《一兵士では終わらない異世界ライフ》海底王國エーテルバレー
☆☆☆
海底王國エーテルバレーは魚人族の王國だ。
場所としてはアスカ大陸とスーリアント大陸の中央にあるバレー海峽の狹間にあり、主に漁業や酒などで他國と貿易をしている。エーテルバレーの酒は世界でも最高級品に位置しており、バレー酒などと括られている。大衆向けのもの、貴族向けのものと多種多様な種類の酒があることがエーテルバレーの強みと言える。
そんなエーテルバレーだからこそ、數々の酒豪が集まるわけだが……集まってくるのは酒豪だけではない。エーテルバレーでは、酒が盛んになるのと比例して食・・――料理が盛んになった。
味い酒には味い飯を……そういう考え方から、エーテルバレーの食事もまた絶品であり、グルメの間では一種の聖地と化しているようだ。俺――グレーシュ・エフォンスは海底王國へ向かうため、現在ウルディアナを抱えて走って・・・いた。
「大丈夫?」
雷電轟く中、俺の腕の中で必死に俺へしがみ付くウルディアナへそう問い掛けると、ウルディアナは痩せ我慢のように答えた。
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「だ、大丈夫ですわ……」
俺は、エーテルバレーへ向かうに當たり時間的効率を考えてメンバーを俺、ベルリガウス、そしてエーテルバレーに詳しいウルディアナに絞った。そこにどういうわけか、ベルセルフ――ベールちゃんが自発的に加わりたいと言ったので、計4名により今はスーリアント大陸を抜け、海上を稲妻が如き速さで駆けているところだ。
さすがにウルディアナ――ディーナのがこの速度に耐えることは不可能だったので、俺がセルルカの【氷の障壁】を張ることでディーナのに掛かる負擔を軽減しているところだ。
それでも、そのあまりのスピードに怖がってるいるようで肩をビクビクさせている。ふむ……時折、発育のいいディーナのに指先がれるが何とも……なんて思ってない。
思ってない。
既にイガーラを出立して數分が経過しており、そろそろエーテルバレーへ到著するだろうという頃合い。チラリと橫に視線を向けると、ベルリガウスとベールが雷を纏って走っているのが見える。
ベルリガウスが前を走り、ベールちゃんかその後ろを付いて走っていた。まるで親子で旅行でもしている風景だが……今ここにいるベルリガウスはベールちゃんの本の父親ではない。むしろ、全くの別人だ。
「…………」
俺は何となく居たたまれなくなり、視線をそっと逸らす。
俺が眠っている間、バートゥの件など々とあったようだ。本當にけないが、今は悔いている暇も惜しい。本當は、母さんのフォローもしたかったが……母さんは、『ソニーをお願いね……?』とだけ俺に言った。他には何も言わなかった。
俺はもっと母さんに何か聲を掛けてあげられたはずだったのに……全く、今はやることが多すぎて頭が混してしまう。
やがて、バレー海峽へ到著した俺たちは【エレメンタルアスペクト】の狀態で海中を急降下……いよいよ、エーテルバレーへと到著したのだった。
☆☆☆
海底王國エーテルバレーへった俺とベールちゃんは嘆の息をらした。
「へぇ……すごいな」
「うわぁ……」
何がすごいかと言うと、まずエーテルバレーの外界は完全な海中なのだが、なにかの結界で守られるようにして街中には海水がってきていなかった。空気もあり、俺たちは普通の狀態で街中を歩けている。
海の底にいるから外界は暗いものだが、所々で仄かにがあり、どこか夜の街並みにできる賑やかさがある。これにはベルリガウスもすこし面食らったようにしており、ディーナ以外はキョロキョロと辺りを見回しているような狀況だった。
だが……観に來たわけではない。ディーナはそういう意味も込めてか、咳を切ると穏やかな口調で言った。
「ようこそ……ここが、海底王國エーテルバレーですわ」
……それから俺たちは一先ず宿を取って荷を置き、早速セルルカ・アイスベート探しへと乗り出した。といっても、この街中にいるというのなら俺が奴の気配をじ取れるわけだが……。
