「しかし、『ギフト』って実在していたのか」

僕が初めて聞いたのはドラゴンからの話。てっきり、與太話だとばかり思っていたが……

あれ？　そう言えば……　ドラゴンとクリムって……

「私たち、戦うの初めてじゃないって覚えている？」とクリム。

「え？　あぁ、そう言えば初対面の時は敵でしたね」とドラゴン。

「だから、私は貴方が『ギフト』なんて馬鹿みたいな反則技を持ってると知ってた。けれども、貴方は知らないでしょ？私がこんな事ができるなんて！」

そう言うとクリムは魔剣を―――

『魔剣　ロウ・クリム』を自の腹部へ突き立てた。

「なっ！　の部へ魔力が逆流……いえ、増幅している？　これが切り札？」

ドラゴンの驚くのも無理はない。　先ほどのドラゴンと同様、クリムもまた――――

変を開始したのだ。

クリムのを真紅が包む。　そして、それは他者を威圧するような鎧に変わっていき————

「あれは、僕と戦った時の『暴走』？　いや、あの時と同じ鎧が現化しているのは確かだが……安定している？」

神が破綻していたアノ時とは違っている。

目に寫る者を破壊しようとしていたアノ時とは―———違っていた。

トゲトゲしかった鎧は、らかな曲線に変わり……クリムの全を覆っている。

その姿は人から解き放たれた四足獣のように―———

「まるで虎ですね。奇しくも龍虎相搏つって笑えますね。ドラゴンの私には冗談でしかないです」

「挑発？　もしかして、追い詰めちゃった？」

「冗談を。それを言うならもうし強くなってから―――」

ドラゴンは最後まで言わなかった。

――――否。

言えなかった。

虎が吼えた。　クリムが咆哮を放ったのだ。

「なっ！」と焦りをみせるドラゴン。

『咆哮』

ダンジョンの主ボスが使える特権。　それを再現して見せたのだ。

ドラゴンは空中でバランスを崩す。　そこにクリムの追撃。

再び虎の咢が開く。　吐き出すのは火球―———いや、違う。

圧倒的な熱量を放出する熱線。　剎那の閃のみが見えた。

直撃

キリモミ狀態でドラゴン落下。

クリム、追撃。

1撃、2撃、3撃……

破壊音と言うには、あまりにも異音。

急激に熱された空気によって空間が歪んで見える。

それでもく人影。――――ドラゴンと言え無傷にはすまなかったようだ。

超回復の煙が昇るも、全快には時間がかかる様子。

「これは流石に痛いです。『奪略』で魔力をコントロールする間も與えぬ速度スピードと複雑化させた保護プロテクトを施すのが『奪略』の対策法としては……って！　おいっ！」

クリムは最後まで言わせなかった。熱線の連。

「熱っ！　熱い！　ちょ……ダメっえぇぇぇ！！」

ドラゴンは超回復の煙と熱線で熱しられた煙が混じってとんでもない事になっていた。

「貴方は怪。こっちは手を休める余裕はない」

クリムは言葉通り、手を休めない。

それどころか、今の形狀に―――四足獣に―――相応しく、前に駆け出す。

もちろん、口から吐き出す線はそのままに……だ。

トドメを狙ってか、接近戦に挑むクリムを————

「そーですか。余裕がなく忙しいのは優雅じゃないですね」

前に出るクリムに対して、前に出るドラゴン。

ドラゴンはクリムの首に手を回して、抱き付くような勢。

「おーよしよし、可がってあげましょう」

訂正―――僕の目に抱き付くよりも、絞殺そうとしてるように見えた。

「放せ―――この———放せ！」

クリムは暴れ始める。　をあやすようなドラゴン。

「アッハハハ……案外、楽しいですね。これ」

そう言ってドラゴンは、クリムのを持ち上げた。

首をロックしてを持ち上げる勢。そこから地面へ持ち上げた相手を叩き付ける技がある。

それは―――

『ブレーンバスター』