《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》ブラックアウトの敗北

 巖と巖がぶつかり合うような音

に異常が生じているのか、視覚に続いて聴覚までも安定しない。

それでも拳を突き出す。

力もガリガリと削られていく。側から生命力そのものが失われていく覚。

オントの顔を見る。酷い顔だ。

――――たぶん、俺も同じ顔になっているはずだ。

何かオントが言っている。

俺の聴覚は馬鹿になっている。何を言っているのかわからない。

だが、鍛え抜かれた察力はきと表で理解できてしまう。

「もう、いいだろ 降れ」

「何を言っている? ワザと負けろって言うのか?」

「その通りだ。安心しろ、シュットじゃお前が犯人だと信じている奴なんてほとんどいない」

「なに?」

「考えて見ろ。なぜ、俺がお前を捜索部隊隊長になっている? イスカルであったゴドーの様子は? 不自然ではなかったか?」

「……」

「それが証拠だ。お前が思っている以上にシュットにはお前の味方がいる」

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俺は前國王の暗殺容疑がかけられている。

しかし、俺がシュットを飛び出した理由は―———

一瞬、の姿が瞼に浮かんだ。

そのが自然と言葉に出た。

「斷る」

「なぜだ?」

「ワザとでも、お前に負けるのは嫌だ」

オントの表が崩れる。笑っているように見えた。

「それじゃ、正々堂々とお前に―———いや、すまない」

「?」

このタイミングでオントが謝る意味がわからなかった。

「鎖の授業―———俺との組手を覚えれいるか?」

「當たり前だろ? 初めて俺がお前に勝った日だ」

「へっ、そうだったな。あの日、お前が俺に言った言葉と逆の事をお前に仕掛ける」

「逆……?」

「俺をダンジョンに例えて打倒すると言ったな?」

「あぁ言ったな」とあの時、オントから言われた言葉を思い出した。

『探索者に必要なものは!自分の力で困難ダンジョンを克服する力。人間に対する技……対人の技では斷じてない!想定すべき敵は人ではなく魔でなければならない!』

それに対して僕・は————

『ダンジョンでは自分の力が通じない相手もいる。それでも―――――例え、どんな方法を使っても――――その困難を打破しなければならない時がある。

それが、僕に取っての『今』だ!

そして―――君を『今』打破する。それも、また……君というダンジョンを打破する事であり……

そう! この戦いも、ダンジョンで戦い続ける事を想定しての戦いなんだ!』

そんなじの事を言った。では————

オントのいう逆とは?

「今から最後の技を仕掛ける。 すまねぇが……倒れろ! トーア・サクラ!」

オントが放ったのは拳。だが————彼もまた、力盡きていたのだろう。

その攻撃には彩に欠けていた。

(フック? けど、この軌道じゃ?)

空振り。僕の鼻先に掠りながらも通過していく。

そう思えた。しかし、変化が起こる。

「ごふっ!」

通過したはずの攻撃。しかし、攻撃は終わっていなかった。

オントの前腕が僕のに押し込まれた。

さらに首に回された腕に力が燈る。僕の頭部が前方に引き込まれる。

(ギロチンチョーク? この勢で?)

ギロチンチョーク

それは、―――気道に前腕で押し込む技だ。

本來、対人格闘技の絞め技としては珍しい。

なぜなら、絞め技というのは、気道を塞ぐ技ではなく、頸脈を絞める技が基本なのだ。

脳へ送られるを遮斷させて失神させるのが基本。

それをあえて、このタイミングで? なぜ?

ギロチンチョークは、その技の質上、寢技で使う。

それも相手の上から覆いかぶさるように重をかける必要があるからだ。

立ち技スタンドの狀態で使う技では―———

「ぐ、はっ!?」

馬鹿な! ギロチンチョークで頸脈を絞め!

、どうやって!?

「悪いな……サクラ!」

薄れていく意識。オントの聲だけが鮮明に聞こえる。

「俺はお前に勝つためだけの技を磨いた。 お前の知らない対人の技だ。これは不意打ちに等しい行為かもしれない……だから、恨んでもいいぞ」

オントが僕の頸脈を絞める方法に気づいた。

彼は腕ではなく、服で―――服の袖で僕の首を絞めて……

失神ブラックアウト

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

目が覚める。僕の腕には手錠。

薄暗い空間、時折起きる縦揺れで馬車の部だとわかる。

「何が、僕は犯人じゃないだよ」

誰もいないのがわかっていながら、僕は悪態をついて見せた。

深呼吸を1つ。意識を集中させる。

「失神して……まる1日か」

時計で時間の経過を探った。

おそらく、シュット王國へ連行されている途中。

到著まで、あと1日くらいだろう。

僕は、橫になり、瞳を閉じた。

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