《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》向かう影 さらなる敵と絶
  
 僕は再び、背後を振り向く。
(!? 近づいている)
僕とサヲリは、二人掛かりでオントに肩を貸して、逃げる。
対して、オーク王は余裕を見せながら、ゆったりと歩いている。
……!? 歩幅が違い過ぎる!?
僕らが必死になって距離を稼いでも、オーク王の數歩で追いついてくる。
「……俺を置いて行けよ」
オントが弱々しく呟いた。
僕とサヲリは無言だった。無言で、オントに肩を貸して進む。
ここで、「お前を置いていけるか!」なんて言えればカッコイイだろう。
けど、考えてしまう。 考えてしまったんだ。確かにオントを置いて行けば、助かる確率は上がる……そんな事を。
だから、僕らはオントの呟きに答えず、ただ無言で進む。
オントを助けると斷言できず、オントを見捨てる事もできずに。
やがて――――
僕らの足元が黒く染まる。それは、オーク王の影だ。
上を見上げると巨大な足が見えた。
この階層に來るまで、多くの小型魔の存在に気がつかず、踏みつぶしてきたのだろう。
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オーク王の足裏は、わりとグロテスクな事になっていた。
そんな、場違いな想を―――― 死に間際に――――
破壊音。 衝撃。 風。 土煙。 悪臭。
何が起きた?
僕らに向けて、振り下ろされるはずだったオーク王の足は、そこにない。
「速く、こちらへ!」
聲がした。 巻き上がっている土煙で、聲の主が誰かまでは分からない。
僕らは聲の方向へ急いだ。
やがて土煙は薄れて、人のシルエットが浮かびあがる。
その正はサンボル先生だった。 いや、もう1人……キク先生もいる。
たぶん、サンボル先生か、あるいはキク先生の攻撃魔法がオーク王に直撃させたのだろう。
僕はオーク王がいたはずの場所へ目を向ける。
今も煙が……
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」
雄たけび。
雄たけびから発せられる空気の排出で、周囲の煙が四散した。
再び姿を表せるオーク王。
攻撃をけた後だろうか? 顔の一部が黒く変している。
確かに先生の攻撃はオーク王にダメージを與えたのだろう。
そして、それがオーク王に怒りを植え付けていた。
その表には、人間のモノと同等の怒りが湧いているのがわかる。
「キク先生……生徒を優先してください」
「……わかりました。サンボル先生は?」
「殿しんがりを務めます。普段使いの武裝で、どのくらい持つかは分かりませんが……」
そう言うと同時にサンボル先生はオーク王へ向かって駆け出していた。
サンボル先生は速かった。 一瞬でオーク王との間合いを詰めて、剣を抜く。
抜くと言う作が、そのまま攻撃のモーションへ繋がる抜刀。
鮮やかな剣捌きがオーク王の足を切りつけていく。
痛みからか? オーク王が何度目かの咆哮を上げる。
衝撃が付加された聲をサンボル先生は至近距離でけている。
そのはずだが――――サンボル先生の速度は落ちない。
オーク王の拳がサンボル先生に向けて振り落される。
回避。 サンボル先生には當たらない。
しかし、オーク王の攻撃は、ただ単純に拳を振り下ろしているだけではない。
拳が地面と接した直後、大量の石礫が周囲にばら撒かれている。
サンボル先生であっても、それらの全てを回避や防する事は不可能だろう。
ただ、サンボル先生は仰け反らない。 石礫の攻撃をけても、きをさずに攻撃を仕掛け続けている。
「凄い」
そう言ったのは、僕らので誰だったのだろう?
僕らは撤退しながらも、サンボル先生の戦いから目が離せないでいた。
「早く、こっちへ來い」
キク先生が避難を促す。 しかし、その聲には焦りがあった。
「このまま、サンボル先生がオーク王を倒すんじゃないですか?」
そう言ったのは、集まってきた生徒の1人だった。
そして、僕もその意見に賛だ。しかし――――
「いいや、無理だ」とキク先生は悲愴な表で答えた。
 「いくら、サンボルが強くても、対ボス用の裝備もなく、1人で戦い続ける事は不可能だ。回復薬もなし、防はオーク王の一撃にすら耐えきれない。……やがて、武の耐久度も限界を迎える」
騒めきが起き、恐怖が生まれる。
そして、その恐怖は人に失敗を犯させる。
「に、逃げないとおぉぉぉぉ!」
「馬鹿、出口は人間が殺到しているぞ、あそこからは逃げられない」
「……そうだ!下だ! 上の道が詰まっているなら下へ行けばいい」
「なるほど、11層程度なら、俺たちでも大丈夫なはずだ」
ぶような會話。 正常な判斷能力を欠いた狀態で、それが正解のように聞こえ――――
まるで、何かに扇されたかのように、生徒たちは走り出した。
キク先生が発した靜止の聲を聴かずに……
「行くな!行くんじゃない!」
僕は迷った。生徒たちは下層に向けて駆け出している。
僕も、その中へ紛れる事が正解だと思った。
けど、それなら、どうしてキク先生は止めてるのか?
その答えは、新たな悲鳴が伝えてくれた。
「うわぁ!オークだ。下層から大量のオークが向かってきてるぞ!」
下層へのり口。
多くの生徒たちが向かって行った、そこから、今度は生徒たちが戻ってくる。
いや、生徒たちだけでなかった。
そこからは、オーク王と同様の姿かたちをした、亜人系魔が現れていた。
「當たり前だ。王が1人で上するものか……戦場で先陣を切り開く王はいても、単騎駆けを行う王はいない」
キク先生は、新たに出現したオーク達の群れに向かっていった。
初めてかもしれない。 初めて―――― 僕らには、すでに逃げ場が存在してないと実したのは……
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