自ら上がった甲冑は、ぎこちないきで歩き始めた。

そのきを「まるでロボットダンスですね」と評した。

ギシン―――　ギシン―――

歩くたびに酷い音が響く。

錆びれた金屬がこすれ合う音に似ている。あるいは、そのものではないだろうか？

僕は、そのきから甲冑の正は金屬系ゴーレムだと推測した。

けど、それでも不可思議な事は多い。

金屬系ゴーレムとは―———

本來ならば魔的な要因で作られるゴーレム。

その一部を機械で代用する事で生産を上げる事が特徴だ。

なるほど……

長い間、地下湖の底に沈んでいたのならば、全が錆だらけできがぎこちないのはわかる。

しかし、ゴーレムの弱點として有名な話だが————ゴーレムは、そののどこかには呪文が刻まれている。

ゴーレムは破壊するにはその呪文の部分を削りとるのが一番確実な方法とされている。

それが水面下で放置された（なくとも全が錆だらけになるじかんだ）でも呪文部分は無事でいられるものだろうか？

そして、なにより、極小の電流が命令系統に走るはずの金屬系ゴーレムが水中で無事なはずがない！

「くそっ！　全く正が摑めない！」

まさに未知の魔だ。近づく生を水に変えてしまうという事前報がある分、逆に攻撃しにくい。

「おい！　ドラゴン！　コイツが何かわからないか？」

しかし、ドラゴンからの返事はない。

どうした？　と甲冑から目を離して彼の様子を窺うかがうも、ドラゴンは明らかに揺していた。

「おい？　どうしたんだ？」

「あれは……かなり、ヤバいです」

そこで初めて俺は、彼が震えているのに気づいた。

（怯えている？　ドラゴンが！？）

地上最強の幻想種であるドラゴンが怯えさす存在。

いくら不可解とは言え、目の前の歩く鎧にそこまでの恐怖を見出す事はできなかった。

「一、あの鎧に何があるんだ？」

僕は鎧に向かって指を指す。　すると、そのタイミングで鎧はきを止めた。

「……」と無言で警戒心を強める。しかし、次の瞬間、信じられない事が起きた。

水だ。

地下湖の水がき始めた。まるで蛇のような形に個化していく。

水は蛇のき、そのままに鎧に向かっていく。

そして、甲冑の隙間から中へり込んでいった。

「原始の海。生から作った生のスープ……あれが人工的な神造生」

ドラゴンの口から聞いた事のないキーワードがいくつも飛びだした。

僕は、それを問いただそうとするも―———

すでに地下湖の水は空になっていた。　全てのは鎧の部に収納されている。

一、その鎧のどこに湖の水が収まっているのか？　そんな疑問は、もはや虛しいだけだった。

鎧は、その機能を確かめるように両手を顔の前まで上げ、手を開いたり、閉じたりを繰り返す。

そこにか先ほどまでのぎこちなさは消え去り、まるで人間のようにスムーズな作へ変わっていた。

いや、それだけではない。　湖を吸収した後では、明らかに鎧の形狀が変わっている。

大きく————いや、それよりも本當に人間がっているかのように……

鎧が大きくいた！

いきなり、その場でしゃがみ込んだかと思うと―――

ジャンプ！

一気に天井を突き破り、僕らの視界から消え去った。

天井に開いたを真下から覗くと空が見える。

あのまま、2層目の天井だけではなく1層目の天井をも突き破ったみたいだ。

「どうする？　追いかけるか？」

僕はドラゴンに聞いた。しかし、彼は首を橫に振る。

「追いかけるだけでも危険です。まずは地上へ、クリムちゃん達と合流を目指しましょう」

そう言って彼は駆け出した。

僕も彼の後ろを追いかけながら―———

「構わない。だが、アレについて知っている事は聞かせて貰うぞ？」

「……」とドラゴンは渋るような表だったが、やがて―———

「————わかりました。私の知る範囲で良ければ話ましょう」