《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》突撃前夜
———王の間———
玉座に年が座っていた。
僕は片膝を地面に著き、頭を下げる。
橫にもう1人、ドラゴンは直立不。
「……構わぬ。トーア・サクラ、面を上げろ」
僕は立ち上がり、視線を王に向けた。
王は、年の面影を無くし、統率者として凜とした表をしていた。
立場が人を変えると言うが……ここまで変わるものなのか。僕は、驚愕を隠せずにいた。
「皆まで言わなくてもよい。汝を無罪放免とする」
王は、それだけ言うと玉座から降り、自ら足で僕の元へ近づく。
「久しいと、他の者から散々と言われただろう」
「はい」
「余も勉學の先輩として、心からそう思う。だが、王としてお主に頼まねばならぬ事がある」
「戦爭……『教會』の事ですな」
「むっ……確か、それもあるが……」
「?」
違うのか? てっきり、シュット國の先兵として攻め込むものだと思っていたのだが……
「言い難い事ではあるが、アリスの事だ」
王は周囲の配下に聞こえぬよう小聲で、僕の耳元で話す。
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の話という事だろう。僕も聲のボリュームを落した。
「次期王妃様ですか?」
「うむ、確かに次期王妃ではあるが……余は気が進まぬのだ」
「……? 気が進まぬとは?」
「學園の在學中、アリスとお主が仲という事は知っていた。それを承知で婚儀を結ぶのは、ちと違うのではないか……そう思っていてな」
僕とアリスが仲だった?
……あっ! そう言われてみれば、それが原因で決闘が起きたんだったけ?
「この際、お主が武勲を立てれば、アリスとの婚儀をお主へ譲ろうと思っている」
「え? そのような事が可能なのですか?」
「前例がないわけではない」
「……」
隣ドラゴンから凄まじい圧をじる。 しかし、それはこの際、カットだ。
僕は、アリスの事が好きではない。 なぜだろうか?
逆に嫌いか? と問われれば「嫌い」と答えるだろうか?
いや、たぶん「嫌いではない」と言う。
僕がアリスに対するは、外部から生じる
『アリスを好きでなければならない』
という圧力への反発ではないだろうか。
アリスが僕の事を好きなのだから、彼をせと言う人が一定數いた。
その言葉には棘……揶揄いと言った悪意と呼ぶには拙いを帯びていた。
それは攻撃である。
攻撃に対する反発。
しかし、それを取り除いたら? 僕個人が持つ、アリスへのは?
そうか、僕は彼を見ていない。
なら……
「我が王よ。 ぼ、私はアリス次期王妃へ心を奪われた事はございません」
「……そうか」
「ですから、この度の申し出。戦果を挙げた際に改めてお答えさせていただきたい」
僕が出した言葉は保留であった。
それは僕自がアリスと対峙していなかったからであり、
僕はアリスを見ていなかったからであり、
彼と向き合ってみよう。そう思ったからだ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「まずはこれを見てほしい」
ヤン宰相は地図を広げた。
「これは?」と僕。
「聖域と言われる場所。大きな戦の前に『教會』が世界に散らばった12人の幹部を集めて會議を行う。それに、それぞれ鍛錬を行う場所であり、それと同時に彼らの住まい……家でもある」
「確かに、でも……この広さは、まるで……」
「そう、巨大な山脈を利用した天然の要塞。狹い山道は兵の投を拒む。頂上に住む『教皇』の館まで、続く12の宮殿は、それぞれが人工的な迷宮ダンジョンだと言われている」
「要するに、12の手作りダンジョンとそこを治める幹部を倒せば、大規模戦爭は起きないって話だろ?」と僕の後ろから、聲がした。 オム・オントだった。
「うむ」とヤン宰相は話を続けた。
「幹部である12人は使徒と言われている。『教會』の力を使って集めた猛者揃い。1人1人が一騎當千の強者であり、それぞれが獨自の聖を有している」
「だから、こちらも一騎當千の人材をぶつけ、理的に兵がけない『教會』の総本山『聖域』で決著を付ける。そういう作戦ですね?」
僕は振り返った。
後ろには、シュット國が誇る一騎當千のメンバーたち。
ほとんどが知った顔だった。
この後、僕らは『聖域』へ挑む。
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