《一兵士では終わらない異世界ライフ》ノーラントの覚醒
〈???〉
「へぇ、ツクヨミちゃんってハンバーグ好きなの?食べる?俺、全然作るんだけど」
「うん……ありがと、お兄……ちゃん」
木造建築の住宅で、大して大きくもないが溫かみのある住まい……そのリビングにて俺はテーブルの座席に座り、目の前でお腹を空かしたツクヨミちゃんが好きだというハンバーグを作ってあげようと椅子から立ち上がる。
全く……なんて可いんだツクヨミちゃんは。球関節だし、ちっちゃいけど可い。人形のなのにらかいし。尋常じゃないねぇな……。
俺はキッチンに立ってハンバーグを作り始める。殘量を切ったり、んだりペタペタしたり……語彙力(笑)
ふと、どうして俺は料理をしているのかと疑問符が頭上に浮かんだ。いや、狀況が理解出來ていないほど短絡的ではないと俺は自己評価している。つまるところ、この世界へ俺が転生してきてからのストレス……その莫大な負債という負債が一気に発したのだろう。
し、見積もりが甘かった。適度にガス抜きを自分でやっていたつもりだったが、そのガス抜きも大した効力を発揮せず……。
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分かってはいた。無理をしていると。それでも、前に進むしかなかった……そんな気持ちの悪い言い訳をに仕舞い込み、俺はホッと一息吐いた。
「お兄ちゃん……」
と、キッチンに立つ俺の隣までポワポワと浮いてやってきたツクヨミちゃんは俺に聲を掛けてきた。それで振り向くと、ツクヨミちゃんは人形の顔を不安げにさせて俺を見つめていた。
「心配掛けたね……でも、俺は大丈夫だから。椅子に行儀良く座って待っててね」
「う、ん…………」
「……?どうしたの?」
椅子に座るように促したのだが、ツクヨミちゃんは一向にこうとしていなかった。それを咎めるつもりはないが、気になったのでできるだけらかく訊ねてみる。
しかし、ツクヨミちゃんはいつものオドオドした様子は見せていなかったものの答えは返さなかつた。ツクヨミちゃんにしては珍しいと思いながらも、俺はそれ以上何か訊くことはなかった。
「……」
「……」
コンコンコツコツグツグツ……そんな料理の音だけが、この家の中に響き渡る。この家は、エキドナが俺を閉じ込めるために作った檻のようなもの。
例の戦闘で、ツクヨミちゃんは霊の能力で一時的に俺の中に避難していたらしく、こうして二人でエキドナの作った檻で仲良く過ごしている。
エキドナは隨分と過保護な奴で、倒れたのだから休めと俺を無理矢理ここへ押し込めたのだ。
この家は俺の記憶にある以前住んでいた町外れの家をベースにしているようで、どことなく雰囲気が似ていた。ここにいるとまるであの時に戻ったかのような気分になり、しみじみと懐かしくじる。
まあ……いつまでもこのぬるま湯にいるわけにも行かないが。
「ったく……エキドナは俺の姉貴かなんかか」
いや、姉はソニア姉だが。
…………そのソニア姉が今は敵の手に渡っている。そんな時にこんなところで何をやっているのかと、訴えかける聲が聞こえる。髪のの詰まった排水のように、もどかしく気持ち悪いヌメヌメした覚に吐き気がする。
こんなあったかもしれない幸せを見せられているようで、本當にゾッとしてしまう。今更、そんな幸せは求めていないのに。
「お兄ちゃん……手、チカラ……ってるよ?」
「……うん。ごめんね」
挽やら何やら手でんでいたところで、力をれすぎたようだ。形が崩れてしまっている。
余計なことは考えない方がいいか……。どうなるにせよ、臆病者の引き篭もりはここから出ることなどできないのだから。
〈とある晴天の日〉
雲一つ淀みのない青い空の下、対立するようにして立っているのはノーラントとクーロンだ。その背後には、それぞれの意見持ったを人間がお互いを牽制しあっている。
「私は……グレイくんと戦います。彼なら必ず戦場に立ちます」
「ウチは認めない。たしかに……グレイがいてくれるなら心強い。でも、今は伝説がウチらには二人もいる。グレイに無理強いさせる理由はないと思うんだけど?」
ビリッと、二人のの間に電気が走る。一瞬、ベルリガウスかと思ったが違う。お互いが睨み合っているためのようだ。
