《G ワールド オンライン ~ユニークすぎるユニークスキル~》第四話 仕様です
一人殘された勇人は、ひとまずチュートリアルを終わらせようと、腕時計にれディスプレイを出現させる。
その畫面を見て勇人は固まった。
「……チュートリアルが終わってる」
そう、このゲームのチュートリアルはあれで終了なのだった。
畫面の端に小さく『バグではありません、仕様です』と書かれていた。
なんとも、現実のように厳しく自由なゲームだと改めて勇人はじた。
そうなると、やることは唯一つ。
RPGの醍醐味であるモンスター狩りだ。
「よし、きっとこの『才能』は大晩型なんだ」
そう前向き発言をしながら、勇人はモンスターのいそうな森へと向かっていった――が、そこであることに気が付く。
それは――裝備品が見當たらない。
勇人はゲーム開始時にしっかりと初期裝備をチェックしたはずなのだが、それはどこにもない。
チュートリアルが親切ならば、きっとこんなことにはならなかったのだろうが。
「運営がちょっとひどすぎないかなぁ」
勇人は、空を見ながらそう呟く。
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まるで運営に訴えかけるように。
すると、その言葉が通じたのか目の前に半明のディスプレイが現れた。
そのディスプレイは腕時計にれたときだけ現れるものと同じもので、ちなみに勇人はれていない。
怪訝そうな表をしながらそのディスプレイを勇人は見つめる。
すると、文字が現れた。
『バグではありません、私用です』と。
「……さすがに見間違えじゃないよな」
明らかにそこには、仕様ではなく私用と書かれていた。
運営さん遊びすぎですよ、と勇人は心のそこから思った。
『では、一時的に別フィールドへ転移させてもらいます』
再び文字が浮かび上がる。
拒否権はないようで、決定事項のようだ。
その文字が現れた直後に、勇人のは半明になっていき、周りのプレイヤーたちも同じようになっているのが確認できる。
そうして、プレイヤーたちは半ば強制的に別フィールドへ転送されたのだった。
『こんにちは、プレイヤーの諸君』
目の前がハッキリし始めたころに、勇人の耳に言葉が屆いた。
その言葉を発した本人は、この多くのプレイヤーがいる何も無いフィールドで特別大きくてフードをかぶっているような人だ。
周りでは、「デスゲームきたああああ」や「え、なに、デスゲーム、いやぁ、死にたくない」など、主に何かの小説を読んできたであろう人たちが聲をあげていた。
他には、「バグでしょ、え? 私用?」、「私用って文字の時點でバグじゃね?」などなど、運営に対して不満を抱いているような人たちなどがぶつぶつ言っていた。
『私はこのGWOのゲームマスター 馬 枝葉だ』
と、その大きな人影は告げる。
それを聞いたみんなの反応は、ポカーンとしている。
そもそも、このゲームを開発したのはWTG社としか知らされていないので、天才科學者がもしいたとしても名前を知らない。
そして、ツッコムべき場所はそこではなく、ゲームマスターの名前だ。
「バグ シヨウって、絶対運営に居ちゃだめな人だろ」
ボソリと勇人は思ったことを呟く。
そしてそんなことを言ったのは、勇人だけではない。
他のプレイヤー達も同じ事を思っていたらしく、ボソリボソリと呟いていた。
そんなことはお構いなしにゲームマスターは話を続ける。
『今回は君たちプレイヤーに重大な発表がある』
そのゲームマスター……バグマスターの言葉にプレイヤーたちはゴクリと唾を飲み込んだ。
『それでは発表しよう』
バグマスター……シヨウさんは嬉しそうに?語った。
ちなみに、ボイスチェンジャーが使われてるため聲では読み取れない、が、明らかに早口になったのでさっきまでの威厳というものはじられない。
名前の時點で無くなったも同然だが。
『この世界の通貨は現実世界でも使えるようになりました』
「は?」
勇人はあまりにも的外れなシヨウさんの発言にポカーンとしてしまう。
否、ほとんどのプレイヤーが同じような反応だ。
特に、デスゲームを期待していたやつらは意気消沈している。
『後、この世界でも教育はけられるようになりました。
これは、各國のお偉いさん方からも許可を得ています。
もちろん、プレイヤーの皆さんで起業したり、その會社に就職したりなど、現実と変わらないような生活を送ることも可能です。』
シヨウさんは先ほどの口數のなさが打って変わって、元気な聲で言葉を紡いで言った。
ちなみに、ボイスチェンジャーを使うのを忘れたのか、普通のの聲である。
「デスゲームはどうした!」
あるプレイヤーがそうんだ。
どうしてそんなにこだわるのか。
勇人は呆れながらそのプレイヤーを見る。
幸いにも、知り合いではなく、ただのオッサンだった。
その年でデスゲームにロマンをじているのかと、呆れ度が増した。
『デスゲームですか? プレイヤーの皆さんはもっとリアルを求めるのですか?
