《》第15話 學
合格発表當日。
オレとロードは、自分たちの學試験の結果を見るためにディムール王立魔法學院へと足を運んでいた。
キアラがすぐ後ろにいるが、ロードもすぐそばにいるために相手をすることはできない。
「これか」
校舎のり口のところに、合格者の験番號が記されているボードが置いてあった。
この辺は前世での高校験とほとんど変わらない。
「順位表はあっちにってあるみたいだよ。行こう、ラル君」
ロードは験番號が記されているボードに全く目を通すことなく、順位表がってある校舎の中へ足を向けた。
自分の合格を欠片も疑っていないからこそできる行だろう。
ロードの話によると、順位表には特に優秀な績を修めた三十名の名前が書かれているらしい。
オレたちはこちらを見ることにした。
順位表は、目立つところにデカデカとってあった。
「お、やったぜ」
オレは一位だった。首席だ。
思わず後ろを振り向くと、キアラが「だから言ったでしょ?」とでも言うかのようなドヤ顔をしている。
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かなりウザかったので無視した。
「えっ、無視!? さすがにそれは寂しいよ!?」
キアラが一人で何やら騒いでいるが、今は奴の相手をすることはできない。
まあ、後でお禮の一言ぐらいは言ってやろう。
一方ロードは、目の前の順位表を見てどこか納得した様子でため息をついていた。
「……二位か」
「あまり驚かないんだな」
「まあ、ラル君の実技試験を見たときから予想はしていたからね。でも、いつか絶対に君を越えてみせる」
「おう。楽しみにしてるぜ」
さすがにロード以外に知ってる名前はいないよな……と思いながら順位表を見ていたら、クレアが三位にいた。
「クレアもいるのか。こりゃ楽しい學園生活になりそうだな」
オレがそう呟くと、ロードは驚いた表を浮かべて、
「ラル君は、クレア様と仲がいいのかい?」
「ああ、王城でちょくちょく遊んでるからな。にしても、よくヴァルター陛下がここへの學を許可したもんだ……」
二年前、クレアが襲われた事件の下手人は未だに捕まっていない。
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ずっと王城の中にいるよりはいいと思うが、十分な警戒をしていないとまた同じような事件が起こった時に対処できない。
オレもできるだけ目をらせておく必要があるな。
その後、ロードと一緒に教科書と制服を購した。
験勉強するにあたってヘレナから參考書類は買い與えられていたが、今日買った教科書たちは見たことのないものばかりだ。
あとで目を通しておこう。
制服も久しぶりに著たので懐かしい気持ちになった。
とはいえ、周りを見回してもロリショタとしかいないが。
この年頃の子どもたちが制服を著ているのは新鮮だな。
ちなみにキアラは、オレが制服に著替えるのを見て鼻を垂らしていた。
だめだこの幽霊、早くなんとかしないと。
変態幽霊さんは放っておいて、教室へと向かう。
一組は學試験の績が良かった上位三十名がそのまま同じクラスになるので、ロードとクレアも自的にオレと同じクラスということになる。
教室にると、真ん中あたりの席に生徒たちが集まって人だかりができていた。
人が多すぎて、中心にいるのが誰なのかはわからない。
そのすぐそばで、長のの人がし慌てたような表を浮かべながら、子供たちを人だかりから離そうとしている。
「なんだあれ?」
ロードは不思議そうに眉を寄せているが、オレには心當たりがあった。
「もしかして、クレアか?」
「あっ、ラル!」
オレがし聲を張ってそう尋ねると、すぐに聞きなれた聲で返答があった。
やはりクレアだったか。
「すいません、通してください」
クレアが言うと、すぐに彼の周りを囲っていた人の波が割れた。
ちょっとモーゼっぽい。
「クレアも、ここに學するんだな」
「うん! 見て見て、この制服すごくかわいいでしょ?」
その場でくるくると回りながら、クレアは自分の制服姿をオレに見せつける。
「うん、可い。よく似合ってるよ」
「えへへー」
僅かに頬を赤く染めながら無邪気に笑うクレアに、不覚にもドキッとしてしまった。
だが、今はそれより気になることがある。
「……で、クレア。そちらの方・・・・・は?」
クレアを見張るようにすぐ傍に佇んでいる。
オレは彼に見覚えがなかった。
オレの言葉を耳にしたらしい彼は、恭しく一禮をしてから口を開いた。
「初めまして、ラルフ様。私の名前はダリア。現在、クレア様の護衛をさせてもらっております」
「なるほど、護衛の方ですか」
表面上は納得したような表を作っていたが、オレの頭の中では疑問符が飛びっていた。
オレが知っている、前の護衛はどうしたのだろう。
僅かな表の変化から読み取ったのか、ダリアさんはオレの耳元に顔を近づけると、囁くように言葉を紡ぐ。
