《》第39話 カタリナのプレゼント作戦 後編

「そういえば、ロードさまはお店で何か買われるんですか?」

「ああ、そうだね。せっかくだし、ラル君へのプレゼントでも買っていこうかな」

ロードさまと一緒にやってきたのは、王都でも指折りの、お店がたくさん並んでいる通りです。

このあたりで、ラルさまへのお誕生日プレゼントを選ぼうと思っていましたが……キアラさんへ相談したことで、第一希のものは決まってしまいました。

「カタリナちゃんは、予算はどれくらいで買おうと思っているのかな?」

「えっと、銅貨が二十五枚あるので、それ以に収めないといけないですね」

このお金は、ラルさまと一緒にダーマントル地方へ行っていたときに、村の皆さんの手伝いをしていたら頂いたりしたものです。

別にお金のためにやっていたわけではないのですが、ラルさまが普通にけ取っていたので、カタリナも謝してけ取っておくことにしました。

それを聞いたロードさまは、し考え込むそぶりを見せて、

「なるほど。それだけあるなら、けっこういいものが買えるだろうね」

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ロードさまにそう言われて、ほっとしました。

カタリナだけでは、貴族の方のお金の判斷基準がわかりませんでしたが、ロードさまがそう言うのなら大丈夫そうです。

「よし、じゃあ早速いこうか。僕としては裝飾品とか服とか、そのあたりが無難だと思うんだけど、僕のプレゼントがカタリナちゃんのと被ったら元も子もないしね」

「あ、すいません。ちょっといいですかロードさま?」

そう言って歩き出そうとしたロードさまを、カタリナは呼び止めました。

「ん? どうかしたのかい?」

「実は、あのあと一人で考えて、こういうのがいいんじゃないかっていうプレゼントがあるんですけど……」

一人で考えた、というのはもちろん噓です。

本當はキアラさんとものすごく相談しました。

それで、手持ちのお金でラルさまを一番喜ばせられるのはこれしかない、という結論に至ったんです。

「へえ。どんなプレゼントなの?」

「はい、えーっとですね……」

カタリナは、ロードさまにそのプレゼントのことを話しました。

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それを聞いたロードさまは、心したような顔をして、

「なるほど。それならお金もそれほどかからないし、ラル君もきっと喜ぶだろうね」

「わぁ、そう言ってもらえて嬉しいです!」

ロードさまの言葉を聞いて、ホッとしました。

ロードさまのお墨付きがあれば、きっとラルさまも喜んでくれるに違いありません。

「でも、時間は大丈夫? それ、何げにけっこう時間をとられると思うんだけど……」

ロードさまが心配そうにカタリナのことを見ていますが、心配は無用です。

こう見えても、カタリナは強いのですっ。

「大丈夫です。なんとかしますので」

「そ、そっか」

ロードさまは何故か一歩引いた様子で、カタリナの話を聞いていました。

「それなら、僕が知っている店の中で一番いいのは……あそこかな。値段もそこまで高くないし、カタリナちゃんのしいものは手にるはずだよ」

「そうなんですか? それじゃあ、あのお店に行ってみてもいいですか……?」

「もちろん。僕が提案しておいて斷るはずないよ。初めてるお店となると、何かと不安がつきまとうものだしね。それじゃあ行こう」

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ロードさまは笑いながら、カタリナのことをエスコートしてくれます。

