《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》一抹の不安

『乙』の髪のる戦闘法。

まさか、頭部の微調整で髪をっているわけではないだろう。

外側から、何らかの力で固定する方法は効率が悪い……

おそらく、髪に魔力……あるいは、他の力を通してコントロールしている。

いや、コントロールだけではない。ただの髪が巖を切斷するほどの切れ味を有しているはずがない。

……となると、警戒するのは『乙』が振り回す髪による攻撃……ではない。

警戒すべきは、激しいきで何本も抜け落ちているであろう髪の方だ。

一本一本に魔力を通しているならば、から離れた落ちた髪の作も可能なはず。

僕なら、不利を演じて見せ、油斷した相手の背後から髪を突き刺す。

その髪の強度なら、防を貫くのも容易だ。

に突き立てれば、心臓、あるいは両肺を貫通する。

一撃必殺だ。

————しかし

相手が悪かった。

ミドリさんは騎士であり、騎兵でもある。

そして、今―———

は馬に乗っていた。

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馬。

それは兵だ。

二階建ての建に匹敵する巨大さ。

鎧で武裝した兵士數十人を背に乗せて悪地を駆ける馬力。

その皮は、生半可な剣を弾く。

その口に有した鋭い牙は鎧すら噛み砕く。

時折、吐き出す熱線は巖を熔解させる。

その反面、春になると背中に木々としい花々が咲きれ、人々の心に安らぎを與える。

それが馬だ。

『乙』の髪は、強固な皮によって弾かれる。

ミドリさん本人を攻撃したいのだろうが、『乙』の位置からは馬に乗る彼の姿は見えないだろう。

『乙』は馬の足元の位置。遙か上から落とされる蹄。踏みつけられれば死は免れない。

勝敗は時間の問題だ。

この狀態でサヲリさんは、どう助太刀するつもりなのか?

やはり、彼は參戦のタイミングを計りそびれて、二の足を踏んでいた。

結局、何事も起こらず、勝敗は決した。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

さて、僕は長々と仲間たちの戦ぶりを語っているが、既に勝敗は決している。

『天秤』は武道家なのだろう。

素手でケンシに攻撃を繰り出しているが、簡単に弾かれている。

ケンシが魔法で戦っているのなら兎も角、魔法を捨て、剣を振るうケンシに勝てる人間が世の中に何人いるだろうか?

『蠍』の槍。

その突きは鋭く素早い。

しかし、カイムの『龍の足枷』を砕けるはずもない。

彼の『龍の足枷』は僕のと比べると下位互換に値する。

そのぶん、使い勝手は遙かに高い。

『蠍』の槍は緩んだ瞬間に攻撃に転じたソレは両者の戦力差を示す破壊力だった。

手』の弓。

これに関して相というレベルではない。

キク先生は魔眼使いだ。

手』がどんなに狙いを定めても、放たれた矢はキク先生を捉える事はない。

弓兵に勝てる方法があるなら聞いてみたい。

『山羊』は、辛うじて戦いが立していた。

『山羊』は普通だった。

普通に剣を振るい、普通にオントと戦っている。

みたいな戦い方をする12使徒の中では珍しく正統派。

本當に彼は、彼だけは単純な戦闘力で幹部の座を手にいれたのだろう。

『水瓶』は完全に遊ばれていた。

どうやら、『水瓶』の武は背負った瓶らしい。

どういう仕掛けなのか、その瓶に敵を封じる攻撃。

しかし、相手はドラゴン。

封じても、封じても、封じても……

封じても簡単に抜け出している。

もはや、戦いではなく遊びだ。

もしも、彼らが『聖』と言われる強烈な武を手にしていたなら、これほどワンサイドゲームになる事はなかっただろう。

だが、12使徒の全員が『聖』を持っていない。

おそらく、全てが一ヶ所に集められている。

教皇の間だ。

しかし、なぜ? なぜ、教皇は、12幹部に『聖』の使用を許可しない?

僕は、そこに一抹の不安を振るいきれずにいた。

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