「それにしても、なんでセルルカがエーテルバレーにいるって分かったんだ?」
俺はそう言って直ぐに後ろを歩くベルリガウスに尋ねた。
「あん?そりぁ……」
と、続けようとしたベルリガウスは隣を歩いていたベールちゃんが級に立ち止まって何やら店に目が釘付けになっているのを見て自分も立ち止まった。俺とディーナも気になって立ち止まる。
ふと、ベールちゃんの見ている方向に目をやると、どうやら店の綿菓子が気になっていたようだ。もしかしたら、食べたいのかもと思って聲を掛けようとするとディーナに目で制された。
「どうしたの?」
「見ててくださいまし……」
何か考えでもあるのだろうか。
ディーナを信じ、ベールちゃんを暫く眺めているとベルリガウスが何やら急に頭をガシガシと掻いてベールちゃんの側まで寄り、訊いた。
「なんだぁ?食いてえのか?」
「え?……あ、あぅ……」
「はっきりしろやぁ……」
「ひぅ…………は、はい……」
「…………ふんっ」
ベルリガウスは鼻を鳴らし、懐から金袋を出すと店を出していた店主に言った。
「おい、その綿菓子を一つ寄越しやがれ。これで足りんだろぉが」
「毎度あり〜」
ベルリガウスは普通にお金を払い、棒に刺さった綿菓子を一本け取るとベールちゃんに無言で手渡した。最初こそ、困していたベールちゃんだったがベルリガウスの行の意味を理解するなり嬉しそうな顔で綿菓子をけ取り食べていた。そして、味しかったようで満面の笑みを浮かべる。
ベルリガウスはベールちゃんの幸せそうな笑みを見ると満足げに頷き、ベールちゃんの頭をし暴にでて言い放つ。
「たくっ……ガキが遠慮なんかすんじゃあねぇ。しけりゃあ口に出して言うんだぜぇ?前にも言ったけどよぉ……ガキはガキらしく目を輝かせてりゃあいいんだぁ」
「…………うん!」
ベールちゃんはベルリガウスから恐怖をじなくなったのか、とても自然な笑顔を浮かべて綿菓子を食べた。ディーナはそれを自分のことのように微笑み、誰にも聞こえないと思ったのか呟いた。
「し……羨ましいですわ」
俺は一瞬、ディーナも綿菓子が食べたかったのかと思ってしまった。まあ……さすがにそんなわけないかと俺は肩を竦めた。
そんなじに、ベルリガウスが意外とベールちゃんに優しいという一面を知りつつベルリガウスは先ほどの質問を、若干を頬を赤くしながら答えた。
「……あいつは食家だかんなぁ。エーテルバレーは飯もウメェし、酒も上等……あいつにとっちゃ楽園だなぁ。だから、戦いの傷を癒すとしたらここってぇわけだ。それに……あいつはネコ科だ」
「え?それってどういう……あ」
俺がベルリガウスの言葉の真意を図ろうとしたところで、近くにセルルカの気配をじた。
「近くにいる……」
そう言うと、ベルリガウス以外の張が高まる。
俺たちはそのままセルルカがいると思わしき……とある酒場の前までやってきていた。途中途中、見目のいいベールちゃんやディーナがいることで酔っ払いに絡まれるが、そいつら全員ベルリガウスを見ると相変えて逃げ出してしまった。
うん、楽だ。
自分で言うのもなんだが、俺には凄みがないらしくてどうにもその手の撃退方法が悪い。大抵はペコペコ頭を下げるのが俺である。その點、ベルリガウスの男らしさといったら……なんだか悲しくなってきた。
そして……店の中にった俺たちは誠に信じられない景を目にした。
酒場の店――その奧の隅で黒いパーカーで貓耳付きのフードを被った長のの子が座っていた。フードの隙間から見える水の綺麗な髪と、き通るような白い、そして気配からまず間違いなくセルルカだと分かった。
しかし……驚いたのは、セルルカが魚をまるで餌を與えられた貓のように食べていたからだ。そう……皿の上に置かれた生魚に齧り付く様はまさに貓。
ふと、セルルカの貓耳がピクピクといたかと思うとこちらにバッと振り向いた。魚に齧り付きながらである。そして、俺たちを見るや否や齧り付いていた魚をポトリと口から落とし、続いてこう鳴いた。
「ニャッ!?」
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