《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》月夜より朧な その②

そう彼は非常に人間的だった。

あんなにも不確かで、揺れていた。ある種の幻想的なしさすら有していた。

靄がかかっていたようにぼやけて見えていたソレは―――― 今は郭が固定化されている。

スラリとびた四肢。今は派手な紅のドレスに包まれている。

腰までびていた黒髪は、なぜか赤く染まっている。まるでドレスに合わせたようにすら見える。

そして、表。 狂気と恐怖が混同したかの笑みは、以前のままだ。

しかし、目には知が宿っているのがわかる。爛々として、喜びに満ちた瞳だった。それは以前に存在していなかったものだ。

今の彼を見て、幽霊を呼ぶ人間いるだろうか?

答えは、もちろん否だ。

もはや、彼の風貌は、イカレタサツジンキとしか認識できないだろう。

「なぜ、ここに……その姿は…」

? これが私のなんだよ。あの人が約束してくれたんだ。これでお父さんに會わせてくれるって!」

「――――ッ!?」

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(あの人?誰の事だ?いや、それよりも、そんな事よりも―――――)

犯人がいる?

21層での起こった事件。

タナカくんは意識不明。ゲンゴロウさんは行方不明。

それは、目の前の彼を追っての出來事。

僕が彼と戦った時、彼は存在していなかった。

が別の場所にあった……らしい。

僕が戦った彼は、本から放たれた魔力によってが構させた存在。

言うならば質量をもった映像だ。だが、今はを得ている。

を得て、僕の前に立っている。

……ということは……だ……

(彼が呼ぶ、あの人とやらが…… 誰かが彼を與えたと言う事なのか? そんな馬鹿な!)

しかし……何者かが、第三者が彼を與えたというならば、きっと21層の事件に無関係ではないだろう。

だから僕は、反的に、『犯人』という言葉が脳裏に浮かんだのだ。

「……なんのために?」

「なんのため? なんの事かな?」

口が酷く乾いている。極度の張によるもの?

何を言うべきか剎那の考。

『なんのために事件を起こした?』とか、『なんのためにゲンゴロウさんやタナカくんをあんな目に』とか……

様々な選択肢が、疑問質問が浮かび上がってくる。

事態の収拾が目的ならば『誰が事件を起こしたのか?』そう言えばいい。

犯人を聞けばいいのだ。

しかし、安易な質問は危険が増す。理屈はないが、直観的にそう考えた。

この事件の裏側にいる人間は――――犯人は、踏み込み過ぎると僕も殺すだろう。

きっと、犯人は今も僕を監視している。

犯人は、彼っているのだから…… 今も彼は犯人の支配権にある。

だから、今は―――犯人が面白いと笑いながら答える質問を選択しなければならない。

(どれが正解か?どれが悪手になるのか?)

選択肢の排除につぐ排除の末……決斷。

僕はソレを口に出す。

「どうして、僕の前に現れた?」

それは保の質問だった。

自己防衛。生き殘る事の優先。生存率の上昇。

それらが事件とは無関係の質問に揺りかされた。

ここは學園の渡り廊下。人気のない夜にわれたかのような散歩。そこで出會う不自然さ。

だから――――そう―———きっと偶然ではないのだろう。

偶然ではないのならば―———彼が僕の前に現れたのには理由があるのだ。

決して軽視される事ない大きな理由が……

そう考えた僕に対して、彼は――――

キョトンとしていた。

「どうしてって? ただの偶然だよ」

「ぐ、偶然? そんな……」

そんな馬鹿なと言いかけて止まる。何だ? 何かが引っかかりる。

おかしい。偶然?彼が現れた? それは、それだと……

は、當たり前のように夜の學園を徘徊していると言う事なのか?

つまり、それは……

がダンジョンから學園に移されている?

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