《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》束の間の日常

「疲れた~」

學生寮に戻った僕は、そのまま自室のベットへ倒れ込んだ。

シュット學園は6才から15才までの全寮制だ。

あの後、勝利の余韻に浸る間もなく、ボロボロで疲労が蓄積されたのまま、殘りの授業をけていた。

背後から、オントの視線がチクチクとじられて酷く居心地の悪い狀態だった。それも疲労困憊に一役買っているのかもしれない。

「寢る前に服くらい著換えろよな」

そう言ったのは、同居人ルームメイトのケンシ。

エシュック・ケンシ。

ケンシは『剣を扱う者』という意味だ。

彼の両親は、一流の剣士になってもらいたいと気持ちを込めてつけた名前らしいが……

彼は、それに反発するように魔法に沒頭している。

青い髪が特徴的だけど、もちろん地ではない。

僕は、白髪でもないのに髪を染めている人間を彼以外に見た事はない。

なんでも、い頃に助けられた命の恩人が青髪だったとか……

僕は疲労に包まれ、ふらふらするを起こす。

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思い返せば、オントに勝てたのは彼のおかげもある。

ここ、しばらく、彼に取っても得意じゃない鎖の練習に付き合ってくれたのだ。

僕は謝の言葉を伝える。

「ありがとうな。おかげで勝てたよ。見ての通りにボロボロだけどな」

ケンシは、一瞬、驚きの表を見せたかと思うと、すぐに顔を背けた。

それでも頬に赤みがさしているのは分かった。

ケンシは、なんというか…… こういう良い奴なんだ。

「まぁ、そりゃどうも……けど」

「……けど?」

「俺よりも先に禮を言うべき人がいるんじゃねぇの?男さんよ」

「……」

彼は良い奴なんだ。

ただ、他人から良い人と思われたくないらしく、こういう悪ぶった態度を演出する。

……うん。

ケンシはベットの奧に手を突っ込み、奧に隠してあった鎖を取り出す。

僕のと合わせて2つの鎖。 訓練用の鎖だ。

それを手にして僕へ渡す。

「ほら、行って來いよ。子寮の館許可が可能な時間まで、あと2時間くらいしかねぇぞ?」

「何も今日、行かなくても……」

「いやいや、こういうのは當日に報告する事が重要なんだよ。一刻も早く、伝えに參りました……ってな!」

渋る僕をケンシは笑い飛ばした。仕方なく、ケンシから鎖をけ取る。

け取ってから気がついた事がある。

「あれ?なんか綺麗になってないか?」

毎日の練習で泥がこびりついていたはずが……

今は銀の輝き。部屋のが反している。

「あぁ、掃除はしておいてやったぞ。錆止めにオイルもさしてある。借りた時よりも綺麗に……普通の事だろ?」

いや、普通の事ではないと思う。

本當に気がつく、良い奴なんだよ……

室は許可します。ただし室が認められるのは、後1時間49分です。この時間を超えると罰則をける事になるので、注意するように」

僕は、できるだけ素直な印象になるように、爽やかさを意識しながら「はい」と返事を返した。

子寮付の寮長さんは、メガネをらせると無言で頷いた。

噂だと……

あの寮長さん、元々は殺しを生業にしてる暗殺者だったらしい。

探索者を育する、この學園を崩壊させるために他國から送り込まれた結果、なんだかんだで落ち著いたらしい。

無茶苦茶な話だけれども、學園の噂話なんてこんなもんだ。

ただ、貴族も平民も、探索者になるべき教育を平等にけれる場所であると同時に、世間から隔離されている特殊な場所でもある。

剣呑な噂話は100を超え、そのうちの1割くらいは実際の話じゃないかと言われている。

「さて……」と僕はため息じりの獨り言を呟く。

気が重い。當たり前だけれども子寮は、ほとんどだ。

の子と、すれ違うたびに視線がじられる。 なんだか、観察されているような覚だ。

「けど、気が重い理由はそれだけじゃないんだよなぁ」

目的の部屋に到著した。

コンコンと軽めのノック。 できれば留守であってほしい。そんなみは――――

「は~い」と明るい聲で斷たれた。

ドアが開いて出て來たのは、クラスメイトのだった。

誰に対しても天真爛漫な笑顔を振りまく彼――――ラン・サヲリだ。

「あれれ?誰かと思ったらサクラくんじゃない!凄かったね!今日の模擬戦!」

「あぁ、えっと……ありがとう」

「ありがとう?お禮を言うのはこっちの方だよ。凄い戦闘を見れて眼福眼福ってやつだね!」

「う、うん……」

は終始、こんなじだ。常にテンションが高めで、話を始めれば止まらない系子。

けれども、僕が合いに來たのは彼ではない。 僕の用事は、彼の同居人ルームメイトにある。

「それからね!それから……」

「いや、ちょっと待って!」

の話を強引に止めた。こうしなければ、いつまでたっても本題にたどり著けそうになかったからだ。

「ん?ん?あーそうか!サヲリさん、勘付いちゃったよ!用事があるのは姫の方だね!ちょっと待っててよ!すぐ呼んでくるね!」

僕の返事を聞く間もなく、バン!と勢いよくドアが閉められた。

次にドアが開くと、小さなが立っていた。

小さな――――彼に僕は會いに來たのだ。

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