「あー　ではでは、今日からダンジョンでの実地訓練を開始します」

サンボル先生の気の抜けたような聲とは、真逆に僕は張していた。

いや、僕だけではないだろう。見渡せば、周囲のクラスメイトも、一斉に強張った表をしていた。

僕らの9年間の學習。それらの多くは、このダンジョンを攻めるためのものだった。

例え、低層でも油斷をすれば命を奪われかねない。

そんな僕らの心を知ってか知らずか————

「それではついて來てください」

サンボル先生は飄々とした態度でダンジョンへ歩き始めた。

そして到著。

サンボル先生はバックパックを背中から下ろし、中から球を取り出す。

ダンジョンの結界を解除する鍵――――魔石だ。

先生はダンジョンのり口で魔石をかざす。

不可視の結界かられをじられる。

「では、これよりダンジョン探索を行います。今日は1層を回るだけです。みなさんの実力では足りないとじるかもしれませんが、最初なので軽めに行きますよ」

僕らは先生の後を付いて歩き出した。

「暗いなぁ」と誰かが呟いた。

ダンジョンの中は薄暗い。そして、薄らと寒さをじる。

源になるのは油を染み込ませた松明。あるいは魔法を込められた魔石が浮かんでいる。

100層まで、先駆者が源となる仕掛けを殘している。

僅かでもは心に安堵を持たせてくれる。　それでも、僕は背中に回した短剣の柄に手をばしていた。それを隣のケンシに指摘され、し恥ずかしかった。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「魔、出てこないなぁ」

僕はケンシに話しかけた。

ケンシは―———

「まぁ、1層だからな。こんなもんじゃないか？」

もう歩き始めてから20分経過している。

30人の集団で進んでいるためだろうか？　魔は襲ってこなかった。

このまま、魔と遭遇する事がなく、終わって――――

「きゃあああああああああああああああああああ！？」

切り裂くような甲高い聲、悲鳴が後ろへ上がる。

それに驚き、聲の方向を振りむく。

「魔が現れた！」

そう言った容の言葉が背後へ飛びっている。

パニック……後方では混が起きている。

どうすれば……　僕の頭も混が起きる。

そんな僕の橫――――　風が通り過ぎていった。

黒い影。その正は――――

サンボル先生だった。

速い。

普段、気が抜けているような口調で、間が抜けてるような失敗が多い。

そんな先生のイメージは一瞬でされる。　本來の実力――――國家が認める探索者。

その姿を現した。

最前列から最後尾へ。一瞬で到達する。

現れた魔は、薄く明で半化している生。

スライムだ。

數ある魔の中で最弱と言われる存在だが……

時として天井へ張り付き、生きる罠となる。油斷した探索者へ落下して、頭に張り張り付き呼吸を阻害し、やがて殺害へ至る。

実際に、スライムはクラスメイトの顔を覆っている。

サンボル先生は剣を抜き、その生徒クラスメイトの顔を突く。正確には、顔に張り付いたスライムだ。當然、クラスメイトの顔にまで屆いていない。寸止め狀態。

サンボル先生は、手首を回して剣の柄をかす。

そうやって、スライムを剣に巻き付けて――――素早く剣を上へ跳ね上げた。

それは、まるで釣り。

餌に食いついた魚を、その瞬間に釣り上げる技を思い浮かべた。

空に舞うスライム。その落下に合わせ、先生の剣技が宙を走った。

スライムのに線が通り、地面へ落ちた時には２つに分かれていた。

「はい、みなさん。落ちついてください。　1層で出現する魔の対処法は學習済み……というよりも基礎中の基礎です。　次は皆さんだけで対処してくださいね」

その言葉を聞いて、僕は天井を見た。

どうか、僕に向かって落下してきませんように……

顔を上から戻すと、周囲のみんなも天井を見上げていた。

その事があってから、急にクラスメイトの警戒心が増して行く。

そんな中――――　僕は攫われた。

まず、口が覆われた。

（スライム！？）

僕は反的に短剣を抜こうとする。しかし、その手が押さえつけれた。

（に、人間！）

そこで初めて、人間に襲われているという事実に気がつく。

背後から口を押えられ、手首を摑まれた。

そのまま、ソイツは僕のを持ち上げ、背後へ――――　音もなく飛んだ。

遠ざかっていくクラスメイト達の後ろ姿。誰も僕に気づく様子がない。

そのまま、大通りから脇道へ連れ去られる。

僕は、その場所を記憶から引き出す。　この場所は――――

先は行き止まり。背後には崖になっている。

僕は、その場所で束縛を解かれた。

そして、その人――――　僕を攫った人間の顔を見た。

ソイツは……

オム・オント

彼は、僕に対して鋭い視線を向けていた。