《G ワールド オンライン ~ユニークすぎるユニークスキル~》第六話 素手の勇者
森のり口。
そこに立っているプレイヤーはそう多くない。
その中でも、異質とも言える存在がいた。
そのプレイヤーは武を持たず、手ぶらなのだ。
このプレイヤーは、バグによって武を失った勇人なのは言うまでもない。
「あいつ、素手だぜ」
「本當だ、短剣でも忍ばせてるんじゃないの?」
「どうだろうな、隠せるようなところないだろ」
周りのプレイヤーは勇人を見てヒソヒソと話始めた。
「やばい、恥ずかしい」
勇人は顔を赤らめながらボソッと呟き、逃げるように森の中にっていった。
「よし、ここら辺は誰も居ないな」
森をひたすら進み続けた勇人は辺りを見渡して呟く。
そして幸運にも道中モンスターに出會わなかったので、戦闘にはなっていない。
「にしても、本當にどうしようか……うわ」
突然、勇人の前方に人影が現れる。
「プレイヤーか?」
ひとまず、先ほど手にれたばかりの鑑定スキルを発する。
「鑑定」
勇人がそう発すると、目の前に相手方のステータスが現れた。
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別に鑑定スキルを使わなくても見ることは可能なのだが、詳しく見るためには鑑定が必要なようだ。
ネーム ブラックゴブリン
種族 亜人族モンスター
スキル 『隠』 姿が見えにくい狀態になる
「うわ、人影じゃなくて、ただ黒いだけかよ」
鑑定スキルによってモンスターのスキルを確認できるなり、勇人は後ずさった。
明らかに、ゴブリンの上位個にしか見えないモンスターに、勇人は思わず苦笑する。
「どうする、逃げるか、戦うか」
どちらにせよ、早く決めないとやられることには変わりない。
そして、勇人は武がない自分の手元を見て苦笑し、ゆっくりとモンスターから離れる。
「さすがに無理じゃないかなぁ、あはは」
勇人は一定の距離を離れた瞬間に後ろを振り返り走る。
と、そこにはなんと、前方とおんなじやつが。
「え、それは困ります」
両手をあげて降參の意思を伝える勇人。
だが、決して諦めたわけではなく、こうなったらやってしまおうと考えていた。
「やるしかないか」
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勇人は拳を前に突き出し、ファイティングポーズをする。
それをみた、ブラックゴブリンはニヤッと笑い、手に持っていたこん棒を見せびらかすかのよう二振り上げた。
「モンスターでさえ、支給されるのか……」
自分の不幸に愚癡をこぼす。
「だけどな、やられるわけにはいかないんで、痛いらしいし」
理由はそれだけである。
痛いのはいや、ただそれだけ。
すると、後ろのほうからガサッと音が聞こえた。
先ほどのゴブリンが追いついてきたのだろう。
「いくぞおおおおおお」
気合の聲をあげながら前方のゴブリンに向かって勇人は走っていった。
まず、先制攻撃の勇人の拳は何故かゴブリンに顔にクリーンヒットする。
避けようともしなかったのである。
「避けるまでもないってか」
勇人は悔しそうに呟き、毆ったゴブリンの方を見た。
すると、ゴブリンの表は困そのものだった。
きはフラフラで、まるで何をされたのか理解してないようだ。
「もしかして、本當に素手で打ってくるとは思わなかったのか?」
疑問はいろいろとあるが、そろそろ後ろのゴブリンが襲い掛かってくるような気がしたので、勇人は素早くサイドステップし振り返る。
「かかってこい……あれ?」
振り返った先には何もおらず、変わりにすぐ近くで鈍い音がなった。
その方向を恐る恐る勇人は見ると、ゴブリンがゴブリンをこん棒で毆っている場面が寫った。
どうしてこんなことになっているのかというと、ゴブリンは勇人の背後に得意の隠で忍び寄り、こん棒で叩こうとしたところで、タイミングよく勇人が橫に移したため、すぐそばに居たゴブリンにヒットしたというわけだ。
「なんか、申し訳ない」
勇人は災難続きのゴブリンに苦笑いを浮かべ、言葉を発する。
二発けたゴブリンは既に瀕死狀態だ。
隠スキル持ちだけあって、真正面からやりあうタイプではないらしい。
「では、トドメをいきますか」
勇人は、二人のゴブリンの方へ向かって走り出し、こん棒をけてないほうのゴブリンにタックルする。
すると、案の定、それをけたゴブリンは勢を崩し、追い討ちをかけるように勇人はそのゴブリンに対して前蹴りを加える。
そのゴブリンは、完全に倒れこみ、毆られたゴブリンの方へ倒れた。
三度目の災難をけたゴブリンはその衝撃で絶命してしまったようで、の粒となって消えてしまった。
「よし、一目」
勇人は、すぐさま、起き上がってこようとするゴブリンに対し、蹴りを放ち、ボコボコにしていく。
どうも気分が良くないのは気のせいだろう。
そうして、二対のゴブリンを討伐した。
すぐそばに、り輝く何かが落ちている。
ドロップアイテムだ。
「何かな何かな」
それを拾い、収納袋にれ、それを確認すべくメニューを開く。
『レアアイテムを獲得しました』
通知にはそう書いてあった。
その文章だけでも、勇人の気持ちは高ぶった。
「よっしゃ、さすが俺の才能ユニークスキル、地味だけど」
