《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》月より朧な その③
魔力と一言で言っても無限のエネルギーではない。魔力の有効距離というものが存在している。
それは、距離が近ければ強く、距離が遠ければ弱化していくような単純なものではない。
ものではないが……戦闘で瞬時に使えるように簡易化された魔法は、その傾向が強い。
だから、彼の力が強まっている現狀……彼の本が近い場所にある可能は―———
強い。
(だが……どうする?)
彼の本は、どんな形狀なのかわからない?
それに、どこにあるのかの目星すらない。
彼を倒す事を優先させるなら、彼の本を破壊するのが最優先となるのだが……
……いや、それよりも……
この騒を影からっている『犯人』的な存在がいるのなら……
おそらく、彼の本を持っているのはソイツ自に違いない。
だったら……
「もしかして、お前の本は、この學園にあるのか?」
僕は単刀直に聞いた。
おそらく、これはいくら考えても答えにたどり著くことない問題だ。
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なら、最初から本人に聞けばいい。本の在処を。
そして彼の反応は……
「ん?知りたいの?そっか……知りたいんだね」
ピリッと皮が焼けるような覚。
探索者として鍛えられた察力が、僕に危険を知らせる。
「そうだ。忘れていたよ。私の名前はロワ・クリム。あなたはなんていうの?」
いきなりの自己紹介。
(名前を利用した呪の使用か?)
僕は躊躇したが、周囲に魔力の気配はない。
名前を正直に名乗る。
「……僕は、サクラだよ。フルネームはトーア・サクラっていう」
「そう、それじゃサクラ。互いに名前を覚えた事だし、さっそく……」
「さっそく?」
「殺し合いを楽しみましょ?」
彼は僕を指さす。
彼から発せられる違和。あるいは威圧。何らかの自信。そして————
悪意。
それらが殺気と言われる覚に変化されていく。
危険信號は、けたたましい音を立てて、死の知らせを運んでくれる。
未知の攻撃
しかし、彼が無意識に出す報……彼の表や視線。表筋のきエトセトラエトセトラ。
僕の報分析能力が、彼の攻撃を雄弁に教えてくれる。
素早く、両足を左右にらして、片手を地面についてしゃがみ込む。
その直後。剎那にも等しい僅かな時間。
僕の頭上を何かが通過する。 かすかに當たった僕の髪のが、その熱量をじさせながら、離れていく。 殘ったのは焦げた髪の臭い。異臭だ。
「なっ……」
絶句する僕に彼は語りかけてくる。
「あの人は教えてくれた。私の本を知ろうとする人間は敵。私を壊すのが目的だって教えてくれた。 サクラ?あなたもでしょ?あなたも私を壊しに、こわこわコワコワ……ケタケタケタケタケタケタケタケタ。壊す?殺す?どっちでもいい。さぁ……殺し合いましょう」
再び、彼―――クリムは、僕に指を向ける。
彼の指先に魔力が集まっていく。
攻撃の正は火炎魔法。指先からコンパクトに圧された炎が――――― 発された。
僕の顔面ぎりぎりに炎が通過していく。 小さく、されど十分なほど殺傷をめられていた。
それは舊時代の兵である銃を連想させる。 ならば――――
僕は恐れず前進を開始する。 遠距離武である銃対策に離れるは愚策。 逆に近づくは良策。
距離が離れれば、離れるほどに対処は難しい。 なぜなら、距離が離れれば、こちらに反撃のがなくなるからだ。 地面を蹴り、クリムに接近して……そして気が付く。
ここは夜の學園。床にって眠る直前で、寢間著パジャマ姿の僕は武なんて持っていなかった。
(えぇい!構うもんか!このまま近づいてぶん毆って……えぇ!?)
急停止。 なぜなら、クリムが僕に向ける指の數は10本。
そして、殘念なお知らせ。
クリムの攻撃を、僕はこう分析していた。
(連での放出はできず、一発ごとの溜めチャージが必要)
そう分析していたから、危険ながらも強気な戦い方に挑もうとしていたのだが……
クリムの魔力のきから、どうも10本指からそれぞれ発が可能な模様。
魔力の連続使用に相乗効果がついて、実質、溜め時間は0に……
つまり、今の僕は……重火でいう機関銃を持つ相手に素手で接近戦を挑もうとしていたのだ。
「む、無理だあぁ、無理無理むりむり……」
しかし、現実は非常だった。
「それじゃ、サクラ。さようならだね! だね!」
だっだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ……
ただの銃聲と表現するには、迫力不足で――――
破壊音と言ってしまうと曖昧で―――――
僕にとっては発音に過ぎない音によって―――――
夜のシュット學園の靜寂は破壊されてしまった。
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