その姿を頼もしく思いながら、カタリナはロードさまの背中を追うのでした。

そして、ラルさまのお誕生日がやってきました。

この日だけは、フレイズさまもヘレナさまもミーシャさまも、王都にあるラルさまのお家にいらっしゃいます。

フレイズさまたちをお出迎えするために、いつもより一層厳しいお掃除が行われました。

それが終わると、今度は夕食を作ります。

ガベルブック家は家族だけでお誕生日をお祝いするために、お料理はなめです。

とはいえ、今日はラルさまのお誕生日。

カタリナも、腕によりをかけてお料理を作――るのはまだ任せてもらえませんが、たくさんお手伝いしました。

ラルさま、喜んでくれたらいいなぁ。

そうしているうちに、フレイズさまたちが、このお屋敷に到著したようです。

早速お出迎えに向かいます。

「おお、カタリナか。元気そうだな。また長がびたんじゃないか?」

「はい! 順調に長中です!」

最初はカタリナのことを見る目に複雑なを帯びていたフレイズさまも、今ではまるで我が子のようにカタリナのことを可がってくださいます。

その大きな手に頭をでられるくすぐったいに目を閉じていると、今度はヘレナさまからも聲をかけられました。

「あら、カタリナちゃん! 久しぶりねー。元気にしてた?」

「元気ですよ! ヘレナさまは大丈夫でしたか?」

「大丈夫よ。それに、もうすぐ生まれるわ」

そのお腹は、だいぶ大きくなっています。

ヘレナさまは、お腹をでながら慈しむような顔をしていました。

そんなヘレナさまの肩を、フレイズさまがそっと抱き寄せます。

その姿が、とても羨ましく思えました。

「カタリナ。もう準備はできているんですか?」

「はっ、そうでした! ありがとうございますミーシャさま!」

ミーシャさまの一聲で我を取り戻したカタリナは、急いで屋敷の中へと戻ります。

お誕生日のお祝いは、始まったばかりでした。

「ラル、お誕生日おめでとう!」

「ラル、おめでとう!」

「ラルフ様、おめでとうございます」

「ラルさま、お誕生日おめでとうございますっ!」

「あ、ありがとう……なんかみんなに一斉に言われるとすごい照れくさいですね」

そう言って、ラルさまは翡翠の瞳を嬉しそうに細めます。

その姿を見て、またの奧が燃え上がるような覚がありました。

お誕生日のお祝いは、そのまま和やかに進んでいきました。

最近は実家のほうに帰ることも多いラルさまですが、その話題は盡きることがありません。

「やっぱり、みんなが作ってくれた料理は味しいな」

「本當ですか? ありがとうございます!」

ラルさまの近くにいたメイドさんが、嬉しそうな聲を上げています。

そ、そうですよね。

料理の一品も満足に作らず、お手伝いだけしていたカタリナなんて、そんな褒められた存在ではないのです。

だから、ラルさまによしよしって褒めてもらえないのも仕方ないのです。

「カタリナも、ありがとな」

「あっ……」

ラルさまに頭をでられて、顔が真っ赤になっていく覚がありました。

どうしてか、涙が溢れそうになります。

の奧から沸き上がってくる、これはなんなのでしょうか。

……すごく切なくて、苦しいです。

「……? カタリナ? 大丈夫か?」

「はっ、はひ! 大丈夫ですっ!」

心配そうにカタリナの顔をのぞき込むラルさまの顔を直視して、びっくりしてしまいました。

今、カタリナの口から明らかに変な音がれましたが、ラルさまは軽く流してくれました。

……やっぱり、ラルさまは優しいです。

そして、そろそろお料理もなくなってきたころ。

例年通りなら、プレゼントを渡すくらいの時間帯です。

カタリナも、どきどきしてきました。

ラルさまはカタリナのプレゼントを見て、喜んでくれるでしょうか。

そんなことを考えていると、フレイズさまが、おもむろに背後から何かを取り出しました。

「ほら、ラル。プレゼントだ」

「わぁ! ありがとうございます、父上!」

ラルさまが、嬉しそうな聲をらします。

フレイズさまからのプレゼントは、立派な剣でした。

カタリナには、どこがどうすごいのかはよくわかりませんでしたが、ラルさまが思わず息をらすくらい、とにかくすごそうな剣です。

「お前が魔師としての研鑽を積んでいるのは知っているが、剣士としての接近戦を學んでいたことを忘れないでほしいと思ってな。……けっこう貴重な素材を使ったものだから、大事に使ってくれよ?」