すぐさま、そのアイテムを手元に出現させる。
そこには、二つの皮で出來た何かが現れた。
用途が見えないため、調べる。
『黒龍の皮手袋ブラックドラゴングローブ 上位龍族の皮によって作られた手袋、大抵のものなら毆っても痛みをじないほど丈夫』
「……悪意をじる」
勇人は、武がない所でこのチョイスはさすがに運営の悪意を疑った。
再びモンスターと戦闘をして武を調達するしか、勇人には選択肢はない。
「くそぉ、絶対負けねえ」
勇人はそれから森の中を走り回り、ブラックゴブリンを數匹毆り倒し、その下位種族であるゴブリンを多數倒した。
そうしているうちに、結構な時間がたち、いくつかドロップアイテムが出たが、確認する時間すら惜しんだ勇人は、拾うなりすぐ別の場所に走り、そこであったモンスターをぶったおしていった。
「はぁはぁ、しがんばりすぎた」
若干無茶をした勇人はひとまず拾ったアイテムをチェックするために、一度立ち止まり地面に座り込んだ。
本當なら森に出てからでもいいのだが、この森で出會った魔はゴブリン系だけなので、勇人はすっかり安心していたのだった。
「さて、何が手にったのかな――」
「きゃあーーーー」
メニュー畫面を開こうと腕時計にれようとした所で、のび聲が勇人の耳に響いた。
そうなっては、無視も出來ない。
なぜなら、痛いから。
「おーーい、何処だ」
立ち上がり、聲の主を探す。
しかし、周りは木が生い茂り、視界は決してよくはない。
なので、勇人は聲の方へ走って向かう。
もちろん、聲を出しながらだ。
すると、拓けた場所にたどり著いた。
そこには、先ほどの聲の主だと思われるが、巖にもたれかかって何かを見ながら震えていた。
「おい、大丈夫か?」
勇人は、慌ててそののところへ向かう。
そのは、勇人よりも全的にい、長、顔つきを含めてだ。
というよりはといったほうが認識的には正しい。
「グスッヒッグ」
は、勇人の顔を見るなり、安心したのか泣き出してしまった。
「一何があったんだ……」
あいにく勇人に、を泣き止ますスキルは持ち合わせていないので、困った表を浮かべた勇人は立ち上がって、辺りを見渡す。
「ゴブリンか? それとも……」
勇人は先ほどまで、嫌というほど倒してきたゴブリンがを襲った可能を考えながら、後ろを振り向くと、長は自分を遙かに超える、馬鹿でかいサイのようなモンスターがすぐ後ろにいた。
「……えっと、こんにちは?」
「ウガアアアア」
「うわああああああ」
勇人は、急いでを抱きかかえその場を飛びのく。
直後、大きな音が鳴り響き、先ほど居た場所を見ると、巖が々に砕けているところだった。
「いやいやいや、なんでこんな初心者がいっぱいいるような森にこんなやつが」
勇人は見た目、絶対勝てそうに無い、モンスターに鑑定スキルを當てる。
ネーム フォールキングホロン
種族 獣種モンスター
スキル 『咆哮 自分の聲に大きな補正』『墮落王 モンスターだけのスキル 気が荒くなり攻撃力向上代わりに力低下』
「おぉ、元王様だったのか、それにしても鑑定スキルのおかげで弱點発見」
勇人はひとまずそのモンスターから離れ、安全なところにを置く。
「ここで待っててね」
「グスッ、……わかった」
小さな聲ではそう返事し、勇人はモンスターに向かって走る。
モンスターは巖に激突したので絶賛混中だ。
「あの巖にぶつかっても無事って事は、頭部は丈夫ってことか」
勇人は冷靜に分析しながら、確実に倒せるように考察をする。
しかし、そんなに時間が無い。
今すぐにでも、モンスターが混から開放されてしまいかねないからだ。
「分からねえ、もう悩んでいる場合じゃないか」
勇人は思い切り走り出して、モンスターの腹部に一発拳を打ちつけた。
「グオオオオオ」
思いのほか効果があったらしく、モンスターは苦しそうなうなり聲をあげた。
もう一度打ち込む。
グローブの効果で、勇人の拳は痛みをじていないため、何度でも打ち込める。
しかし、腕部分には負擔はかかるため、無限というわけにはいかないが。
「グオオオオオオオオオオオ」
モンスターが咆哮スキルを使い、勇人の鼓を震わせる。
下手したら、難聴になりそうなくらいだ。
「うるせえよ!」
勇人は思い切り足を上げ、モンスターの尾を踏みつけた。
「オオォォォ」
モンスターの最後の咆哮は、思ったより大きいものではなく、呆気なく絶命した。
キラキラとモンスターの破片が舞う中で、勇人は周りにいつの間にかプレイヤーが居るのに気が付く。
「え、なにこれ」
困する勇人。
実のところ、他のプレイヤーは勇人が始めの拳を打ち出すところから既にいたのだった。
それもそのはずで、あの大きなモンスターの方向とのび聲があったなら來るのも當然といえば當然である。
「素手で倒したぞ」
「すげえ、勇者だ」
森にるときと同じように、ボソボソとプレイヤーたちは勇人をみながら呟く。
そして、誰かがんだ。
「なら、素手の勇者だ!!」
その一言で、周りのプレイヤーたちは湧き上がって歓聲を勇人に浴びせてくる。
そうして、素手の勇者伝説が生まれた瞬間である。
もちろん、素手で通すつもりは勇人には無い。
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