そんな譲れない二人の戦いを傍らから見ていたベルリガウスは、怖い怖いと戯けた様子を見せた。その隣にシャルラッハが立ち、し離れたところでフォセリオとラエラが並んで立つ。
場所は樹木も生えていないような草原だ。つまり、ここでは大抵なことが起きても騒ぎにならないということになる。
グレーシュのを使うエキドナは、ベルリガウスとシャルラッハの背後に控えており、事のり行きをノーラントに任せていた。
シルーシア達もクーロンに全て一任しているようで、クーロンの後ろの方で立っている。ただ、エリリーは何か納得していないようでクーロンの隣に立ってノーラントに呼び掛けた。
「もし、帝國と正面から戦うんなら……絶対にグレイは必要だよ。それはノーラだって理解しているでしょ?ベルリガウスは完全に信用できないんだし……」
と、言われた當の本人は肩を竦めていた。
「ふぅむ……代弁ご苦労!」
「否定をせんか……否定を」
「否定するだけぇ無駄だぁ。信用ってぇのは時間を掛けてつくるもんだからなぁ。んな面倒くせぇこと、やるわけぇねぇだろ」
それについてはシャルラッハも返す言葉がない。信用を作る労力をベルリガウスが払うわけがないし、何より時間もない。
エリリーはノーラントとの和解をんでいるようで、その後に続けてこう言う。
「だからね、ノーラ……っ!」
と、エリリーが言い掛けたところでクーロンとノーラントの間にブワッと空気を吹き飛ばす質量を持つほどの殺気が広がった。それでエリリーはを震わせ、から出かけた言葉を発することが出來なくなった。
「ウチ、戦いたくない人を無理矢理戦わせるなんて出來ない。無理矢理じゃなくても、そうぜさるを得ない狀況なんて、間違ってるもん。絶対引かない」
「戦う道を選んだのなら、最後まで貫くべきです。それを支えることが私の在り方……譲れません」
ズンッと空気が重くなる。
それは理的なもので、実際この場にいる幾人もがが重くたくなったと錯覚した。
ノーラント・アークエイは戦いを好む者ではない。八年前……イガーラを攻めたオーラル皇國との戦で軍人たる父親にも守られながら逃げた。暴力に支配されない平和ない學舎の中では、貴族が相手だって戦えた。だか、きころに戦爭の恐ろしさをに刻まれたノーラントは、ただ守れて震えていた。
同い年で、しかも普段はどちらかと言えば気弱なグレーシュが義勇兵として戦場に立っている時も、最前線から離れて安全な場所にいた。
だからだった。ノーラントは守りたいものを、自分の力で守れるようにと力を得るために八年の歳月を掛けて培ってきた。
霊峰を登ったグレーシュほどではないにしろ、常人に比べれば圧倒的な強さを手にれるに至った。十六歳のがだ。普通であれば、考えられない。グレーシュ・エフォンスも異常といえば異常だが、またその影に隠れた彼も異常な存在。
そう……數十年というアドバンテージがあるクーロンと同等の覇気を兼ね備える一種の怪なのだ。それを、この場で理解できているのは目の前で対峙しているクーロンと……二人の伝説、そしてエキドナだけだった。
(正直、ご主人様の強さに惹かれただけのし才能があるの子だと思っていたのだけど……これは)
エキドナは心で驚いていた。バートゥとの戦い……エルカナフ騒の時にはこれほどの覇気はじ取れなかった。恐らくだが、今のノーラントとガチでやり合えばえきどなは負ける……そんな気がするほどの濃な気迫をノーラントは放っていた。
しかも、それだけではない。
(……守る)
一歩一歩、また一歩とノーラントの意識が深く沈み込んでいく。
(今度は、ウチが守りたい)
殻が割れるようにヒビ割れる。ドロドロに溶けて絡み合う。グチャグチャな意識が、チグハグな願いが、一つにい合わされる。
ブチブチと切れて、繋がる。
「っ!?」
エキドナはゾッと背筋を直させた。今、一瞬だけだがノーラントからグレーシュと同じ気配をじたからだ。それも普通のグレーシュではない。狼の……人を殺すことに躊躇いのない本能が剝き出しとなったグレーシュの気配を。
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