「はい! 大切にします!」

ラルさまは満面の笑みで、その剣を大事そうに謎の空間にしまいました。

あの黒いのようなものは魔によって作られている空間らしく、いつでもどこでもれたり取り出したりできるのだとか。

カタリナもちょっとしいです。

「はい、ラル。誕生日おめでとう」

「母様も、ありがとうございます!」

ヘレナさまは、何かがった袋をラルさまに渡していました。

中に何がっているのか、まだわかりません。

「開けてもいいですか?」

「ええ、もちろん」

ヘレナさまが見守る中、ラルさまは袋を開けました。

「あっ……」

カタリナは、思わず聲をらしていました。

だって、その中から出てきたのは……、

「手作りの帽子とマフラーとセーターと……靴下まであるじゃないですか。すごいですね」

「うふふ。ラルのために頑張って作ったのよ」

それらを見て、ラルさまが嘆の聲をらします。

それもそのはず。

ヘレナさまが編んだそれらの服たちは、模様まで織り込んである、街中で売っていても思わず手をばしてしまいたくなるような、そんな魅力に溢れていました。

「…………っ」

だから、カタリナはラルさまの前にプレゼントを出すことができません。

だって、ヘレナさまのプレゼントは、カタリナのプレゼントと全く同じだったから。

しかも、見た目からして全然違いました。

微妙に左右の大きさが違うカタリナの靴下とは違い、ヘレナさまが編んだ靴下は普通に売りになるくらいしい仕上がりでした。

それに、カタリナが編んだのが小さな靴下だけなのに対し、ヘレナさまはさらにセーターやマフラーまで編んでいます。

比べることすらおこがましいと思いました。

「――っ」

こんなものを、ラルさまに渡そうと思っていた自分自が悲しくなり、涙が溢れそうになります。

なんだか、息が苦しくなってきました。

「ごめんなさいラルさま……し気分が悪いのでお部屋に戻らせていただきますね」

「え? カタリナ、大丈夫か? オレの誕生日だからって、無理させすぎちゃったか?」

「っ――」

「おい、カタリナ!?」

耐えきれなくなり、気がつくとカタリナは走り出していました。

「……っ、うぅ……」

廊下を走りながら、涙がぽろぽろと溢れだします。

こんな顔、ラルさまには絶対に見せられません。

自分の部屋に駆けり、ベッドに突っ伏しました。

「……っ……ううっ……うぅ……」

しゃくり上げる聲と鼻水で、自分でも何がどうなっているのかよくわかりません。

どうしてこんなに悲しいのか。

どうしてこんなに苦しいのか。

なにをすれば、この悲しみは、この苦しみは終わってくれるのか、見當もつきませんでした。

「――あーあ、もう、シーツがびちゃびちゃじゃねえか。後で洗濯しないとな」

「……え?」

顔を上げると、目の前にラルさまがいました。

「――っ!」

すぐに顔を下ろします。

こんな涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔なんて、ラルさまには見せられません。

「おいカタリナ」

