《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》超常的な恐怖と絶と……弱者
(け!? ……どうして? なんでがかない!?)
いくら念じてもは反応しない。
「だったら魔法で!」
戦法を魔力重視へ切り替え、意識を集中する。
と周辺の魔力の流れを分析する。しかし―———
……だめだ。魔力が四方へ分散されている。それに威力を強化するための詠唱が上手くいかない。
舌も麻痺したように呂律が回らない。
「ねぇ、なんで? なんでだろう? どうして、私の質問に回答してくれないの ? もしかして、あなたが私のお父さんなのかしら?たぶん……いいえ、きっと……そう、そうなの。そうなんでしょ? ねぇ?お父さん?」
そんなの聲。
僕ができた事は「ひっ」と悲鳴を上げる事と――――
を僅かに仰け反る程度のきだった。
彼は近づいてくる。
その瞳は異常だ。大きく瞳孔が開いている。
その口は、左右の端が大きく吊り上がり、強烈な笑みを見せつけている。
彼の姿には、狂気と恐怖が混同し、人に発狂を促させるようだ。
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そして――――
ばせば、手が屆く位置。
彼は當たり前のように手をばす。僕の頭部を鷲摑みにしようと……
(け! け! うごけぇぇぇぇっ!!)
彼の手が僕に額へれるかどうかのタイミング。
僕の腕は、腰に下げてる短剣へびた。
短剣が手にれると同時に一閃。抜くという作が既に攻撃となる初作。
跳ね上げた短剣は、彼の腕を切り落とす……はずだった。
(……え?)
短剣から伝わる手ごたえは皆無。
なんの抵抗もなく、短剣は一振り。空へ剣先を向けただけになった。
そんな……確かに……彼の腕がある位置を通過したはずなのに!?
「剣がすり抜けた!」
そう結果を言ってしまうと、僕の剣はのをすり抜けたのだ。
ただの短剣ではない。 21階層の対アンデット仕様の短剣のはずなのに。
ガチガチガチガチガチ……
なんの音?またアンデット系魔の笑い聲か?
確かに似てはいるが、その音の正は、全くの別だ。
その音は、僕の口から聞こえてくる。
恐怖からの震えが、ガチガチと歯をぶつけ合っているのだ。
さらに両足はブルブルと力がらない。
けど――――
はようやくいてくれた。
學園にって9年間。
人生の半分以上の時間を戦闘訓練に費やした。
刻み込まれた戦闘が僕の意識を無視して、をかせる。
どうせなら――――このまま狂ってしまえ!
「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
神へ溜め込まれたソレを排出するように雄たけびをあげる。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……ぶっ殺す。だから死ねえぇぇっ!」
狂気にを任せて短剣を振るう。
洗禮された技なんていらない。必要なのは、さらなる剣速。
デタラメで、ただ……ただ……求めるのは悪夢をかき消すほどの速度。
人間ならば、一瞬で解が完了する。そんな幾度と回數を重ねる剣技。
しかし―――――は止まらない。
(狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え……頼む。狂ってくれよ……)
どんなに狂う事を願っても、一線を越える前に連れ戻されてしまう。
探索者として鍛え抜かれた戦闘考察。
人知を超えた未知の前に、僕の戦闘考察が狂う事すら許されない。
雄たけび? それは、ただの絶だ。
デタラメな剣速? それは癇癪を起して、暴れる子供と同じだ。
心を防するメッキが剝がれ、脆弱な自分を理解してしまう。
そして、問答無用での手の平が僕の額へれる。
一、何をされるのか?
そんな、ある種の覚悟にも近い疑問が湧いたが……
ぐるりと世界が反転した。
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