右の拳がクリムの顔面と捉えた。

（痛っ！　っ！）

拳から伝わってくるは異常なさ。

毆った拳の皮が裂け、が滲む。

（……けど！）

痛みに構わず追撃。更に返しの左拳を叩き込む。

その効果は――――

クリムの顔が、僅かに前後に揺れるだけだった。

もしも、鉄柱に支えられた鉄板の標識を毆ったら、同じようなきをするだろう。

僕の拳は、彼の顔面を真正面に捉えたのにダメージがった様子がない。

次はクリムが攻撃する順番だった。

い子供が泣きながら毆りかかてくるかのような攻撃。

肘を折り曲げ、握り込まれていない拳は、まるで貓の手。

それを上から下へ振り落される所謂、貓パンチ。

しかし、衝撃。　見た目に反して強烈すぎる打撃によって、俺の全に衝撃が走りぬけた。

もう一撃、クリムが攻撃のモーションにっている。

けるわけにはいかない。

左足を大きくスライドさせてから重移。

フットワークと言うよりも捌きと言った方が正確な移。

攻撃を避ける。それと同時にクリムの真橫に移。

クリムの首に左手を巻き付ける。首相撲に移行しようと力をれるがクリムのは微だにしない。

ならば……と左手でクリムに重を預けて、膝を大きく沈める。

その直後、飛び上がるように膝蹴りをクリムの顎に叩き込んだ。

クリーンヒットッ！

まともにったはずだが……クリムの顎はクイッと上を向いただけだ。

たぶん、おそらくは、ノーダメージ。

「チッ」と心で舌打ちをして、後ろに下がる。距離をとって仕切り直しを考える。

————しかし、できない。

離れようとした瞬間、クリムが俺の左腕を摑んでいたのだ。

浮遊に襲われる。

なぜか？答えは簡単だった。　クリムが俺のを持ち上げたのだ。

俺の左手を摑み、そのまま片手一本で俺のを持ち上げている。

それはありえない――――冗談のような景だった。

おそらくは、関節技。

何らかの技を使い、俺の関節を固定されている。

肩から先が一本の鉄棒になったかのように、かない。

フィジカルだけではなく、こんな技も持っているのか……背筋に寒気が走った。

このまま片手できを封じられ、空中に浮いている俺はどうなるのか？

そんな疑問を――――いままで逃げていた現実を思い起こしてしまったのだ。

そして――――

それが來た。

さらなる浮遊。

大きく、高く、上に持ち上げられ――――　そのまま地面に叩き付けられた。

またも、全に衝撃が駆け抜けた。

脳は揺さぶられ、肺はせり上がり、臓が圧迫される。

がバラバラになってしまうかのような衝撃。

しかし、それで終わりではなかった。

もう一度、が浮き上がる。

やはり、片手で俺のを持ち上げていたクリムが、もう一度、同じように持ち上げなおしたのだ。

そのまま、地面に叩き付けられる。

１回――――　２回――――　３回――――

衝撃に次ぐ衝撃。　衝撃。衝撃。衝撃。

徐々に意識が失われかけていく。

それでも意識の手綱を緩めない。やがて來るはずのチャンスを待つ。

そして――――

今まで片手だったクリムの束縛が両手に代わる。

ミシッ……ミシッ……

摑まれた腕からミシミシと骨が軋む音が上がった。

その握力から、クリムの力が伝わる。

そして、そのまま最後の攻撃が開始される。

しかし――――

「ここだっ！」

俺はぶと、空中でを丸め、態勢を整える。

それと同時に、腳を真っ直ぐにばし、足刀をクリムに叩き込んだ。

予想外のタイミングで、予想外の一撃をけたためか、クリムの束縛が緩む。

その隙に、摑まれていた左手を引き抜いた。そのまま著地して、地面との衝突を防ぐ。

できるだけ膝をらかく、そのまま座り込むようにして著地の衝撃を逃がす。

そのまま両手を地面について衝撃を殺していく。

その姿を第三者が見たら、潰れたカエルに見えるかもしれない。

よく競技スポーツで「のバネを～」と表現される事がある。

のバネとは関節部分に存在している健のことだ。一番有名なのはアキレス健だろう。

そののバネ利用して、著地で得たエネルギーを――――

一気にぶっ放す。