《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》激戦! そして敗北

 

「くっ……お前たちは、ここで待ってろ!」

そう言ったキク先生はオークの群れに向かって行った。

取り殘された僕らは、どうすればいいのか?

上層への道は渋滯。 下層はオーク達の群れ。 ダンジョンの中心では、オーク王とサンボル先生の戦いが続いている。

行き場がない。 もう、オーク王とサンボル先生の戦いを見守るしかないのか……

オーク王の拳が地面スレスレでサンボル先生を狙い打つ。

サンボル先生は跳躍して避ける。 次のオーク王の攻撃は打撃ではなかった。

空中にいるサンボル先生を捕縛するための攻撃。

指を広げて、サンボル先生のそのものを摑みにかかる。

無論、空中のサンボル先生には回避する手段はない。

しかし――――

サンボル先生は自に迫りくる巨大な手に向かい剣を走らせた。

何度も切り裂かれ、オーク王は痛みの聲を上げ、その腕はサンボル先生から離れた。

オーク王の指からは、ドロリとした黒い半が零れ落ちている。

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たぶん、あれがオークの……

「圧倒してるじゃないか……」

僕は呟いた。

確かにキク先生が言う通りにサンボル先生は、対ボス用の裝備ではない。

服裝も普段著。 一撃でもければ、を保護するは何もない。

今も、オーク王を切りつけた剣から限界を告げるように危なげな音を上げている。

それらを差し引きしても……

  サンボル先生に勝機があるようにしか見えなかった。

考えてみれば、サンボル先生だって、ダンジョン100層までたどり著いた教員たちの1人。

30層の主、オーク王以上の相手と戦った事は何度もあるはずだ。

左右のオント、サヲリを見ると僕同様に期待の目をサンボル先生に向けていた。

やっぱり、サンボル先生へ期待の視線を向けているのは僕だけではない。

他にも、オークに襲われて、キク先生から助けられている生徒たち以外の視線はサンボル先生に向けられていた。

サンボル先生の魔法。

まるで舊時代に存在していた機関銃のような連速度だ。

オーク王へ片手をかざすと――――

ダッダッダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン……

小型の火球が斷続的に発していく。

周囲にはが焼ける異臭がばら撒かれ、オーク王のもばら撒かれた。

 

 サンボル先生は矢継ぎ早に攻撃魔法を維持させながら、オーク王へ向かっていく。

そして――――

飛翔

高く飛び上がる。

片手には魔法。片手には剣。

全てを終わそうとしている。

なぜなら、サンボル先生の剣に魔力が流れ込み、浸しているのがわかるからだ。

おそらく――――おそらくだが……

次に放たれるのが、サンボル先生が有する技の中で、最強の一撃。

 しかし、それが放たれる事はなかった。

剣へ流れ込んでいた魔力が突如として消滅。

片手で放ち続けていた火球も止まった。

(何が起きたんだ!?)

驚きの表を浮かべているのは僕らだけではない。

サンボル先生自も驚きの表。 やがて、その表も苦痛へ歪んでいく。

代わりにオーク王は兇悪な笑顔を浮かべていた。

に火球を浴び続け、黒ずんだ顔と。 何度も剣で切り裂かれて、ドロリとしたが吹き出している。

それでも、オーク王は笑みを浮かべる。 自の勝ちを意識した笑みだ。

空中にいるサンボル先生へ向かい、オーク王は拳を放つ準備をした。

異常なほど腰を橫に曲げて捻じる。オーク王の背中がサンボル先生の正面に向く。

腕を限界までばし、に力みが見て取れる。

そして、それは放たれた。

も、技も、関係ない。 ただ、全の力を無造作に拳に伝える。

オーク王の剛腕は、周囲に轟音を震わせ――――

サンボル先生へ叩き込まれた。

本當に人間からあんな音が出るのか?

そんな衝撃音。

オーク王が放ったのは、空中にいるサンボル先生へのアッパーカット。

空中にいたサンボル先生は回避するもなく……

付け加えて、謎の苦痛からの失速で防もままならない狀態だった。

要するに、30層の主の打撃をマトモに叩き込まれたのだ。

まるで冗談のように高く吹き飛ばされるサンボル先生。

気がつくと、サヲリや他の生徒たちが走り出していた。

逃げ出すのか? そう考えたが、どうやら違うらしい。

このまま、落下して地面に叩き付けられるであろうサンボル先生を助けるため、落下地點に走っているみたいだ。

僕は、そんな事も考えれなかった。

ただ……絶。 このまま、全滅。 最悪の狀態が頭にこびりついている。

けど……

自分でもわかっている。 そんな事しか考えれない―――― 保しか考えていない自分に―――――

自分自に怒りが湧いてきた。

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