「……な、なんですか?」

「お前、リビングに何か忘れてたけど、これもしかして、オレへのプレゼントか?」

ラルさまの手に握られているものを確認するために、しだけ顔を上げました。

「それは……っ」

ラルさまの手に握られていたのは、紛れもなく、カタリナがラルさまにプレゼントしようと思っていたもので。

「オレへのプレゼントなら、開けてもいいよな?」

そんなことを言って、ラルさまはプレゼントの包裝紙に手をかけました。

「やめて! 開けないで……っ」

でも、ラルさまはその手を緩めてはくれませんでした。

ビリビリと包裝紙を破――くかと思いきや、存外丁寧な手つきでぺりぺりと包裝紙をめくっていき、

「あー、やっぱりか」

ラルさまのそんな聲が聞こえた瞬間、恥ずかしくて死んでしまいそうでした。

薄目を開けて見たラルさまの手には、カタリナが編んだ靴下が握られていました。

「ラルさま、お願いですからそれを捨ててください」

「は? なんでオレのもんを捨てろって、お前に命令されなきゃいけねえんだ?」

しかしラルさまはカタリナの聲を無視して、なぜかカタリナのベッドへと腰掛けました。

そして今履いている靴と靴下をぐと、カタリナが作った靴下を履き始めました。

そして、

「あー。左右がちょっと揃ってねえな。それに糸もほつれてる」

「うぅ……」

自分でも自覚していて直せなかった部分を指摘されて、カタリナはまた泣きそうになります。

「でも、ありがとう。すごく嬉しいよ、カタリナ」

「――ふぇ?」

思わずから変な聲がれました。

ラルさまは、ベッドに腰掛けながらカタリナのほうを向くと、

「お前、プレゼントが母様と被ったからって遠慮したんだろ?」

「――っ!?」

心を言い當てられて、カタリナは驚きに目を丸くしました。

「どうして……」

「母様からプレゼントをけ取った後のカタリナの態度と、置き去りにされたプレゼントを見たら嫌でもピンとくるわ」

「あぅ……」

コツンと頭をつつかれて、カタリナは涙目になります。

あれ……?

カタリナは、いつの間に泣きやんだのでしょうか。

ゴシゴシとシーツで顔を拭いて、カタリナはラルさまのことを見つめます。

「まあたしかに、あれを見たあとにこれを出すのはカタリナにはちょっとキツかったよな。母様のはオレの目から見てもすごかったから」

カタリナの行に、ラルさまは怒ることなく同意を示してくれます。

正面からカタリナの靴下のほうが下手だと言われているにもかかわらず、全然嫌な気持ちはしません。

「でもな、お前にいくら捨てろって言われても、オレは絶対にこれを捨てない。なんでかわかるか?」

カタリナはふるふると首を橫に振りました。

どうしてラルさまがカタリナが編んだ靴下なんかを履いてくれるのか、見當もつきませんでした。

「この靴下にはな、お前の想いが詰まってるからだ」

「え?」

「そもそも、奴隷が主人の誕生日にプレゼントを用意する必要なんてないんだよ。それなのにわざわざこんなものまで用意してくれたってことはさ、それだけオレの誕生日を祝ってくれる気持ちがあったってことだろ?」

