《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》される者には殺意がよく似合う

「會いに來てくれたのですね、サクラ様」

は頬赤く染めて、駆け寄ってくる。

の名前はアリス――――トクラター・アリス

「……あぁ、えっと」と僕は言葉に詰まる。

すると、部屋の中に戻ったサヲリが僕の手を摑み、強引に室に招きれる。

「なにを!?」と僕の抗議を、サヲリは早口でかき消した。

「あぁ、ごめん!気が回らなくてごめんよ!サヲリお姉さんはお邪魔でしたね!ではでは!アリス姫はサクラお兄ちゃんに可がってもらいなさい!」

サヲリは、一気に言葉を捲し立てると次の瞬間には、部屋の外へ飛び出していた。

その言葉は、臺風のように暴れて、去ってしまうと靜寂が支配する。

まるで音が死んだみたいだ。

する僕に対して、靜けさの中、確かに聞こえた。

アリスの「……はい」という小さな、しかし力強い返事を

トクラター・アリスは正真正銘の貴族である。

言い方は悪いけれど、オントのように探索者からりあがったダンジョン貴族とは違う。

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貴族とは、國家における文化の守護者。

國の輸輸出の貿易などを司るため、一時の利益に流されぬ高い倫理観と道徳心を必要とする人種。

それが貴族である。

その貴族において、トクラター家は特別を意味している。

アリスの母親は降嫁――――つまりは舊王族から民間へ嫁りした人だ。

先代の王弟の子供であり、かつては王位継承権も持っていたらしい。

つまり、王族に対して、最も強い影響力を持つ貴族になる。

あくまで、継承権を持っていたのは、『かつて』であり、サヲリがアリスの事を『姫』と呼んでいるのは言葉のあや的なものである。

そんな彼は、僕にこう言った。

「二人きりですね」

「あぁ」と僕は答える。

恐怖から、背筋が凍りつく。それを彼に気づかれてはならない。

できるだけ平常心を常に…… 先手必勝。彼が、何かを言う前に……

背負っていたバックパックから、鎖を取り出す。

訓練用の鎖だ。それを彼に渡し、セリフを添える。

「勝てたよ。君のおかげで」

歯が浮くような言葉。訓練されたとは言え、こんなにも自然に発せられるようになった自分に驚く。

一方、アリスは赤く染まり切った頬を両手で隠すような仕草。

「そんな……私なんか……全てはサクラさまの実力です」

の照れた表に、僕の心拍數が急上昇しているのが覚としてわかる。

同時に死の気配が、濃度を高めていく。

僕とオントの確執。

それを知った彼が訓練用の鎖を2つ用意してくれたのだ。

差し上げますという彼の言葉を辭退して、借りけるという約束にしていた。

訓練用の鎖。実は戦闘で使用される鎖よりも高価だったりもする。

なんせ、學生同士が本気でぶつけ合っても――――人に対する衝撃を、限りなく皆無へ近くづける魔法が、いくつも仕掛けれている。

現に、空中で急加速した人間の攻撃を元にけたオントは、醫務室に行く事もなく、普通にその後の授業をけていた。

「それではお暇させていただきます」

180度ターンを決め、僕はドアに手をばし、退室しようとする。

來たばかりではあるが、の部屋に長居するのはよくない。自分のためにも……

しかし――――

「お待ちください!」

僕はきを止めた。彼の小さな手が、僕の服を摘まんでいた。

膨大な殺意が僕へ降り注がれ、脳から過剰な危険信號が警告を鳴らす。

今……死が近づいている。

そんな風に、僕が死期の訪れを迎えているとは、彼は気がつく事はない。

「サクラ様、お慕い申しております……いえ、自分のに噓はつけませぬ……私は……」

そんな彼に、僕は……

(嗚呼、死んだな、これは……)

しかし、死の直前に迎える集中力。 著火を迎えたか如くの熱を持って脳がフル稼働を開始する。

振り返った僕は、張で強張っているであろう顔を無理やりほぐし、笑みを作り上げる。

発する聲は低過ぎず、高過ぎず、聞く者に心地よさをじさせるブルースカイのイメージ。

一瞬の停止。次に笑みを崩し、真摯な表を構築させる。

そして――――

「アリス、それ以上はいけない。きっと、僕が貴方に相応しい男に……いえ、貴族になってみせましょう。その時は必ず、貴方の元へ……」

僕は最後まで述べることなく、部屋から飛び出した。

そう、飛び出した。彼アリスを振り切り、背後の扉が閉まり切って、彼アリスの視界から逃げきった事を確認してもなお……

決して広くない通路を人目を気にする事もなく……

全力疾走で駆け抜けた。

あらゆるから逃避が功する事を神さまに願いながら……

一気の子寮を抜け出し、足を止める事もなく、そのまま男子寮へ――――

逃げ込む!

その願いは葉わなかった。

一瞬の浮遊。誰かが背後から僕の首を摑み取り――――そのまま地面へ。

「————うわぁ!?」

叩き付けられた。しかし、衝撃もダメージもない。 僕は背中から地面へ衝突したはずなのだが……

いはずの地面は、まるで羽で作られた布のように優しげですらあった。

、どんな技を使われたのか? 見當もつかない。

気がついた次の瞬間には、僕は自分の両足で立ち上がっていた。

目の前には、その技を仕掛けた人がいる。

その人は、ついさっき部屋で別れたはずの彼……

そう、彼――――その人の名前は……

ラン・サヲリだった。

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