あれから1週間が経過した。

まだタナカくんは帰ってこない。

そして――――

―――21層―――

既にダンジョンの封鎖は解かれている。しかし、21層だけは自由に探索する事はできない。

20層が階段を駆け下りると、ジロリと鋭い視線を向けられる。それも複數。

視線の主はダンジョンキーパー達だ。事件後、21層には複數人のダンジョンキーパーが常時待機している。

あまりの視線に含まれた剣呑なに、思わずが直してしまう。

一瞬の間があり――――

「やぁ、今日もが出るね」とダンジョンキーパーの1人が言う。

途端に張り詰めた空気がらかく変化する。

「あっ、はい」

「それじゃ、次の階層まで送っていくよ」

「よろしくお願いします」

こういった合に生徒にはダンジョンキーパーの護衛がついて22層へ向かう。

陳腐な言葉かもしれないが、

結局、事件の真相は闇の中……

何も見つからない。なんの痕跡も発見できず、1週間が経過したのだ。

―――夜―――

不意に目が覚める。

周囲を見渡すと同室のケンシがベットから落ちている。

どうやら、ダンジョン探索の疲労がたまっているらしい。　そんな狀態でもいびきをかいて、起きる様子はない。僕は、その景を見て小さく笑った。

さすがに、寢ているケンシを持ち上げてベットに戻してあげるほど、余裕はない。

それに優しさも持ち合わせていない。

力的というよりも神的な余裕の話。代わりにベットの掛布団をケンシの上に移させた。

再び、ベットに潛り目を閉じる。

「……眠れない」

奇妙なほど目が覚めていて眠れない。

時計で時間を調節するを得ている僕らは、睡眠時間のコントロールも可能だ。

それも微調整が可能なレベルで……

なのに眠れない。

これは異常事態だ。自分のに何かが起きている。

しかし、実はない。外部から、なんらかの干渉をけているはずなのに……

僕はベットから飛び起き、部屋から外へ出る。まるで何かにわれているかのようだ。

  まるで？　いや、実際にわれているのだ。

長い廊下。左右には、真っ直ぐにそして規則正しく並んだ窓ガラス。

雲に隠れた月が顔を見せ、月明かりが暗闇から廊下を照らす。

「お久しぶりだね」

人の聲？　どこから？

聲は近かった。　どこかわからない。

なぜなら、それを認めるわけにはいかないから……

聲が聞こえた場所が自分のすぐ後ろからだったなんて……　認めれないから……

「どうして、こっちを見てくれないのかな？かな？」

語尾を２回繰り返す特徴的な話し方。

それで聲の主がわかってしまう。

「ねぇ？早く、早くこっちを見て。早く振り返って見て」

まるで父親に甘える娘のような甘ったるい聲。

その聲が振り返れと命令を促し來る。

だから、わかってしまう。絶対に振り返ってはならないと。

振り返ってしまうと……

どうなるの？

そこに彼がいた。

しかし、その風貌の変化に僕は驚いた。

「違う。あ、明らかに違うぞ」

「違う？何が違うのかな？かな？」

彼は小首を傾げて笑った。

何が違うのかって？　まったく違う。いや、すべて違う。

存在だ。　幽霊という儚げで非現実的な存在ではなくなっている。

人間がそこにいる。　活力に満ちたと言うか、力的と言うか……

場違いな表現かもしれないが、彼は……その……

元気そうだった。

酷く人間的なくらいに――――