それならば、デスゲームにしてもよろしいのですが』
シヨウさんはとんでもないことを口に出した。
その瞬間、多くのプレイヤーが、デスゲーム発言をしたおっさんに非難の聲を浴びせる。
「ふざけんな、お前の都合でデスゲームにさせてたまるか!」
「おっさんのくせにいつまで夢を見てんだよ」
「ハゲ!」
プレイヤーは次々とオッサンの軽率な発言に対して非難する。
最後の発言はただの悪口。
『デスゲームにはしませんよ、してしまえばプレイヤーさんたちが思うように行できないでしょうし、
それに、痛覚もじるようにプログラミングされてますので、捨てなどは簡単には行えないようになってます』
シヨウさんは、何も気にした様子も無くそう口にする。
プレイヤーたちは再び固まった。
『あ、安心してください、例えば足の小指を剣で切られたとしましょう』
「例えがおかしい……」
勇人は思わずボソリと呟く。
もちろんそれは誰にも聞こえていないが。
『そのときの痛みは、切斷されたときの痛みと言うわけには行きません、もしそうならば、みなさんは即戦闘不能になるでしょうし、ですので、痛みの上限をあらかじめ設定しています。
ですので、小指を切られた時の痛みはタンスの角にぶつけたときの痛みと同程度となっています』
それはそれで十分痛い、それに戦闘不能に陥る場合もあるだろう、と誰もが心の中で思った。
『なので、実際に小指をぶつけるときの痛みと剣で切られた時の痛みは同じです
他の例でいきますと……男の方の急所を剣で貫かれたときの痛みは、そこを蹴られたときの痛みと同じなようですね』
「だから、例えがおかしいし、他人の験談かよ」
勇人はゲームマスターシオンに呆れた視線を送りながら呟く。
もちろん、他のプレイヤーたちも同様だ。
『では、またの機會に會いましょう、次に合えるのは……デスペナルティーの導告知かもしれませんね』
シオンさんは、そう言って消えた。
最後の言葉は余計な一言だろう。
と、勇人は先ほどデスペナルティー発言をしたおっさんの方を見ならが呟いた。
おっさんは絶賛罵倒()中である。
「ふう、今日はここで終わりかな」
時間も時間なので勇人はこのフィールドから出るなりログアウトをすることにした。
結局、狩りにはいけず裝備品の出し方すら分からないままである。
「お、そろそろ転移か」
勇人のがここに來たときと同じように薄っすらとけ始める。
そして、目の前の景が一瞬にして変わった。
「よし、元居た場所だな」
勇人はキョロキョロと辺りを見渡しながら、確認する。
どうやら変なところには飛ばされていないらしい。
どうせそうなった所で『仕様です』と言われるのだろうが。
「じゃ、ログアウトするか」
勇人は腕時計に手をれメニュー畫面を目の前に映し出す。
そして、勇人はログアウトボタンの方へ指をたどらせて行くが、その指が止まった。
「……なんだよそれ」
勇人は思わず歯を食いしばる。
そこには――
『追記 裝備品が消えたプレイヤーがいるそうなのですがそれはバグです』
そう、ログアウトボタンが消えた、とかではなく、運営の不手際を曬された文章が記されていたものだった。
「最後は結局バグじゃねえか!」
勇人は天に向かってんだ。
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