《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》月より朧な その⑤

あと1分に満たない時間を耐えきれば、こちらの勝ちだ。

しかし、耐えきれるか? 魔法の弾丸による止むことのない攻撃。

(しかし……熱いな)

気づけば大量の汗が零れ落ち、足元には水たまりができていた。

熱量。魔法の機関銃の正は、圧された火炎魔法の連続放出。

例え、全ての弾丸を通す事のない鉄壁の防である『龍の足枷』であっても、鋼鉄という質上、熱伝導は防げない。

異常に高まる溫は短時間で力と集中力を削り取っていく。

判斷能力が著しく低下したためか、クリムの攻撃が止まっている事に気がつかなかった。

「アイツ、何をしている?狀況は理解して逃げだしたのか?」

高まるのは

絶えず大音聲の破壊音で振るわされ続けていた鼓は、僅かな休息を許された。

極限狀態での、突然な無音。 不安は加速し――――

「……なんだ?あれは?」

僕はそれを見た。

いくら鍛え抜かれた視力を持っている探索者であっても、弾丸を眼で捉える事は不可能だ。

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鍛錬を積んだ闘技者、特に素手を武にする者の拳速は時速36キロ。

時速36キロという數字。これは想像よりも遙かに遅いと考える人が多いかもしれない。

しかし、それは僅か1メートル……いくら長くても2メートルに満たない人間のリーチから放たれている。

その距離を維持しながら、時速36キロで飛んでくるボールを――――しかも、のどこを狙っているかわからない狀態でだ――― 避けられる続ける人間がいるだろうか?

しかも、機関銃から放たれる弾丸は、遅い種類であっても、その10倍ほど速度で飛來してくるそうだ。

クリムの弾丸が、本の機関銃を再現してるとは限らない。

しかし―――僕の視力を凌駕している事から、拳速の數倍くらいの速度はでてるはずだ。

僕の視力を凌駕している?だったら……

僕の目に映っている弾丸の正はなんだ?

龍の足枷の隙間から炎で作られた弾丸がユラユラと揺れながら進んでくる。

「あれは……」と一瞬、思考速度が遅れる。

を脳が認識するまでの僅かなタイムラグ。

そして――――

導弾かっ!」

盾……と言うよりも遮蔽として、僕のを守っていた『龍の足枷』

それをゆっくり、大きく迂回して空中に靜止している弾丸。

そして、自分の役割を思い出したかのように急加速。

それは、まるで死神が命を刈り取る鎌の形によく似た軌道。

一瞬で、予想外の角度から、僕がいる場所に、弾丸が撃ち込まれた。

「もうサクラは死んじゃったのかな?」と鼻歌混じりで騒な事を言うクリム。

正確には、鼻歌混じりでスキップをしてながら近づいてくる。

言葉とは裏腹に僕の死を確信しているから、不用意に油斷しまくっているのだろう。

「あれ? いない???」

は僕がいた場所をのぞき込んで呟いた。

「ん~ この球を殘して逃げちゃたのかな? 他に人が來るポイっし……仕方がないかな?かな?……ん~ 帰ろっと」

そのまま、彼は幽霊のように姿が消えていった。

それを僕は見屆け、「助かった……のか?」と呟いた。

僕が、現在、隠れている場所。実は渡り廊下の外だ。

―――ロウ・クリムが放つ周囲全に炎の弾丸を放する魔法。

まるで機関銃のような攻撃によって、渡り廊下は半壊寸前。

窓ガラスは全て割られ、壁に大きな弾痕がこびり付いている。

つまり、この割り廊下には、巨大な破壊痕が……人が通れる大きさのがいくつも存在していたのだ。

僕は、そこから外に飛び降りた。

飛び降りながら、ここが3階の渡り廊下だという事に気づく。

下にはクッションの代わりになるような花壇も木々も存在していなかった。

しかし、僕の手には『龍の足枷』からびている鎖がある。

今の僕は、鎖をロープ代わりにして、ぶら下がっている。

「た、助かった……」

けど、僕には生還の余韻に浸る暇はなさそうだ。

すぐに騒ぎ聲が聞こえてきた。どうやら、教師たちが駆けつけてくる聲みたいだ。

「もうしだけ早く來てほしかったなぁ……」

正直に言うと、例え教師が相手だとしても、この武――――『龍の足枷ドラゴンシール』の存在は隠し通しておきたい。

幸いにも、鍵のかけ忘れか、下の階……2階の渡り廊下の窓かられるようだ。

僕はそのまま、2階の渡り廊下へ著地した。

もちろん、上の階で出しっぱなしの『龍の足枷』は手の中へ回収。

「さて……しかし……これからどうしようかな?」

僕は、今後の事を考えた。

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