《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》イスカル編 終わり

「いや、まさか……あそこでイスカル王が巨大化するなんて思ってもみなかったなぁ」

「いやいや、火を吹き出したり、瞬間移したり、見どころは沢山ありましたが、投げ技の直前に相手を移させる『吸い寄せ』なんて技も地味にヤバかったですね!」

そう騒ぎながらイスカルを後にする僕等へ―———

「……そんな場面あったけ?」

そう冷靜な突っ込みをれるクリムだった。

あの後————

勝者となったのはイスカル王だった。

激戦に見えるような予定調和の戦い。 無言で立した意思疎通。

打ち込む場所は導され、放つ技はけ止められ……

こういう戦いもあるのだと……

雄弁に語られていた。

「そう言えば……あれで良かったのか?」

「ん?何がですか?」

「何がって……」

僕に勝利したイスカル王。

彼は戦いの後にこう言ったのだ。

「この戦い、余に勝ったら願いを葉えてやると言った。今宵は月の神を魅せて勝ったのは余だった……だが、余に芽生えた高揚を共したい。……言うがよい。お主の願いを!」

僕はその権利をドラゴンに譲渡したのだった。

僕はてっきり、彼の願いは奴隷の解放だと思っていたのだ、違った。

の願いは―———

「そうですね。では平等な教育を―———もちろん、奴隷にも……ですよ」

————だった。

「そうですね。イスカル王はあぁ言ってましたが、私たちがいきなり奴隷を解放しろなんて言っても実行したと思いますか?」

「う~ん」

僕は首を捻る。

なんでも願いを葉えるという話ではあったが、実際問題、なんだかんだで、葉われなかったと思う。

「だから、ですよ」

「ん?」

「本來、人間が平等なんて……夢語に等しい言葉ではあります。ならば、武を取らなければなりません。幸いにして世の中には、人と人に差を生み出す武ためのあるのです。これは予言なのですが……近しい將來、あの國は奴隷國家なんて言われなくなるでしょう」

「それはどうして? どして、そう思うんだい?」

「奴隷たちは武を手にしたからですよ。學問という武を―――人を————王すら殺し得る武を―――」

は―――ドラゴンは笑っていた。

強烈な笑みだった。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「ところで気になっているんだが……」

「偶然ながら、私も……たぶん、同じ事を考えていたのでしょ……」

「「なんでキララがついて來ている」」

「え?」とクリムと遊んでいたキララがこちらを向いた。

「キララは、闘技者になるためにイスカルにきたんだろ? 他國の王者とは言え、ゴドー相手にそれなりの試合したし、そもそも、闘技者に制限なかったじゃないか。それなのに、なんでついてきている?」

「そうですね。強いて言えば、この戦いで自分の未さにれたため、新たな修行として同行していこうかと……」

「じゃ、事前に一言くらい……」

「いえ、私が師を仰ぐのはクリム師匠だけです。クリム師匠には許可を取っています」

キララの言葉にクリムも反応して―――

「うん、弟子ができたの」

「……」と僕とドラゴンは反応に困った。

「キララも年下の子に弟子りするよりは、もっと適切な人がいると思うんだけど?」

しかし、キララの反応は僕の予想と大きく異なっていた。

「歳下?」

「なんで疑問形なんだ?」

「だって……サクラさんとクリム師匠は同學年と聞きましたが?」

「むっ! 確かにそうだが……」

確かにシュット學園では同級生だった。

「でも、それに何の意味が?」

「じゃ、クリム師匠はサクラさんを同じで年上じゃないですか」

「はあああああああぁぁぁ!」

「あれ、初めて會った時にサクラさん15歳って言ってなかったです?」

僕は朧ながら思い出す。

『ええ、まぁ、たぶんキララさんよりも歳下で正しいですよ。僕は15歳ですから』

『じゅっ! 15歳! 見えない! 15歳に見えない。 え? 15歳で結婚?』

「……言ったなぁ」

「サクラさん、てっきり歳下と思っていたからビックリしたから覚えているんですよ」

「あれって、そういう意味だったのか!」

てっきり、老けてて15歳みたいに若く見えないという意味だと思っていた。

「では、これからよろしくお願いしますね」

アッシュ・ザ・キララが仲間になった。

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