《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》新友? そしてバックアタックは突然に!?
僕の脳に瞬時に言葉が浮かび上がる。
 
  (こ、殺される!)
薄暗いダンジョンの中、クラスメイト達に気づかれずに、の自由を奪われ、連れてこられた場所は、人気のない行き止まり……
背後は斷崖絶壁。逃げ場などはない。
唯一の道は、オントが陣取っている正面のみ。
絶好のシュチエーションだ。
なんの? 決まっている。誰にも気づかれずに僕を殺すためのだ。
しかし、それと同時に――――
(いやいや)
と否定している僕も存在している。
いくらなんでも……クラスメイトだよ?
決闘って言っても、ほら…… 雰囲気が悪いクラスメイトと仲良くする切っ掛け作りだろ?
それなのに……それで……殺し合い? いや、この場合だと一方的に殺されるのは僕の方で……
ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ……
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え?なんの音?
今まで気がつかなかったほどの小さな音。
しかし、一度でも、気がついてしまうと、とても無視できない異音が連続して聞こえてくる。
どこから?
……あっ!? わかった。
これは、歯の音だ。 僕の歯から聞こえてきている。
ガチガチと、歯と歯がぶつかりあって音が聞こえているのだ。
が恐怖に震えて……
ガチッ!
勢いよく歯を食いしばる。
ほんの一滴適度の勇気をに――――震えをかき消す。
僕には憧れがある。
英雄譚に登場する主人公達。 彼らのように、僕も――――ダンジョンを突き進むのだ。
だから――――だから、こんな場所で死んでやるわけにはいかない。
背の短剣に手をばす。
不思議と心が落ち著いていく。
僕は、自然と大きく一歩。前へ踏み出す。
ピタッ!
しかし、僕のきは止められた。
止めたのはオントだ。 僕のに何かをした――――わけではない。
前に行く僕に向けて、手の平を向けた。ただ、それだけだ。
待てのポーズ。
ただ、それだけ……だが、前に進もうとする僕に対して絶妙なタイミングで、待てをかけたのだ。
事実……結果として、それだけで僕のきを止めている。
そして、無言を貫いていたオントの口がついに開いた。
その言葉は意外にも――――
「待て、何かお前……壯絶な勘違いをしていないか?」
というものだった。
「か、勘違い? ……どこが!」
僕は語尾を荒げた。
しかし、オントは自の言葉を証明するかのように、腰から剣を外し地面へ置いた。
両手は、そのまま無抵抗を意味するように、手の平を広げてこちらに見せる。
「爭うつもりはない」
その言葉を聞いて、から力が抜けた。
もしも、オントの目的が、そこにあるなら、僕は骸に早変わりしていたのだろうけど……
彼の言う通り、本當に爭うつもりはないみたいだ。
  暫くして、僕はオントへ質問した。
「どうしてこんな事を?」
誰だって疑問に思う、至極真っ當な質問だろう。
しかし、オントは腕を組み、難しい顔をして空を見上げる。
彼にとっては難しい質問のようだ。
やがて――――オントは言った。
「お前と2人で話てみたかった。あと謝りたかった。あとは、なんだろうな……」
「話してみたかった? それ、あんなことを?」
集団でいる所から、僕だけを拉致したのか? それも、この場所……ダンジョンで?
「アハッ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……」
僕は思わず、笑った。笑い転げた。
もしも、背後が斷崖絶壁じゃなかったら、その場で寢転んでお腹を抱えて暴れてたに違いない。
「なんだよ。笑ってんじゃねーよ」
オントは不機嫌そうな顔を見せるも、すぐに彼も笑い始めた。
無茶苦茶だ。 初めてのダンジョン探索の日に、話してみたいからって……
笑ってしまうくらい無茶苦茶だ。僕はてっきり……
オントは酷く真面目で、こんな無茶はしない―――――面白味がない奴だと勘違いしていた。
そんな勘違いをしていた自分をぶん毆ってやりたい。 本気で、そう思うほどオントは愉快な奴じゃないか。
「あー 笑った」と僕。
あまりの笑いに両目から溢れた涙を指でふき取る。
そのまま、こう言葉を続ける。
「そう言えば、僕らってなんで互いを嫌ってたんだったけ?」
「お前そりゃ……」とオントは答えかけた言葉を止めた。
「そりゃ……いろいろ理由はあったけど、イチイチ思い出すのも、今となったら無意味だろ?」
そう言って、彼は右手を差し出した。
握手の合図だ。
挨拶として使われる作法だが、仲直りや謝をして使われる作。
僕は、彼の右手を握り返した。
彼は笑った。 僕も笑った。
しかし―――― 僕は見た。
彼の背後から迫って來ている魔の姿を―――――
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