「前任の方は殉職しました。この學校にいる間、ラルフ様にはクレア様の護衛としての役目も擔っていたたきたく思います」
……なんとなくそんな予はしていたが、やはり前の護衛は亡くなっていたか。
しかも殉職ということは、オレの知らない間にクレアが襲われていたことになる。
クレアのことだから、オレを心配させまいと隠していたんだろうが……。
「お任せください。僕がここにいる限り、クレアには指一本れさせませんので」
オレが小聲でそう答えると、ダリアさんは満足そうな表でオレから離れた。
しかし本當に、よく陛下はクレアがここに學するのを許可したもんだ……。
「それで、そちらの彼は、名前は何と言うのでしょうか?」
ダリアさんが、ロードを目で示しながら問いかける。
「……ロード・オールノートです。よろしくお願いします、ダリアさん」
「ああ、オールノート家の方でしたか。こちらこそよろしくお願いいたします、ロード様」
にこやかな表で応対するロード。
だが、その表が僅かにいような気がするのはオレの気のせいだろうか。
多分アレだな。
オレはダリアさんに名前把握されてたけど、ロードは名前把握されてなかったから、ちょっとイライラしてるんだろう。
ちなみに、オールノート家は割と名の知れた貴族の名門である。
ロードと會った日、家に帰ってヘレナにロードのことを話したらし驚かれた。
オレたちがそんなことを話していると、教師らしき男が教室へってきた。
彼はオレたちの方向を見ると、骨に面倒くさそうな顔をして、
「おい、いつまで立ち歩いてんだお前ら。もう始業時間だろうが。さっさと席に著け」
男の言葉にびっくりした生徒たちが慌てて退散する。
オレも適當にその辺の席に著いた。
隣にはクレアも座っている。ダリアさんは立ったままだ。
「……ん? 何だオールノート、どこでもいいからさっさと著席しろ」
そして、教室にいる生徒の中でなぜかロードだけ著席していなかった。
何やってんだあいつ。
「僕たちはまだ、今のこの時間が始業時間である、という説明をけていませんでした。それを當然守るべき義務のように言われても、対応しかねます」
「は? 時間前に著席しておくのは當たり前だろうが。今まで何を教えてきたんだ、お前らの親は」
吐き捨てるように侮蔑の言葉を放つ男。
その姿は、教師のものとはあまりにもかけ離れている。
というか、何か若干話ズレてるような……。
本當に教師なのかこいつ?
「大人が遵守すべき常識を知らないのはあなたの方でしょう。自の誤りを、まるで生徒が至らなかったかのように言うのはやめていただきたい」
「あー、もうめんどくさい。いいから席につけよオールノート。先生の言うことが聞けないってのか?」
「……はぁ、わかりました」
何を言っても無駄だと判斷したのか、ロードは大げさに肩をすくめると、しぶしぶといった様子で俺の前の席に座った。
「今日からお前たちの擔任になる、グルー・ニコルドだ。これからよろしく頼む」
それからニコルド先生は、この學校に通う上での諸注意を述べ始めた。
この學校にいる間は校則は絶対遵守だの、分の差は何の意味も持たないだの、そういった話をだらだらと聴かせられる。
普段なら興味を持って聞くところなのだが、なぜかあまり頭にらなかった。
ニコルド先生の話が終わると、今日は軽い顔合わせだけの日だったらしく、すぐに帰ることになった。
「ああいう大人がでかい顔をしてるうちは、この國はよくならないんだろうね」
「……どうした突然」
憂げな表でそんなことを言い出したロードに、帰る準備をしていたオレのきが止まる。
「どうせ統でも魔でも僕たちの足元にも及ばないクセに、僕たちより上に立っていないと気が済まないんだろう。あんなの、ただ態度がでかいだけのどうしようもない人間じゃないか」
「ボロクソ言うなぁ……。それに、家柄はともかく魔がオレたちよりできないとも限らないだろ」
というか、統や家柄が劣ってるとかそういうゲスい発言をするのはやめてしい。
さっきここでは分の違いは関係ないって言われたばっかりだろうに。
「まあそうだけど……あ、そうだラル君。この後、一緒に僕の家に遊びに來ないかい? よかったらクレア様も一緒に」
「え!? いいの!?」
オレたちの話に聞き耳を立てていたらしいクレアが、ぱっと顔を輝かせる。
やっぱ聞いてたのか。
「もちろんです。親睦を深めるために、三人で々お話しましょう」
「うん! あ、ラルも行くよね?」
「うん。そういうことなら、お邪魔させてもらおうかな」
しかし、ロードは自然だな。
他の貴族は、クレアとの関係を作ろうと必死だが、ロードにはそれがない。
あまりクレアのことを特別視していないというか……。
そんなわけで、オレたちはロードの家へと向かったのだった。
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