。

エキドナは暫く逡巡すると、こう答えた。

「エキドナは、ご主人様に代わり……ご主人様をお守りするためにこうして出てきたって訳よ」

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「守る……?」

エリリーが首を傾げたのは當然だった。エリリーと同じ反応を示したのは、他の面々も同じである。その中で、エキドナはラエラの隣に立っているためラエラは不安そうにエキドナを見上げるように見つめる。

「おやおや、ラエラ様は不安になさらずとも……ご主人様をお守りするというのは言葉通りよ。ご主人様は完全に沈黙しているわ。彼の方をもう一度戦場に連れて出さなければならないという貴方達の事は勿論理解しているわよ?でもね、エキドナとしては周りがどうなろうが知ったことではないの。エキドナにとって重要なのはご主人様の平穏と幸福、そしてその幹となるラエラ様やソニア様の存在だけ」

スラスラと自らの使命とみのみを語るエキドナの姿は、グレーシュそのものだった。姿形も勿論だが、まるでエキドナ自がグレーシュ本人のみを代弁しているかのようだったのだ。

だからこそ、誰も何も口を挾まない。エキドナの決定を誰も覆せない。要するに、エキドナを退けてグレーシュを引っ張り出すことが出來ない狀況となったのだ。

シルーシア達ですら手が出し難い狀況になった。グレーシュを引きづり出そうにもエキドナが邪魔をしてくるということだから。

勿論、エキドナ自……グレーシュ無しでソニアを救う戦いに勝利できるとは考えていない。ソニアを助けるためにはグレーシュが必要だ。だが……エキドナは己の意思に従ってそれを良しとしなかった。

エキドナとしても驚愕だった。まさか観察対象であったはずのグレーシュをいつの間にか……それを超えて慕ってしまっていたことを。グレーシュの世界で、荒野の中にただ一人……弱い自分は誰も必要としていないから、強い自分であろうとする普通の年の背中を見て、ついつい老婆心のようなものを抱いてしまったのだ。それと同時に、エキドナは自分がグレーシュへと向ける想いが観察対象に向けるそれではないと気が付いてしまった。

そんな……一人のとしてグレーシュを想う気持ちがこうした行に繋がった。このエキドナの行を理解できる者が、この場には何人もいた。グレーシュはベルリガウスに続き、バートゥやセルルカといった伝説と戦い、なんども傷ついてきた。それを良しとしない者が、この場にはいる。エキドナはその代弁者だった。

「……そうね。もうグレーシュは休ませてあげるべきかもしれないわ」

フォセリオは元より戦いを好む人格者ではない。敬虔なる神の信徒であるフォセリオとして、そして一人のとしてどこかでグレーシュに傷ついてしくないと願っていた。その想いは、思いの外フォセリオの中でストンと落ち著いた。友達とはどこか違って、なんやかんやで言い爭ったり、相談したりされたり……頼りなる異がフォセリオにとってグレーシュだった。

「でも、ソニアさんだって助けないと。私たちだけじゃ、分が悪い……」

エリリーは驚いたことにグレーシュを戦場へ引っ張り出す側の意見を述べた。フォセリオはそれが表に出てしまい、エリリーは苦笑する。

そんなエリリーに続くようにしてシルーシア達も賛同した。

「そうだ。帝國と戦うんなら、そいつの力は必要だな」

「そうですわね……し、心苦しいですが」

「なーはっはっはっ!戦わずしてなんとするか!」

一方で、ラエラはどうするべきかオロオロとしてしまう。母親として、もちろん息子を戦地へと送り込む真似はしたくなかった。何より、もう休んでしかった。だが、それと同じくらいソニアを救ってほしいという気持ちもたしかにあった。

こんな板挾みの狀況では、ラエラは何も言えなかった。そのような様子を傍で見ていたシャルラッハは、仕方がないとため息を吐きつつ……口を開く。

「儂は反対じゃな。これ以上は彼の神崩壊を招く。別の方法を考えるべきじゃろう?」

そもそも、この不安定ない神狀態で再び戦場に立って真面に戦えるか疑問なのだ。それならば、いっそのこと……と考えたのだ。

殘った二人……ノーラントとクーロンは互いに目を配り、視線がわる。その瞬間、お互いの考えが直ぐに分かった。

「……クロロさんはそっちの道を取るんだね」

「はい。私は戦友であって、お友達ではありませんから」

「……そう。それは……なんだか、羨ましいね。ウチはそんな関係結べなかったもん」

自然と場は勢力ごとに分かれていた。グレーシュを戦場に赴かせることに反対であるシャルラッハ、フォセリオ……そこにはどっち付かずにいるラエラもいる。グレーシュを戦場へ立たせることに賛するエリリー、シルーシア、ウルディアナ、ベルセルフ、……。

そして、ノーラントとクーロンは互いにすれ違うようにして……ノーラントは反対派に、クーロンは賛派へと。

5対3に、完全に二分された。

ラエラは反対派のとこらでオロオロとするばかり。自分はどうするべきか、分からず……だが、こんなことは絶対良くないとだけは思い口を挾みたかったが……言葉が見當たらなかった。

そんな中でエキドナは當然のように反対派の方へ歩み寄り、數としては5対4となる。

両者ともに睨み合う。両陣営の先頭にはクーロンとノーラントが立ち、どちらも悲壯な表で相手を見る。まさに一発の中、ラエラどうするべきか決められなかった。

と……、

「まあ、俺様としてはどっちに転んでも文句はねぇんだがぁ?反対ってぇことにさせてもらうぜぇ?」

『!?』

あまりにも唐突に、両陣営の中心へと男が現れてそう言った。

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