《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》超迷宮奇譚伝『このアイテムは裝備できました』

俺は両足を前後に広げ、腰を落とした構えを取る。

を上下に弾ませるようなステップでリズムを刻む。

當てるのは一撃で良い。 一撃當てれば勝てる。

しかし―———

その一撃が難問だ。

テンが持つ質量のない十字剣。

空気でできたタクトを振るうように、そのきは変幻自在。

古い言葉で剣道三倍段っていうのがある。武の世界の言葉だ。

素手で武を持った相手に勝つには、相手より三倍の段位レベルが必要という意味らしい。

それを掻い潛っての一撃だ。

いや、それだけではない。テンが持つ『ギフト』は二つ。

の『ギフト』をどうするか?

その不安を察したのか? テンのがブレて見える。

次の瞬間、テンのが分裂していく。 ……3人、4人、5人。

無限増幅かと思われたソレも10人目で止まる。

「流石に卑怯じゃないか?」

俺は悪態は吐いた。 けど、難易度はこのくらいで良い。

俺が挑むのはもう1つの神話。 武の世界で神話として奉られる伝説。

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一撃必殺

神話の世界へ――― 奇蹟へ―———

僕は踏み出した。

踏み出せば地獄。

俺の瞬発力は距離をめる。

まるでイバラの生息地のように剣が俺に襲い掛かってくる。

紙一重で避けるほど甘い剣でない。彼の————いや彼らの剣は俺のを切り裂き、に濡れていく。

ギリギリ、致命傷にならない刀傷をに纏っていく。、

を斬らせ回避するという矛盾。

それをし得て、さらに前に————前に―――

何度となく、消滅していく意識の手綱を握りしめ————

ぼやけ始めていた視線は、やがて白一に染まった。

覚がない。 もしかしたら、は滅んで意識だけが前に走っているのかもしれない。

そんな覚。 無限に思えた拷問もやがては―———

「龍の足枷」

俺の————僕の聲ではない。 隣で誰かが呟いた。

誰かが、この地獄について來ていた。その誰かは―――彼は倒れ行く僕のを抱きしめて————

そして呟いていた。 これは現実か? それとも死にゆく際に見えた幻か。

なら―———僕も、俺も、言わなければならないだろう。

その言葉を―———

「いけぇえええええええええっ!ドラゴンシールぅぅぅぅぅッ!!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

それは後から聞いた話。

僕は放った一撃は、地上から天に。

逆に昇る流れ星のようにの筋を空に刻んだと言う。

後から駆け付けたメンバーの話では、そこにテンの姿はいなかった。

いや、テンだけではない。あれからクリムも、そしてドラゴンも行方不明になった。

あの時、僕の橫に立っていた彼は、現実だったのだろう。

しかし、今になってもそれがクリムだったのか、ドラゴンだったのか、それとも別の誰かだったのかはわからない。

それら、僕が意識を失った後の顛末を病院のベットで聞かされたのは、戦いから數か月後だった。

「……そうか。クリムとドラゴンは見つからないのか」

お見舞いに訪ねてきたオントに尋ねる。

「そうだ。今はシュット國が総力をあげて探している。國を救った英雄だからな」

「英雄……ね」と僕は笑った。

あの戦いは茶番だった。 僕ら何かをしなくても、『教會』は滅んでいた。

聖人を蘇らそうとした教皇は、蘇らした聖人によって殺められていた。

僕がした事は、その聖人の遊び相手になった程度の事。

そして、遊びの代償は、遊び相手と最の2人との別れ。

酷い話だ。 遊びに夢中になって、家族と友を無くした男なんて……

「國はお前を英雄として迎えれる準備を進めているが……」

「だったら、名譽よりも金がほしい」

僕の発言にオントは眉を顰めた。

どうやら、僕らしくない発言が不快だったらしい。

「金と世界のどこでも行けるように免狀がほしい。どの國のダンジョンでもれるように……」

「お前、旅に出るのか?」

「あぁ、彼達は僕について來てくれたからね。今度は僕から訪ねていきたいんだ」

「そうか。わかった。すぐに進言しておく」

そう言って退室しようとしたオントの足が止まった。

「……それから」

「?」

「旅には仲間が必要だろ? 今度は俺もえよ」

僕は噴き出した。

「お前、人が照れ臭い事を言った後にだな……」

「大丈夫だよ。今度は知り合い全員に聲をかけるつもりだから。今度は最大戦力で、地獄にも天國にもいくつもりだから……逆に聞こう。 そこまでついて來れるかい?」

「へっ上等だよ。俺を、俺たちを何だと思ってるんだ? 探索者だぜ?」

僕は、また噴き出した。

この後、僕らの新しい旅が始まる。

―――完―———

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