《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》模擬戦 鎖対鎖の大激突

なぜだろう? なぜだかわからない。

僕がシュット學園にってから6年間、彼は――――オム・オントは僕の事を嫌っていた。

僕は蛇やサソリの如く嫌われていたのだ。

だから、先生へ直訴したのだ。最後の模擬戦闘が行われる授業で戦わせてくれるように……

「オム・オントくんと最後に戦わせてください」

どうして、そんな事を言ったのか?自分でもよくわからない。

嫌われているから戦いたい?無茶苦茶だ。

何年も我慢していたんだ。殘り1年だ……あと1年で卒業だ。

それでいいじゃないか?一、どうして僕は彼と戦いたい思ったのか?

何か……こう……決著をつけたかったのかもしれない。

自分の中での決著を……

サンボル先生は、僕の気持ちを、どう解釈したのかわからない。

いとも簡単に、あっさりと、二つ返事で返ってきた。

「構いませんよ。それじゃ最後の校戦闘訓練は鎖の練習ですから、しっかりと予習をしてくるように」

それが2週間前の話。

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「さあ、サクラくん、こちらへ速く。速く」

先生の聲で、僕は正気に戻った。

渡された鎖を片腕に――――何重にもして巻き付ける。

『鎖

と言うのは、その名前の通りに鎖を武にして戦う技だ。

僕は腕に鎖を巻き終えた。

鎖を巻き付けた片腕を盾にして、もう一本の手で鎖を回す。

ジャラジャラと金屬音が徐々に————

ふおぉん ふおぉん ふおぉん

回転數が増えると音が変わった。唸るような音だ。

高速で回転させた鎖は、接近戦では鈍のような破壊力になり、また距離が離れた相手にも投擲による攻撃が可能だ。

毎日練習した。

毎日……毎日だ。

「へぇ~」と呟きが聞こえた。その聲の主、オントへ目を向ける。

冷たい目だった。嫌悪がにじみ出ているように見える。

「それなりに努力はしたみたいだな……けれどもな、サクラ……俺は認めない」

「……なに…を?」

「俺はお前の努力を認めない。お前が俺に勝ったとしても認めない。お前の努力は無駄な努力だ」

「―――――ッ!」

僕は言葉に詰まった。

彼の冷たい目には、侮辱が含まれていた。

「はいはい、そこまで。オントくんもサクラくんも熱くならないで。あくまで模擬戦ですよ」

サンボル先生が間に割ってってきた。

そのまま「はい、それじゃ、始めますよ」と開始の合図を――――

「え?あっ!」

「ちょっと、ま……」

僕とオントは、互いに構える間もなく――――

「はじめ!」

試合開始を宣言された。

じりっ―――― じりっ――――

オントはしづつ、距離を詰めてくる。

威圧

すさまじい威圧が僕を襲う。

下がりたい。けど、下がると同時に一気に距離を詰められてパワー勝負に移行させられる。

そうなったら、僕に勝ち目はない。

なんせ、オントは魔を素手で抑えて、捕縛する事が出來る。

そういう腕力の持ち主だ。

ゆっくりと時間が過ぎていく。我慢比べの戦い。まるで無限に続く時間の中にいるみたいだ。

しかし、時間は有限。僕とオントの間合いは――――

互いに攻撃が可能な間合いにった。

ファーストコンタクト。

先にくのは當然————

オントの方。

上から下へ。まるで袈裟切りのように鎖を振るう。

剛腕

全てが込められているような一撃。

基本は、できるだけ最小のきで避け、カウンターを狙う。

けれども、僕は、その基本に逆らった。

オントから見て右側———— 左へ大きく逃げる。

オントの一撃は空振り、鎖は地面に叩き付けられた。

その衝撃はすさまじい。砂が舞い上がり、石礫いしつぶてが周囲に飛び散る。

舞い上がる砂煙を切り裂いて、僕に向かって飛來してくるがある。

オントの鎖だ。

(読まれた!?)

地面へ著弾と同時に手首のスナップを効かせ、逃げる僕のきに合わせるよう、鎖をったのだ。

橫薙ぎの一撃。それを僕は、右腕で防ぐ。

けど―———

「————痛っ!?」

ダメージを軽減する事はできたが……

それでも痛みに襲われる。

大きく橫に飛んでいたから防げた。もしも、セオリー通りにカウンターを狙っていたら……

それで終わっていたかもしれない。

僕は、さらに橫へ飛んで間合いを広げた。追撃は來ない。

オントは、小首をかしげて不思議そうな表を浮かべていたのだ。

たぶん、他のクラスメイト達―――中でも鎖が得意な生徒たちも、さっきの攻防に違和があったらしく、小さなざわめきが起きた。

でも、僕の作戦に正確に気がついた人は、近くにいて、戦いを客観的に見えるサンボル先生しかいなかったみたいだ。

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