《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》決闘の停止 オーク王の

狂気。決闘から毆り合いへ……

目を背けてしまうほど野蠻で、原始的な戦い。

それでも、どうしようもなく引き付けられるソレ。

やがて、2人の人間から広がった熱量は、観客へ伝染し、熱意は狂気へ変貌を遂げた。

誰もが自を外へ――――表現しようと雄たけびを上げる。

を揺さぶり、リズミカルに地面を踏みしめる。 腕を振り上げ2人を稱える。

観客から、中心で戦う2人に向けられた熱量は、力となっているのか?それとも枷となっているのか?

それはわからない。 おそらく、戦っている2人にもわからないだろう。

ゴドーの拳がオントの顔面を捉えた。

打たれた頭部が回り、首が可域ギリギリまで捻じられる。

まるで下半が消滅したかのように上半が下がっていく。

(クリーンヒット!ダウンか!)

しかし、僕の予想は外れた。

オントは、片足を前に出してダウンを拒否する。

そこにゴドーの追撃。 膝を屈めた勢のオントへ向かって、上から振り下ろし気味の一撃を放つ。

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だが、當たらない。 むしろ、當たったのオントの拳だった。

カウンター一閃

顔面を打ち抜かれたゴドーが一歩、二歩と後ろへ下がっていく。

今度はオントが追撃を放つ番だ。

2本の腕が唸りを上げてゴドーへ向かっていく。

対してゴドーも勢を直して迎え撃つ。

―――數瞬後に迎える決著―――

だが————

両者は、時が止まったかのようにきを止めた。

観客は、何が起きたのかわからない。 僕もわからなかった。

もしかしたら、闘爭によって極限まで研ぎ澄まされた覚が察知したのかもしれない。

……? 何を?

それが理解できたのは次の瞬間だった。

ざわつき始めた観客を聲を切り裂き、咆哮が響く。

「ウゥウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

の奧底から、強制的に恐怖心を引き出す音。

とても、生から出されている雄たけびとは思えない。

やがて咆哮は、音から理的な衝撃へ変化していく。

空気の塊が次々に観客たちにぶつけられる。

何が來た?

攻撃は下の階層へ続く通路から……

その通路がぜた。 そして、現れたのは――――

「……オーク王」

誰かがそう言った。

オーク王。 30層の主ボス。

隆起した筋。その上に張られた緑の皮

野生的な豚を想像させる醜い顔。

的には、通常のオークと言われる亜人系魔と同一種と言われているのだが……

その最大の特徴は大きさにあった。

通常のオークと比べ、その大きさは2倍から3倍。 高さだけで言うならば、一軒家と同等サイズ。

がデカい。 単純にそれだけで驚異的な戦闘力を保有している。

しかし、なぜ、30層の主が10層に?

「ウオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

そんな疑問もオーク王が放つ二度目の咆哮で吹き飛ばされた。

観客たちは、非日常的な出來事による衝撃から冷靜さを取り戻し……そして、當たり前のように錯した。

パニックだ。

「逃げろぉ!」

誰かのび聲と共に、悲鳴が上がる。

全員が上層へ続く通路へ駆け出した。

僕とサヲリは走っていた。出口ではなく、オントの元へ。

オントとゴドーの両者は毆り合いを止め、オーク王の方を見ている。

すぐに避難しないのは、に蓄積された疲労とダメージのためだろう。

事実、僕がオントへ聲をかけると、オントは前のめりに倒れそうになった。

それを慌ててけ止める。

「……どうすんだよ?これ?」

オントの口かられた言葉は、先ほどの激戦からは想像できないほど弱々しい言葉だった。

阿鼻喚。 単純な暴力ともいえるオーク王の攻撃に人が飛んでいる。

「コロロアコロ様……くっ」

ゴドーの視線は天蓋の下で怯え、けなくなっている年に向く。

彼を救うためにき始める。 に纏わりついたスライムを煩わしいと言わんばかりに、真っ直ぐばした指先で――――手刀を放つ。 ナイフでスライムを切り取る基本作の如く、素手でスライムを切り取っていく。全てのスライムを取り除くと、同時に駆け出していった。

「……アイツ、その気になれば、簡単に取れたのかよ」

オントの不満げな聲だった。

「とにかく、避難を」とサヲリもオントへ肩を貸し、歩き始める。

避難?どこに? 頭で思っても言葉にできなかった。

口には人が殺到して、渋滯狀態。 簡単には出不可能。

とにかく、オーク王からしでも離れないと――――

しかし――――

振り返りオーク王の様子を確認する。

(目が合った!)

新しい獲を発見したかのように舌なめずりをしている姿を見てしまった。

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