《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》奇襲 じるは確かなる死
オントの背後を狙って襲い掛かってくる魔。
それを確認した僕は――――
「危ない!」
とぶと同時に、オントとわした固い握手を解き、
たんっ!
と両足で大地を蹴った。
視線からり込んでくる報量。 授業で習った記憶が呼び起こされる。
魔の正は————
大コウモリ
1層最強の魔と言われている。
天敵がいない1層に住み著いたのが原因でが巨大化したと言われている。
大きさは僕の長の半分くらいだ。 まん丸な……過剰な栄養摂取による満。
羽は退化して、自力で飛ぶ事はできなくなっている。
退化した羽と足を使い、用にも高所に登り、落下して獲へ襲い掛かってくる。
避けられ、地面に墜落してもゴム毬のように跳ね上り、敵との距離を取って撤退する。
攻撃を行う箇所は、申し訳程度に生えている牙と退化した羽の端にある爪。
それ自に高い攻撃力はないが、大量の雑菌が発生しており、傷を負ったまま放置していくとの壊死へ繋がる。
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そんな魔が相手。
僕は恐れを忘れ、背後の短剣を抜き、魔へ剣先を向ける。
しかし――――
「ぐげぇっ!」と僕の口かられた音はカエルが潰される瞬間に上げる鳴き聲みたいだった。
何者かが、僕の背後から首っこを摑んだのだ。
全力で飛び出した僕のを、それだけで停止させる。そして、背後の人は、こう言った。
「おいおい、誰を庇ってるんだ? 俺の名前は―――― オム・オントだぜ?」
オントは、僕を引き留めたかと思うと、一瞬で僕のが移させられる。
オントと僕、互いの立ち位置が換させられた。
でも――――
「ダメだ。君の武は――――まだ!」
僕はんだ。
オントは、僕との會話をわすため、武裝を解除している。
彼の剣は、今も地面に置かれているまま――――つまり、今のオントは無手だ。
しかし、次の景は、僕に取って信じられないものだった。
「オラッ!」
オントは裂帛の気合を上げ、固めた拳を大コウモリへ叩き込んでいた。
い同士がぶつかり合ったような音が鳴り、大コウモリは吹き飛んで行った。
信じられない!
高所から飛び降りても、ダメージを負わないはずの魔が、明らかな打撃音をあげて吹き飛ばされていったんだから……
「なんで?」と僕は思わず呟いた。
唖然とする僕はオントは
「コツがあるんだよ。 弾力があるでも爪や牙があるんだから、打撃が有効な場所もあってだな。そこへコイツを叩き込んだ」
オントは、自慢するかのように自の拳を見せつけた。
見せつけながらも「後で教えてやるよ」と照れるように言葉を付け加えた。
「やっぱり、君は凄いなぁ」と、つい本音がポロリと零れ落ちる。
「ヘッ その俺に勝った奴が何言ってやがるよ」
オントはそう言うけど、僕は首を橫に振って否定する。
あれは、あの戦いは、決闘ではなく、殺し合いでもなく……ひょっとしたら試合ですらなかったかもしれない。
だから、僕でも勝つ事が出來たのだと。そう伝えた。
オントは「お前は、ゴチャゴチャと考えすぎだ」と苦笑を浮かべた。
そうして……
僕の脳は、全ての思考を破棄した。
そうして出た言葉は今日、二度目のび聲。
「危ない!」
オントを強く突き飛ばす。
彼がいた場所へ、高速で通過する存在があった。
新たな魔。 二匹目の大コウモリ。
次の瞬間――――
僕がじたのは強い衝撃。そして、次にじたのは激しい痛み。最後にじたのは浮遊。
大コウモリの當たりを、まともに喰らってしまった。
視線の先、弾き飛ばされる方向には――――
斷崖絶壁。
次に見えたのは、手をばし、飛びつくような姿勢でこちらに向かって來るオントの姿。
僕は、彼がばし手を握り返そうと、手をばす。
しかし、互いの手は重なり合う事は葉わなかった。
落下。 地面が見えぬ奈落へ。
死――――
じるのは逃げようのない――――
確かなる死だった。
最後に見たのはオントの表。 絶に染められた表だった。
そして、最後に聞いた音が彼の聲。
「だから、なんでお前が俺を庇うんだ! 逆だろうが! 馬鹿野郎おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
それは雄たけびのようで、悲痛なびだった。
きっと彼には聞こえない。けど――――
「ごめん」と僕は呟いた。
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