たしかに、カタリナはラルさまに誕生日をいっぱい楽しんでもらいたくて、頑張ってきました。

ラルさまの喜んでいる顔が見たくて、ラルさまに褒めてもらいたくて、それだけを考えて……。

「でも、それは當たり前のことなんです。ラルさまはカタリナにいっぱいのことをしてくれたんです」

奴隷として買い取ったカタリナに、付きっきりで勉強を教えてくれて。

カタリナが寢込んだときには、甲斐甲斐しく看病してくれて。

キアラさん以外は誰も知らない、ラルさまのを教えてくれて。

それ以外にも、數え切れないほどの思い出があって。

「いいんだよ、カタリナ。今はただ、オレからの謝の気持ちを大人しくけ取っとけ」

「でも……」

「でももへったくれもあるかよ。お前になんと言われようと、オレはずっと、今日貰ったこの靴下を大切にするからな」

どうして、この人はこんなに優しいんでしょうか。

どうして、この人を見ていると、カタリナの心は震えるのでしょうか。

「それと……ありがとう、カタリナ。オレのことをそんなに大切に想ってくれて」

そう言って、ラルさまがカタリナのことを抱きしめます。

最後の言葉は、ラルさまもしだけ顔を赤くしていました。

「……っ」

溫かなが、全れました。

心臓の鼓が、カタリナのほうにまで伝わってきます。

本能のままに、ラルさまの後ろに手を回しました。

近かったが、さらにきつく著します。

この覚は、前にもじたことがありました。

あれは、そう……ラルさまが自分のについて話してくださったときと、とてもよく似ています。

「…………ぁ」

その瞬間、ようやくカタリナは、この気持ちの正に気が付きました。

嫌でも、この気持ちに気付かずにはいられませんでした。

ああ、そっか。

カタリナは、ラルさまのことが好きなんだ。

「んっ――」

カタリナのことを抱きしめて、顔を赤くしたままのラルさまに、不意打ちでキスしました。

目の前にいるこの人が、おしくてたまりませんでした。

「ラルさまぁ……」

何も考えずに、しい人の名前を呼びました。

頭がぼーっとします。

の奧のほうが熱くなって、顔がぽっぽと火照っているのがわかりました。

それでも、カタリナはキスをやめません。

「ちょ、待ってくれカタリナ。まだ下にフレイズたちが――」

靜止の言葉は耳にりませんでした。

今、カタリナの世界にはラルさましかいませんでした。

ラルさましか見えません。

ラルさましか聞こえません。

ラルさましかじません。

だから、この言葉もの奧から自然に飛び出してきました。

「好き」

「――っ!!」

カタリナのその囁きは、ラルさまを揺させるのに十分だったようで、

「待てカタリナ。それはヤバい。オレの理なんだと思ってんの」

「ラルさまは、カタリナのこと好きじゃないんですか……?」

ラルさまは、しばらく口をパクパクさせていましたが、やがて観念したのか、その言葉を口にしました。

「好き……だよ」

「……ほんと?」

「噓ついてどうするんだよ」

もう一度、カタリナはラルさまにキスをしました。

何度しても、この気持ちを伝えられそうにありませんでした。

「ラルさまぁ……好きです……大好きですっ……」

「カタリナ……っ」

カタリナとラルさまはベッドの上で抱きしめ合って、ずっとそのままでした。

そして、お互いのに顔を近づけて――。

「はぁ……はぁ……ラルさまぁ……っ」

「カタリナ……カタリナ……」

……いつまでそうしていたのでしょうか。

汗まみれで絡み合っていたカタリナとラルさまは、部屋のドアが開いているのに気づきませんでした。

「……あー、うぉっほん」

ドアのほうからそんな聲がしたのは、カタリナとラルさまがお互いの耳を甘噛みし合っていた最中でした。

フレイズさまが、ドアの前に立っていました。

「と、とうさま!?」

これにはラルさまも相當慌てたようで、

「……ラル。そこに正座しなさい」

「はい」

ラルさまは俊敏なきで、ドアの前に正座しました。

ここまで素直に人の言う事を聞くラルさまを、カタリナは初めて見たかもしれません。

「いや、私も初めのほうは、奴隷なんて許せんと思っていたのだがな。今までのカタリナの様子を見て、考えを改めていたのだ。カタリナがこの上なく幸せそうだったからな。奴隷というものも、買う者の心次第でここまで違うものかと、逆に関心させられたものだ。正直に言ってしまえば、カタリナがこのままラルのことを好きになれば、そのまま仲になるのもいいのではないかと考えているとも。貴族同士の外聞はもちろんあるし、昔は私もヘレナも、ラルはどこかしらの貴族のお嬢さんと結婚させるのが妥當だと思っていたさ。だが、ラルがそれをまないでカタリナちゃんと添い遂げる覚悟があるのなら、私もヘレナも、ラルに何も言うつもりはなかった。二人の未來を応援するつもりだったさ。ただな、そういう関係になるにしても、いくらなんでも八歳は早すぎる。せめて十二歳を超えてからにしなさい。わかったか?」

「はい、わかりました。申し訳ありません。返す言葉もございません」

フレイズのまくし立てるような、しかし靜かなお説教に、ラルさまが平謝りしていました。

カタリナはそのまま眠ってしまったのですが、後でラルさまから聞いた話だと、フレイズさまのお説教は、朝日が昇るまで続いたそうです。

でも、朝までお説教されたラルさまには悪いですけど、カタリナはとても幸せでした。

ラルさまと両想いだとわかっただけで、フレイズさまにラルさまとの結婚まで認められていたというだけで、カタリナはもう天にも登る気持ちです。

……そんなふわふわした神狀態だったせいか、その日の翌日はお皿を何枚も割ってしまいました。

き、気をつけます……。

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