《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》ダンジョン部と異変

そこは氷のダンジョンではなかった。

広い人工の空間。

溫度は高い。天井かられ落ちてくるは熱湯だろうか?

「熱湯が氷のダンジョンを溶かした? そんな馬鹿な」とサクラは頭を振った。

サクラは口にすると他のメンバーも堰をきったかのように話を始める。

「エドワードと名乗った探索者の噓偽か? しかし、なんのために」とオント。

「なんのため……アリスさまを警備の薄い場所にい込むため……」とサヲリ。

「いや、だったら罠は功している。もう襲撃してこないとおかしい」

「だが、しかし……現に我々は……」

想定外の出來事にサヲリさんは語尾が強くなっていく。

しかし――――

「靜まりなさい」

そう言ったのはアリスだ。

「上かられ出ているは、おそらく生活水。上の下水から流れているのでしょうが……長い間、汚水に曬されていた後がありません。つまり……」

「天井を塞いでいた……氷がなくなったばかりということかい?」

「はい、その通りですサクラさま。 ここで何かが起り、ダンジョンの質が変化したという事でしょう」

「なら、やっぱりアリスとサヲリさんは帰還した方がいい。何が起きるかわからない」

しかし、アリスは首を縦には振らなかった。

「いいえ、危険だということは最初からわかっていました。想定と違うから帰るなんて甘い気持ちでご同行とお願いしたわけではないのですよ」

サクラは驚いた。 この狀況でも笑みを浮かべられるアリスの強さに。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「どうやら、ここは舊時代に作られた地下建造が、長い時間をかけてダンジョン化したみたいだな」

ダンジョンで言えば一層。強い魔モンスターは出現する事はないだろうが、サクラとオントは警戒を強める。

ここを発見したエドワードの証言が事実なら、1層からドラゴンが闊歩しているらしい。

平素なら「そんな馬鹿な」と笑い飛ばす2人だが、発見者以外の誰も未踏のダンジョンなら話は別だ。

何が起きても不思議ではない。 しかし、そんな2人にも予想外な事がある。

それは魔が出現しないという事だ。

「……地下に降りる階段があるが……どうする? 流石におかしいぞ」

1時間ほど、歩き回り発見した階段だ。 本來なら、降りて進むところだが……

「あぁ、魔が出現しないダンジョンなんて初めてだ。 どんな可能があると思う?」

サクラはオントに聞く。

「そもそも、ここがダンジョンじゃない可能。 あるいは魔も死滅するような何かがあった」

オントが言うように「ダンジョンか?それ以外か?」その區別は難しい。

迷宮であり、魔が出現するならばダンジョンだ。

しかし、魔が出現しない迷宮はダンジョンなのだろうか?

その定義は定められているはずだろうが、なくともサクラもオントも定義まで知らない。

いや、それよりも――――

『あるいは魔も死滅するような何かがあった』

注意すべきはソレだ。

ダンジョンで生まれた魔が死滅した前例をサクラは知らない。

なぜなら、魔はダンジョンから無限に生まれるものだからだ。

もちろん、魔に対して毒は有効だ。

しかし、毒が漂う中でも毒に対する抗を持った魔が生まれる。

だから、人類はダンジョンをれた。 ダンジョンを破壊する事は不可能であり、湧き出てくる魔たちを完全に駆除する事もまた……不可能である……と。

だが、彼らは探索者。

「行くぞ」と2層へ向かう決意は固め、足を踏みれた。

やがて、3層、4層、5層と魔が出現しないダンジョン部を歩き回る。

「魔がいないと、ダンジョンを降りるのが、ここまで早くなるのか」

オントの呟きにサクラは笑った。

そのまま20層、30層と降りていく。

無限に続くかと思われたダンジョンの地下。しかし――――

最初にそれを発見したのはアリスだった。

「サクラさま、あれは……もしかして!」

続けてアリスが指差した方向を見るサクラ、オント、サヲリ。

しかし、3人とも、それがなんなのか? すぐに認識できなかった。

それはドラゴンの死だった。

いや、ただの死なら、3人もすぐに認識できただろう。

3人がそれをドラゴンの死だと認識できなかった理由。

それは、ドラゴンの頭部が切斷さていたからだ。

つまり――――

ドラゴンの首なし死がそこにあったのだ。

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